ヒヨコ二人組
「いいの?姫様がお供に団長を連れて行かず歩き回って。知ってると思うけど・・・俺そんなに剣は使えないよ。きっと、美珠様の方が強いぐらいだよ。」
「知ってます。最近聖斗さんにも稽古を付けてもらってたから、きっと盗賊ぐらいは倒せるでしょう。」
「それはそうだね・・・。で、どうやって、孝従の痕跡を捜すんだよ?そいつって珠利がなついてた教官だよな?そんな悪いやつには見えなかったけど・・・結局そいつが敵だったわけ?」
美珠と相馬は山を下る緑の木々に囲まれた一本道を進んでく。
まだ雨の匂いの残る山の雨でぬかるんだ道には新しい馬車の後がいくつかあった。
「敵だったのよ・・・。なのに、珠以の振りまでして・・・。」
「え?美珠様、珠以と間違えたの?そりゃ、怒るだろ?あいつ。」
「そりゃあ、記憶が戻れば違うって言うのは分かるけど!あの時はだまされてたの!夢の中の素敵な人が現実に現れれば、私の王子様って思うでしょ?今にして思えば・・・珠以の方が顔も格好いいし、頭もいいし。優しい・・・けど・・・。」
(もう・・・会えない。)
視線を落とした美珠の肩を相馬は叩いた。
「まあ、俺は騎士の練習はしてなかったけどいつもあいつらと一緒にいたから珠以の良さは分かってるよ。全然すれたところがなくて子供ながらに一本気があって、いい奴だ、あいつは。それに引き換え珠利はいっつも俺を子分みたいにしてさ。・・・きっと、王様は俺がそばにいたらポロっと言っちゃうだろうって思ったんだろうね。だから口の軽い珠利だけじゃなく俺まで引き離された。」
(そういえば、いつも相馬ちゃんは三人で騎士の練習をしている間、兵法の勉強させられてた。騎士じゃなく兵を率いる勉強を。でも口だけヒヨコって珠利にいじめられてて・・・。)
「口だけ・・・ヒヨコ。」
あえて呟くと相馬は目の笑わない口だけの笑みを返した。
「ん?何?なんか言った?」
「ん?うんん?あ、じゃあ珠利は生きてる?もしかしてどこかで騎士を?」
「騎士じゃないよ。でも・・・生きてる。ちゃんと。それに珠以だってどこかで美珠さまのことを見てくれてるよ。それは空の彼方かもしれないし、美珠様のすぐ傍で守護霊みたいに張り付いてかもしれないけど。」
「見えなくても傍にいてくれたら・・・すごく心強いな。」
考えただけで心のおくが少し温まった。
そんな二人の目の前で視界が開けた。
「わ、小麦畑!」
それは見渡す限りの小麦畑。どこをみても何もさえぎるものはない地平線が見えていた。
「はあ。国って広いわね。」
「美珠様・・・まだここ王都からそんなに離れてないよ。この国は大陸でも屈指の広さを誇る。美珠さまはいつかその全てを治めるんだ。美珠様が選ぶ夫とともに・・・。」
初めて実感した。
城にいただけならば何も思わなかったに違いない。
地図を見てそれだけで分かった気になっているだろう。
「これが・・・私の国・・・。」
「そう!美珠様の国。」
美珠は一度深呼吸をすると相馬に目をやった。
「色々・・・教えてね。」
「俺だって今勉強中。一緒に学んでいこう。」
そういうと相馬は笑って、歩き出した。