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決意の朝

「父と母の居所は分かりましたか?」

 美珠は村人から情報を仕入れてきた国明、魔央、暗守の報告に耳を傾けた。

「ええ、ここから西にしばらく行った洛西(らくさい)という城にお二人ともおられるということです。」

 魔央は続けた。

「竜桧は王城にあり、王と名乗りだしたようです。あと孝従という者に至っては素性が全く分かりません。」

「国王陛下は徹底抗戦の構えで、おられる居城を明らかにされているようですね。」

 国明だった。

 美珠は一度頷くと決意を秘めた目をして顔を皆へと向けた。

「では・・・私たちも動くとしましょう。折角敵の目を逃れてここへ来たのですから。我々が動かず誰が動くというのです。少し考えてみました。誰がどこへ行くのが良いのか・・・魔央さんは洛西に行って頂けますか?」

「お二人のもとにですね?承りました。」

「国明さんと暗守さんには少し遠いのですが、城の北にある三璧(さんへき)という不毛地帯に行って欲しいのです。」

「三璧?」

 暗守が聞きなれない地名にを反復する。

「ええ、そこが私の嫌いな教官の出身地なので、もしかするとそこにおられるのではないかと考えました。教官の名前は確か未宇(みう)だったと・・・。その方が何か倒す方法を掴んでおられるような気がするのです。ただ確証はありません。」

「三壁には不思議な鉱石があるとききます・・・。そしてそれを加工するという少数民族も。行ってみる価値はあるでしょう。」

「不思議な鉱石?国明さん、それ本当ですか?」

「ええ。私も直接見たわけではないのでなんともいえませんが・・・とにかく行くのが得策かと?」

「お願いします。私達は孝従が何故今出てきたのかについて調べます。父と母が囮となり、敵を引きつけてくれている間、私も出来る限り戦います。次に会うところは父の元にしましょう。」

 皆、美珠の今の姿に驚いていた。

 つい先日まで怯え、守ってもらう姫だった。

 けれど今は違う。率いてゆく姫に見えた。

 ただ数日。

 その間に美珠は封印されていた記憶から自分の勇気と王の資質を取り戻そうとしていた。

「国明さん、暗守さん・・・。正直それがためになるかはわかりません。それでも・・・私の作戦従って頂けますか?」

「もちろんです、しかし・・・ご無理はなさらないで下さい。貴方の身に何かあれば俺は・・・。」

 国明はほんの少し愛する姫と別行動で残念そうな顔をしていたが、暗守はいつものようにフッと笑う。

「そのようなこと・・・苦ではありませんよ。」

 美珠は微笑むと、魔央の方を向く。

「危ない道ですが・・・。」

「構いません。騎士団長ともあろうものがそれを避けてどうなるというのでしょうか。」

 魔央は決意した顔をしていた。

「相馬ちゃん、つきあってくれる。」

「おう、もちろん!俺は美珠様の補佐官なんだからな。どこまでも着ついていく!」

 相馬は腰に手を当て銃を見せる。

 美珠は全員を見ると、一つ息をつき頭を下げた。

「この国を守るため、力を貸して下さい。」

 すると、全員頷いた。

 小屋から出ると全員別の道を進んだ。

 美珠が最後に分かれ道で一度国明に振り返ると国明も振り返りいつものように優しく微笑んでくれた。



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