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失くしていたもの 後編

 その後すぐ近くの教会の司祭が二人を発見し、教会に知らされた。

 大切な人を目の前で失い精神崩壊を起こしていた美珠を見た両親は考えた末、美珠の記憶を塗り替える事に決めた。

 そして美珠には当時の魔法騎士団団長によって、記憶の全てを封じる魔法がかけられ、その上から深窓の姫君という記憶を植えつけられた。


 美珠は自分の顔に吹く風の心地よさで目を覚ました。

 全てを思い出した美珠の目からは涙がこぼれていた。

(そう・・・珠以は私を守って・・・死んだ・・・。もういない・・・。今のは・・・すべて私の記憶。)

 顔の涙を手の甲でグイッと拭く。

 幸せな珠以との思い出。

(今、私は自分は珠以が共に守るといってくれた人たちと一緒にいる。それがせめてもの珠以への供養になるのかもしれない。でも・・・珠以といたかった。一緒に国を・・・。)

 そして思い出したように脇腹を押さえた、もう傷はなかった。

 不意に美珠は外から聞こえる人の声に気が付き、そこに向かって歩いてみた、小屋の外で暗守と相馬が食事を作っていた。

 美珠はそれを見て少し安心すると、そばにあったたらいの水で涙で濡れた顔を洗った。

(水が・・・気持ち良い。私・・・生きてる。)

 たらいにに汲まれた水は陽の光を浴びて白く光っていた。

(私・・・生きてるんだ。本当に・・・。)

 もう一度水に顔を浸した。 

(私をかばって死んでしまった珠以や他の騎士の為、私は生きなければ。生きて生きて生き抜いて、約束した平和な世界を作ってみせる。それが・・・私を背中で守ってくれた人にできること・・・。)

 それは昨日まで自分の中から抜け落ちていた大切な気持ち。

 記憶と共に封じられていた王者になるべく昔から自分の中で育ててきた覚悟というものだった。

 そして今、それを再び振り上げるときだった。

「おはようございます!」

 美珠が無理やり元気いっぱいに言うと、二人はうれしそうに立ち上がり駆け寄った。

「傷は魔央が魔法で。」

 暗守は鎧で顔が見えなかったが嬉しそうな声を出した。相馬も笑っていた。

「美珠様、十日間も眠ってたんだ。」

「助けてくれてありがとう。もう元気いっぱい!」

 二人に礼を言うと美珠のおなかが激しく鳴った。おなかに手を当てて笑うと、二人も美珠の顔を見て笑い出した。

 

 しばらくすると、国明と魔央が買い出しから戻ってきた。二人も美珠の姿を見ると笑顔を浮かべ駆け寄った。

「美珠様ご無事で?何か違和感を感じられませんか?」

「もう傷は痛みませんか?他に痛いところは?」

 国明と魔央が次々に質問を投げかける。美珠は二人に笑顔を返した。

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