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不穏

 光騎士は空を見ていた目を下へと戻した。

「やけに飛竜が飛んでないか?」

 空にはまるで鳥のように飛竜が重い羽音をたてながら数十匹飛んでいた。

 光東はその姿に気持ち悪さを感じていた。

 最近王のそばを守りはしているものの、どこか虚を感じる竜騎士達。

それが何故、今、こうも空を埋め尽くさんばかりに舞っているのだろう。

 飛竜の多さに地上にいる竜達も興奮状態に陥りつつあった。しきりに空を眺めては空に向いて吼えたける。

「あいつは、何を考えているんだ?」

 不意に聞こえた最近やっと聞きなれた声。光東は暗守の声に振り返り素直に頷いた。

「同じ国王側の人間だが・・・、彼に最近敵意を感じる。教会側で、顔の見えない君よりも彼の心の方が分からないな・・・。」

「・・・それはほめ言葉と受け取っておこう。だが・・・最近、美珠様のお心も少し分からない。」

「女心はいつも難しいもんだよ。うちの妹なんてその最たるものだ。何をしても怒られてしまう。・・・しかし、美珠様は最近部屋にこもって何をしておられるのか・・・。何も無ければいいが。」

「ああ・・・。」


  

「演習・・・か。」

 相馬は窓から外を眺めていた。

「竜桧が国王に申し出てな。」

「あの熱そうな団長か。そういやあ話したことないや。できる?あの男。」

「さあな。子供っぽいところがある。」

「自分だって年がそう変わらないのに、爺くさいねえ。国明。」

 国明はただ飛竜の消えていった空を見ていた。相馬はそんな国明の顔を覗き込んで目の前で手をヒラヒラと左右に振った。

 国明の端正な顔には影のような疲労が浮き出ていた。

「ってか、失恋ぐらいでなにそんなに落ち込んでんのさ。」

「・・・失恋か。お前、美珠様の好きな相手って知ってるか?」

「え?知らないよ。そんなの。」

 国明はそんな相馬の顔を見て息を吐いた。使えないと顔にありありと書いてあった。

「美珠様が幸せになって下さることが俺の幸せだから・・・正直、俺自身としてはかなりつらいけど、でも祝福はできる。けれど。」

「けど?何?」

「今日も避けられた。廊下で姿をお見かけした際、あからさまに走って逃げられた。」

「子供か・・・。」

 相馬は容易に想像できて思わず苦笑いをしていた。そして国明の肩を同情するように何度か叩いた。

「・・・子供・・・なのだと思う。国王騎士団長としてあの方と初めて会ったときも、あの方は子供のようだった。嫌なことから逃げ出していた。」

 けれど自分はそんな精神的にまだ幼い彼女にすら惹かれていた。表情をくるくる変える彼女をただ眺めているだけで幸せだった。

 女性としてならそれでも許されるかもしれない。十分かもしれない。

 けれど一国の王となる人間としてはそれだけでは許されない。

 王になる人間には強さが必要だ。

 そしてその強さを与えられるのは自分だと自負していた。どれだけ団長が集まっても自分が彼女を思う強さは誰にも負けないと。そして彼女も自分だけは特別に思ってくれていると。

 けれど今はそれがことごとく、打ち消された。

「相馬・・・、お前の知っていた昔の美珠様はどんな人間だった?強く自分から戦いを挑むような方だったんじゃないか?」

「・・・確かに。・・・あの『珠以の死』までは王の器だったと思う。」

「死がすべてを、彼女の志まで隠してしまったのか?」

「・・・だろうね。」

「お前、今のままで美珠様がまともな為政者になれると思うか?」

「思わない・・・ね、今のままならきっと、彼女はつぶされるよ。彼女に敵意のある何者かにね。」

「・・・だろうな。美珠様がそのことに気が付いてくださればいいが。」




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