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「おはようございます。美珠様。」

 侍女の声で泥のような体を起こす。

(・・・眠れませんでした。)

 窓から差し込む光が、目が眩むほどの白い光が余計気を滅入らせた。

「今日は・・・朝食はいりません・・・。」

「お体の調子でも?」

 悪いのは心の中の気分。自分の愛する人への想いと国明への想いに板ばさみになりまるで体の上に誰かが乗っているかのようだった。

「ちょっと・・・しんどくて・・・。」

「では薬師を・・・。」

 きっとばあやや静祢ならば仮病を見抜いたに違いない。けれどこの侍女ではまだ役不足だった。

「いいです。少し眠れば・・・きっと回復しますから。」

 それだけ言うと布団の中へと潜っていった。


「何だ?今日は熱心に稽古してるんだな。」

 光東の言葉に国明は動きを止めることも無く、言葉を返すこともなかった。国明の相手をさせられた国王騎士はすでに息が上がり、動きも精彩を欠いていた。

 一方、国明の動きは何かに突き動かされてるかのように鬼気迫るものがあった。

「何か?あったのか?」

 けれど返事は無い。そんな時、光東の視界に黒い物体が入った。それは今にも倒れそうな国王騎士に代わり、国明に剣を向ける。

「ずいぶん、荒っぽい剣技だな。」

 国明は相手が変わろうが手を抜くことは無かった。斬りかかってきた国明を暗守は受け流すと今度は暗守が斬りかかった。国明は受け止めようとしたが、あまりの重さに押される。

「っつ・・・。」

「団長がそれほど心を揺さぶられるとはよほどのことがあったのか?」

「・・・。」

 国明は何も言わずただ、それを押し返すと剣を鞘に戻した。

「・・・別に。」

 その返事を聞いて光東と暗守は顔を見合わせた。

「美珠様も朝食にこられない。昨日、何があった?」

 後ろから声をかけたのは聖斗。

「何もない・・・。」

 そう答えてから、一つ大きな呼吸をした。

「本当に何も無かったんだ・・・。俺と美珠様には。絆も、主従関係も・・・。」

 そうつぶやいた国明の顔はすべての喜びを失ったようにさえ思えた。

 今まで彼がいつも持っていた自信や覇気と言ったものはすべて消えうせていた。

「何が・・・あったんだ?」

 光東が心配そうに問いかけると国明は小さく笑って、建物の中へと戻っていった。

 三人の団長達はその背中をただ見送るしかできなかった。

「喧嘩・・・か?」

 聖斗の言葉に光東は顎に手を置き、しばらく考えていた。

「だったら、いいんだが。」

 暗守は何を言うこともなく美珠の部屋に視線を送った。



 


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