表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/84

新居へ!

 誕生日から一週間後、まだ日が昇ったばかりだというのに侍女がせわしなく部屋を出入りしていた。そして侍女が出てゆくごとに部屋のものが一つずつ減っていった。美珠はベットに寝転んで引越しの際出てきた扇で扇ぎながらぼうっとそんな侍女達を見ていた。

「共同生活・・・か。」

 美珠の宝石箱を整理していた道代は美珠の事を見ることもなく答える。

「皆様と仲良くなるためですよ。」

「本当に仲良くなれますか?」

「姫様しだいですよ!お住まいはここと目の鼻の先の国王様の別邸。まあ共同の場所は居間と食事場所だけですからね。後は皆様がご自由な暮らしが出来ます。私も美珠様が結婚されれば息子の相馬(そうま)と一緒に暮らそうかと・・・。」

「何言ってるの!ばあやは一生私のそばにいてもらうんです!」

 半分すねながら、口を尖らしていると侍女の歓声が聞こえた。そちらに目を向けると男が踏み入れることのない美珠の宮に男が足を踏み入れていた。

「あら、もうお迎えの時間?あの国明さんにこんなだらけた姿見られたら

 何言われるか分かりませんね。」

美珠がベットから慌てて体を起すと、長い廊下を侍女達が顔を赤らめ、手を止めて挨拶をしている光景が格子窓越しに見えた。彼の姿が死角に入って数秒後、扉がノックされた。

「護衛を仰せつかりました。何です?この忙しいのにぐうたらですか?」

「ぐうたらなんてしてません!失礼な!」

「はいはい。顔の布団の跡消してから言ってくださいね。さあ、そろそろ、新居の方に向かってもよろしいですか。ご準備は?」

「出来ています!」

 美珠はこれ以上嫌味を言われるのも嫌ですばやく立ち上がり、一度部屋の中を見渡した。

(こことももうお別れなんですね。寂しい。)

 庭にはこの世にこんなに色があるのかと思えるほどたくさんの花が咲いていた。

(よくあの庭に椅子を置いて本を読みました。そういえばあの花、静祢と種から植えたんですよね・・・。その後ばあやに、はしたないって怒られましたけど。)

「こことも、もうお別れなんですよね。・・・・ここには想い出がたくさんあるのに・・・。」

「・・・そうですか・・・。あの、姫!」

「国明さん!おしゃべりはそれくらいにして、そろそろ参りましょう!」

「あ・・・。はい・・・。」

 何か切り出そうとした国明を制するような道代の口調だった。

 美珠は普段は温厚な道代のそんな姿に少し驚いたが、天敵が勢いを失ったことに対しては道代に感謝した。

 それからはお互い何も話すことなく馬車の待っている門まで歩いていった。馬車に乗り込むと、控えていた三十人ほどの騎士達が小隊を作り、馬車の護衛を始めた。

 その後から荷物を積んだ馬車が配備され、万が一に備え軍も荷馬車の後に配備された。国明は副団長と共に美珠の馬車の左右を護衛し、新居への道を進み始めた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ