王城へ
突然の美珠の出現に召使い達はあわてふためいた。
「少し父に会うだけです。」
「お待ち下さいませ!」
大臣は美珠を掴もうと両手を伸ばして廊下を走ってくる。
美珠はかわして歩き続けた。
「少しだけよ、まだ寝てらっしゃるの?」
父の部屋の前には国王騎士が立っていたが、美珠は彼らの制止をも振り切り部屋に入った。
扉を開けると寝台に男と女が一糸まとわず横たわっていた。
(どういうことでしょう・・・、これは・・・。)
意味がわからずただ大きな瞳で中の様子を見つめ続ける。
父はあろうことか女性を抱いていたのだ。
「み、美珠!な、何だ急に!」
父は驚き、悲鳴に近い声で娘の名を呼んで女から離れた。
そして美珠の後ろから来た大臣はため息をつきうなだれた。
今までずっと国王の手の早さを愛娘に隠してきた忠臣達であったが、今日でそのお役目からは開放された。
その後ろからは竜桧や光東が走ってきた。そして想像に容易い部屋の中の状況を悟り、美珠をこの場から出そうと考えた。
「美珠様、あちらへまいりましょう。」
光東が美珠に違う部屋を勧めた。が、竜桧は国王と共にいた女を見て叫んだ。
「桐!」
国王と共にいた女は駆け寄る竜桧を見ると、体を脱いだ服で隠し、悲しげに呟いた。
「来ないで・・・。」
唇を震わせた竜桧が言葉どおりに止まる。
女は男たちを一瞥すると服を着てすぐに立ち去った。
美珠はすれ違い様、女の顔を見た。女も美珠の顔を見る。この前、武闘大会ですれ違った色気のある侍女だった。
竜桧は美珠達には目もくれず桐を走って追いかけて出て行った。
「・・・大切な・・・お話があってきました・・・。」
「すぐ行く、光東、美珠を談話室に。」
「はっ。」
やたら豪華な金色のふちのある椅子に埋もれるように座っていた美珠は竜桧と先程の女のことが気になった。
隣に立つ光東は答えてくれるかどうかわからなかった。むしろごまかされるに決まっている。けれどやはり知りたくて、一度呼吸をしてから光東に尋ねた。
「父は・・・いつも女性を抱いているのですか?それともあの女性が特別・・・ですか?」
「・・・いいえ。そんなことは・・・。」
優しい忠臣光東の言葉が嘘だと言うことはすぐ分かった。
(お父様もお母様も、お互いのこと、私のことなど何も考えていないではないですか・・・。私はそんなの嫌です。他の人に癒しを求めるなど・・・。大体あれは癒しなのですか?)