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メッキ

王が美珠の館につくと、何人かの光騎士がたいまつを持って入るところであった。

足を踏み入れるとむせかえるような血の匂いがした。

「国王陛下!」

光東の声が頭上から聞こえ、上を見上げると光東が国明と共にいた。

「美珠は!」

「ご無事のようです。」

光東の声に安堵した国王は国明にしっかり抱かれ気を失った美珠の顔に触れる。

「とにかく、こんな所から一刻も早く。」

 国王自らが美珠を抱き上げ連れ出した。

 まさにその時教会側の人間が到着した。

 教皇は早さを重視したのか聖斗の竜に乗っていた。まるで落ちるように竜からおりた教皇は夫の腕に抱かれている娘に駆け寄った。

「美珠は!生きているの?」

「外傷はない、全て返り血だろう・・・。」

 国王はそう言うと馬車に美珠を乗せ、白亜の宮へ連れて行った。


「四七、四八。全部で四九人か?」

 美珠の部屋から光東が出てくる。

「分からない・・・。逃げた奴は全部で十五人だ。」

 国明はまだ階段に腰を掛けながら今まで触れていた美珠を思い出していた。

「信じられんな、教会の奴ら・・・。誰が倒したんだ?お前もう動けるのか・・・。」

「まさか・・・まだ下半身麻痺してる。」

「これは・・・。」

 魔央が家に入って絶句した。

「教会側のご到着だ。」

 そう言うと光東は階段から下りていく。

 国明はその背中を見送り、そして階下の魔央を見た。

 魔央の後ろから暗守が入り無言で立っている。

「教会騎士二五名、魔法騎士十名、暗黒騎士十四名を確認している。」

 光東の顔からは怒りが感じ取れた。

「あと、教会騎士十名と、魔法騎士五名が逃げた。」

 上から国明が付け足すと団長三人は上を見あげた。

「お前が倒したのか?」

 問いかけた暗守の声色はいつもと変わらなかった。

「まさか・・・。弓で射たのは俺だが・・・。」

「とにかく、逃げたものを全力で洗い出し、事実関係を調査しないと。」

 魔央が神妙な面持ちで言う。しかし国明はその言葉を否定した。

「我々国王騎士団にまかせてもらおう、顔は全て覚えている。妙なかばい立てをされると困るからな。」

「何だと?」

 魔央がはその言葉にカッとなり、国明のもとに歩いていく。

「お前こそ怪しいもんだ・・・。」

「何だと・・・。それは団長としての言葉と受け取っていいのか?」

 国明が怒りを抑えて訊く。

「そうだろう、誰がこれだけの兵士を倒したという・・・。」

「言い合っている時ではないだろう!」

 光東が二人を止めた。

 魔央と国明は暫く睨み合っていたが、互いに視線をそらした。


「美珠?」

 母の声が聞こえた。

 目を開けると父と母が自分をのぞき込んでいた。

「あら、お父様、お母様。変な夢を見たのよ、とても恐い夢・・・。みんな死んでいくの・・・。」

 国王と教皇は顔を見合わせ、国王は美珠に水を差し出した。

 美珠は起きあがりそれを受け取ろうとした。しかし、国王の渡したグラスは美珠の寝ている布団に落ちた。

「何・・・これ?」

 美珠は自分の手や服に付いた返り血を呆然と見下ろしていた。

「ねえ、これはどういう事?夢じゃないの?」

「これは現実なんだ・・・。」

 美珠はその言葉の意味を受け入れることは出来ず、その場で再び気を失った。

 二人はどちらともなく立ち上がると隣の部屋の扉を開けた。そこには団長達がそろっていた。

「我が団の騎士の非礼、申し訳ありません。」

そう言って聖斗が頭を下げる。そして続いて同じ事を、暗守を魔央も続けた。

「騎士としてあるまじき行為ぞ、お前達は騎士団長の任をとき、」

「私の監督不行届です・・・。申し訳ありません。」

 教皇は国王に精一杯頭を下げる。

 国王はため息をついて、妻の肩を叩く。

「何の為に結婚させることにしたと思っている。」

 国王は椅子の肘置きに肘をつき、手を顎の下で組んだ。

「申し訳なく思っています・・・・かくなる上は自害し てお詫びを・・・。」

 聖斗がそう言うと教皇は首を振った。

「貴方が死んだところで事態は何も変わりません。」

「美珠のメッキがはがれてしまったな・・・。」

 国王の言葉だった。

 たった一人の団長を除いて団長達はなんのことか分からず、国王の更なる言葉を待つ。しかし国王はそれ以来黙り込んだ。


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