第6話 【 Two heads are better than one】
「天気がいいですネー!」
と、アンナがスキップをしながら、嬉しそうに声を弾ませ、同じように黄色がかった金色の髪が跳ね、小さく華奢な体が嬉しそうに跳ねる。
聞いてる人はいないだろうが、だからこそ言わせてもらうが、ランドセルを着せたい。是非とも!ランドセルを着せたい!
だがしかしこの世界にはランドセルのような装備がない!なぜだ運営!いや、なぜだ黒ローブ!なぜランドセルを作らない!
こんなにも!ランドセルが!似合うプレイヤーがいるというのに!
「――リアスさん?」
「えっあっあぁ、天気いいね、とても青空が美しいっ!」
「なんだか遠足みたいデスよねー」
「遠足かぁ......懐かしいなぁ......」
「......リアスさんって学生ジャないんですカ?」
「うん、ただの会社員だよ。社畜社畜、ハハッ......」
「なっ!ダメですよワーカホリックなんかになっちゃ!死んじゃいマスヨ!?ゲームやれてるならまだマシかもしれませんが......でもダメです!いけない事デス!!」
ズザザッと音を立てながらアンナが俺の前に立ちはだかり、だいぶ食い気味に答えられた......そうか、社畜の英訳はワーカホリックになるのか......なぁんか時事問題とか絡んでそうだな。
「ちょっと冗談のつもりだったんだけど......ごめんね、気をつける」
「本当に、ワーカホリックなんかじゃあないんデスよね......?」
心配デス......と言いながら小さな両手が俺の右手を包む。
ああああ!上目遣いで見るなぁぁっっ!俺には千夏さんが居る俺には千夏さんが居る俺には千夏さんが居る!
「あっ、ありがとうアンナ、もう大丈夫。それより日が暮れる前に行こうか」
言いながらやんわりと手を解く。
「すっ、スイマセン!ですね!行きましょうダンジョン!」
アンナがあたふたワチャワチャと両手を動かす。当然果てしなく可愛い動作なのだが、俺は千夏さんに会うための試練と捉える事にした。
「リアスさん、コッチです!」
「待って、アンナ、早い......」
アンナに付いてきて数十分、平地から坂を登り、いつの間にか森の中にいた。多分東の方へ向けて歩いていたんだろう。
「頑張って下さい、もうチョットですよ!」
アンナがちょっと離れた場所で立ち止まり、手招きをする。その奥で少し光が漏れている場所も見える。
やっと追いつき、少し息を整える。そんな俺の横でアンナは、多少顔が赤くなってるものの、ケロッとしている。
「アンナ、凄いね、よくそんな体で......こんな歩きづらいとこを......」
「えへへ、それほどデモ」
アンナが赤くなった顔で髪を指でクルクルいじる。なぜだろう?なんか慣れてきた。
「さて、このスグ先にダンジョンがあります。しかし私達はまだ強くないです、ワタシもアーマードスケルトンが出たあたりでギブアップしました、どうします?場所だけマップにピンを指して帰りますか?」
「いや、せっかくここまで来たんだ、行こう」
「了解デス!」
そして俺たちは二本の木の間と茂みをかき分け開けた場所に出た。
――そこは、まるで木がそこに生えるのを拒むかのように、葉っぱも枝も伸びていなかった。ぽっかり空いた穴に真っ青な青空が見える。
そして何より異質なのはその存在感、開けた場所のど真ん中にある2m弱ぐらいの大きな青みががって苔むした岩塊。そしてその傍らに転がってる大きくて、みすぼらしく、なぜか上下に動いてる茶色のボロ布......そして転がる銅製らしいロングソード......プレイヤーだ。
「リアスさ......」
「静かに、そこの物陰に隠れて、目立った動きはするな」
アンナは静かに頷き、木の幹の裏に隠れた。
それを確認してから、俺は相手を起こさないように近づき、ベレッタを抜く。
「おい、起きろ」
「あ、んぁ?なんだ、やっと来たのか」
そんなわけのわからない事を男が言うと、気だるそうに立ち上がった。見覚えのある顔を晒しながら。
「は?お前あの時のガンナーじゃん、なんでここにいんだよ」
「いやこっちのセリフだわ、ライアンこそなんでこんな所で寝てんだよ、それにお前その格好......」
今の彼の格好は、上は茶色のボロっちいベストと汚れた山吹色みたいな長袖シャツ。下はダボついたカーキ色のカーゴパンツと、全体的に茶色っていうかみすぼらしい。ボサボサで少し後ろに流れた黒髪と、やる気なく鈍く輝くグレーの瞳も相まって「ザ・浮浪者!」って感じだ。
「あぁ、これか?結構よくね?町外れの小汚い店で安く売ってたから買っちった。ま、服装はお前みたいに、いつまでも初期のチェックシャツとクソだせぇサルエルパンツじゃあれだしよ」
「うるせぇよ!こちとら住む場所もねぇんだよ!悪かったな!ダサくて!」
「ほー、住む場所もねぇクセにいっちょ前に女は連れてんのか」
と、ライアンが顎をしゃくった先にはいつの間にか少し後ろに立っていたアンナがいた。
「リアスさん、お友達ですか?」
「あーまぁ、そんなとこなんじゃない?」
「そうナノですか!」
「いや嬢ちゃん、こいつとはただの敵同士だ」
「そうなのですか?......トコロデ、なんであなたはそんな「ザ・ホームレス!」みたいな格好をしてるンですか?」
「んんっ......」
ズバッと言ったなこの子......キモオタみたいな笑い声出ちゃった。
「ハッ、ホームレスか......いいぜ、そういうサバサバしたの。嫌いじゃない」
「デ、リアスさん。この人とはさっきマデどんな話を?」
「あぁそうだ。ライアン、お前なんでこんな所にいんだよ」
「オープンワールドなんだしどこにいてもいいじゃねぇか......俺は、一応サイハテに行ってみっかと思ってたんだが......」
「あれ?じゃあ目的地同じじゃねぇか」
「そうなのか?じゃあ一応言っとくが、サイハテには行けない」
ライアンが目を閉じ、お手上げだ......という風に両手を上げ首をゆっくり横に振る。
「は?なんで」
「結界が貼ってあった、1位――実質2位だが、それじゃねぇと入れない仕組みになってたって訳よ......で、ランキング上げるために近場のランキング低くてもイケるダンジョンを探して、ここを見つけたって訳」
「マジかよ......でもそれって」
「あぁ、居る可能性は高いな」
「ハイハイ、質問良いですか?」
右手を天高く突き上げたアンナがぴょんぴょん飛び跳ねる。俺の心もぴょんぴょ......おおっと危ない、理性理性。
「なんで、フタリはダンジョンに行こうとしてるんですか?」
あちゃー、そういや説明してなかったな......
「一つは、ダンジョンにはモンスターがたくさん居る、だからレベルが上げやすい。二つに、ボスを倒し、そのダンジョンをクリアすると、大幅に経験値が貰えて、なおかつランキングも上がる」
と、ライアンが説明をする。それに続くように俺が補足説明をする。
「後は、クリアしたダンジョンには誰がクリアしたかが表示される。その表示された名前のプレイヤーとか、そのフレンド達はそこにワープできるようになる」
「なるほど、じゃあライアンさん......でヨロシイですか?」
「おう」
「私達とチームを組みませんか?」
「えっ?」「は?」
リアスの声とライアンの声がハモる。
「フレンドだと特典がアルンですよね?今このダンジョンをミンナでクリアすればライアンさんにデメリットはないはずです」
おっ、筋は通ってるか......
「なるほど一理あるな......」
「おいおいお前、良いのかそれで?」
「俺は一向に構わねぇ、人数は多いほうが攻略しやすいし、俺とアンナはガンナーとサモナーだ、前線で戦える奴がいると心強い」
「デスです!ほら、日本のコトワザ?にもあるみたいに『サンニンヨレバモンジュノチエ』でしたっけ?そんな言葉があるじゃないですか」
「残念ながら意味わかんねぇな、俺はヤンキーだから」
「えっ何ライアン、お前ヤンキーなの?」
「おう、生まれも育ちも正真正銘アメリカンのヤンキーだ」
ん?アメリカン?
「なるほど、ライアンさんはアメリカ人なんですね」
んん?話についてけないぞ?
「ハハッ、おい見ろよ嬢ちゃん、あの日本人話に付いてけてないぜ?」
「あー、日本ではアメリカ人でもないのにヤンキーって言ってますもんね」
「えっ?えっ?何?どういう事?」
2人はくすくすとリアスを見て笑う。
「てかなんで俺が日本人だって分かんだよ」
「そりゃお前、口の動きと言葉が合ってないからさ」
「あぁ、なるほど」
俺が最初、黒ローブを外国人と判断した理由と同じだ。
「で?結局ヤンキーでどういう意味?」
「さてライアンさん、ホンダイに戻りましょうか」
「あぁ、パーティーを組むかどうかだったな」
あれー?無視されてますなー......悲しいっ!
「そうだな......いいぜ、協力プレイと行こうじゃねぇか」
「オォっ!ありがとうございますライアンさん!」
「おう、これからよろしくなアンナ、それとリアス」
「――よろしく」
おいおいそんな怒んなってと、白い歯を見せ笑いながら、ライアンが少し声を大きくした。
「ただし!俺もそこのリアスと同じように探しびとが居る。そいつが見つかったら、俺はお前達と旅は続けないかもしれない、それでいいか?」
「ハイ!大丈夫です!」
「あぁ、俺も大丈夫」
「よしOKだ!じゃあ早速このダンジョンに潜るとするか......何か、情報を持ってる奴は?」
と、ライアンが早速仕切り始めるが、不思議と嫌な感じはしない。
「ワタシ、潜った事あります!主に出てくる敵はアンデッド系、ところどころ光石があって、クリア難度は多分低めデス」
「おっ、潜った事あるのは心強い」
「陣形はどうする?」
「アンナ、道幅はどのくらいだ?」
「タシカ......人、2人分ちょっと位ですかネ......」
「なるほど、じゃあ前2人を俺とリアスが、後ろにアンナを置いて、ナビゲートしてもらおう、できるか?」
「ハイ!頑張ります!」
「行くか!」
「おう!」
そう言ってライアンが拳を手のひらに叩きつける。
洞窟の奥が、歓迎するかのように怪しく、とても微かな光を放った。
ご報告です!
私うさぎ、カクヨム様の企画、カクヨム甲子園に小説を投稿してみたいと思います!
一応、なろうに出そうと思ってた新作のものになります。ジャンルは…恋愛童話......?って感じのを予定してます!
興味のある方は、カクヨムで同じ名前で投稿するのでよろしくお願い致します(*・ω・)*_ _)ペコリ
もう一つ!うさぎはテスト期間に入りますので1週間ぐらい休みます!
ちょっと就職に向けて頑張って行きます!
それでは皆様、Auf Wiedersehen!und Bis bald!