第4話 【 I get a new comer!】
長らくお待たせいたしました、えぇ、本当に申し訳ないです。
最近テストやら試合やら英検やら検定試験やら本当に忙しくって......
ともあれまた今月末のテストまでは更新できますので今後ともよしなに(*・ω・)*_ _)ペコリ
第4話です!
ひゅうひゅうと、昔大ヒットした映画作品の超有名なテーマ曲を口笛で奏でながら、飄々(ひょうひょう)と小高い丘を登っていく。
ともあれここは、殺人者がはびこる箱庭の電脳世界だ。とても『さんぽ』なんて雰囲気には似つかわしくないのだが、仕方ない、なにせ『サイハテ』を目指しながら歩き始めてから、敵と遭遇してないのだから。
口笛がサビに差しかかった所で、丘の頂上にたどり着く。
そこは、まぁ丘の頂上らしく何も無いが、眺めは抜群に良かった。
来た道を振り返って見ると、思ってたより割と近くに街の北門と、そこから伸びる柿色っぽい石造りの壁が見える。
ここからだと街の全貌を見ることが出来ないが、改めて小さな主要都市だとは思う。あくまでも世界の中心なだけであって、決して王都とか城塞都市みたいな仰々しい雰囲気の街ではないというのも理由の一つかも知れないが、まぁ、一番の理由はメインのフィールドはそこではなく、この広大な大地だからなのだろう。
視線を北へ戻すと、白く化粧を施した尖った山々に木が点々とした野原、少し東に目を向けると森の始まりが見えるし、西に目を向けると、北の最大都市『アフルンチャール』に続く鉄道の路線が遠くに見える。
そういえば、鉄道はしっかり機能しているんだろうか?動かしてるのは確かプログラムの1部だが、プログラムを改変したのはあの厨二フードだ、気まぐれに鉄道をストップさせていてもなんらおかしくはない。
――思い出したら腹が立ってきた、もしサイハテにいるとしたら即座に弾丸を眉間にぶち込んでやろう。
そうだ、別にランキングを上げてからアイツに挑まなくてもいいんじゃないか。そりゃあまぁ、ランキングが上がることで開放されるあれやこれやがあるにしても、結局は実力......いや、相手は恐らく――絶対に1位だ、プログラムをいじって自分を最強にしてるかもしれない、だとすれば勝ち目はないが......
考えてても仕方ねぇか、行こう。
俺はまたサイハテに向けて歩き始めた。
「あ?んだゴラ、なめてんのか?」
「どうするエド、しばく?」
と、目つきの悪い2人に睨まれ、片腕は白いシスター服に身を包んだ美少女で封じられながら、「言っとくが、そっちが喧嘩売ってくるならこっちは遠慮せずに買わせていただくぞ?」
とか啖呵をきる事になったのは、小高い丘を出発してから僅か5分後の事だった。
俺は、丘を登ってきた時とは違う曲をまたもや口笛で奏でていた。しかもこれまた有名な曲である。
俺の中でもかなり上のランキングに入るほどに好きな曲ではあるのだが......『人生はワンツーパンチ』とはどういう意味だ?27になった今でも未だに分からない事の一つである。
ちなみに他の永遠の謎を挙げるとすれば、カップの蓋についたアイスを舐める奴らの思考についてだろうか......汚いというかみすぼらしいとは思わないのか?
あとは、円周率とか海の水がしょっぱい理由とかだろうか。まぁ、下らないことばかりなのは否定しない。
さて、くだらない事ばかりを考えながら歩いてる時だった。
突如街道の遠くから数人の人間が猛スピードで走ってきていた、時々「まちやがれゴラァァァァァ!」なんて怒号も聞こえてくる。
待つも何も、俺はここで走ってきてるあなた方をぼーっと見てますよ?......と、言おうとしたが、どうやらターゲットは俺ではなく先頭を走る美少女のほうらしかった。
走る美少女、追う強面男3人組。
傍目から見ればヤクザに追っかけられるか弱い少女だ。
すると、美少女の方も俺に気づいたらしく「助けて下さい!追われてるんです!」と、悲痛な叫びを上げた。うん、見りゃ分かりますよ白いシスター服のお嬢さん。
美少女は俺の所まで駆け寄ってきて、俺を軸にするようにUターンすると俺の左腕を掴み、俺の後ろに隠れた。
美少女に抱きつかれるなんて、願ってもない幸運なのだが、目の前にチンピラが3人もいるとなると、本当に願い下げだ。
「助けて下さい!」
と、少女。
「おうコラガンナー、その子を寄越せ」
と、背の高い方のチンピラ。
「んー......まぁでも、こうして助けて下さいって言われちゃった以上、そうやすやすとはいどうぞとはいかないなぁ」
――そして時間は戻り、この状況へ。
「あ?んだゴラ、なめてんのか?」
「どうするエド、しばく?」
俺と同じ位の身長のチンピラがそう聞くと、エドと呼ばれた男は
「まぁ、ガンナーの言い分聞いてから決めようぜ?一番この状況を理解できてなさそうだ」
「言っとくが、そっちが喧嘩売ってくるならこっちは遠慮せずに買わせていただくぞ?」
エドが何かを言おうとしたが、それを遮るように背の高いチンピラが
「へぇ、威勢だけはいいじゃねぇか。威勢だけは、な?」
と言ってニヤニヤと笑う。
あぁうっざ。
「は?なに?バカにしてんの?少なくともテメェみたいなデカブツよりは良い動きできっと思うけどな?」
「てめぇ、あんま調子こいてんじゃねぇぞ......」
俺が肩をすくめて見せ、鼻を鳴らすと、巨漢は明らかに舌打ちをして、背中から大きく無骨な棍棒を抜く。
あーあ、こうなりゃ後は知らん、ままよ。
「どうやら本気で死にてぇようだなぁおい」
と、相手はまさに噴火寸前。
とりあえず避難させるために左腕にしがみつくシスター風衣装の美少女にこっそり声をかける。
「ねぇ君、多分この後アイツと戦闘になるから、そういうそぶり見せた瞬間に逃げろ。大丈夫、君は俺が守るし、あんなアホ共に負けないから」
少女は、涙目で首をぶんぶんと縦に一生懸命振る。
「おうコラよそ見してんじゃねぇぞ!」
「おいクロ、待ってて!」
というエドの制する声も聞かず、クロと呼ばれた巨漢は居合抜きの構えで走ってくる。
「死ねやボケっ!」
と、叫びながら、案の定棍棒で打ち上げてくる。
それを横に跳び回避、哀れクロの棍棒は空を切る。
「だっっ、らぁぁぁ!」
クロが叫びながら、空を切った棍棒を振り下ろしてくる。
ので、また横に跳び、勢いそのままに懐へ飛び込み、鳩尾にショートアッパー。
「ぐっ......」
と、言いながらもクロは腹を押さえて痛がるだけ。
――流石に、この程度のパンチじゃ『タンク』の防御力には勝てねぇか......
「なんで、ガンナーのくせに、銃使わねぇんだよ......」
「じゃあ使うか」
ご指摘頂いたので、腰のホルスターからベレッタを抜こうとすると、
「させっかよバーカ!」
そこをクロの右膝が邪魔してくる。
「――ふっっ!」
寸でのところでどうにか銃底を膝に叩きつける事が出来た。
「いっって――」
そこでやっと、クロの体が崩れ、足を抱えるように屈もうとする。
俺とてその瞬間を見逃すほどの馬鹿じゃない。膝を砕いたそのベレッタの銃床をそのまま首筋に叩きつける。
「ガッ......」
という断末魔と、グゴッという感じの鈍い音がしたと思ったら、それきりクロは動かなくなった。
――いや、正確には肩は動いてるから気絶してるだけなのだけれど。
「ふぅー......さて!こいつは気絶したわけだけど、どうするお前ら、とりあえずその子に手を出さなかったのは評価してやるけど?」
視線を左の方に向けると、つい先程まで背中に背負っていた木製のワンド?杖?を胸に抱え、気持ち臨戦態勢に入っている、腰は引けてるけど。
「俺はエドに従う、どうする?」
とか言いつつ、そいつはそいつでクロスボウに矢を装填しようとしている。
「わかった、降参だよ......と、言いたいとこだが!」
そうエドが叫ぶと、カシュン、という乾いた音と共に矢が真っ直ぐ少女に向かって進む。
――確か、『ゾーン』だったか。今リアスの身にそれが起こった。矢がしなりながら、それでも真っ直ぐ少女へ進むのが見える。走って身代わり、出来ない届かない。見殺し、もとより選択肢にない。銃を撃って矢を撃ち落とす、できない、そこまでエイムは良くない。スキルのワイヤーで落とす、これだ。
今、考えられる限りの最良の手を早速試す。
右手に持っていたベレッタを地面に落とし、右手のワイヤーを発動させる。
ワイヤーが反応するのは、キャラクターと、キャラクターの持つ所持品のみ。つまり弓から放たれた矢は、それはもう誰かの矢となることはなく、ただの矢となる。つまり触ることができる。
腕を振り上げながらワイヤーを発動したために、ワイヤーがムチのようにしなる、そんなワイヤーはうねりながら少女と矢の間に壁を作り、無事に矢に当たる。
バチっと静電気のような音を上げた矢はクルクルと宙を舞って俺の前に突き刺さる。
ワイヤーを巻き戻し、その横に落としたベレッタを拾い、左手で、ベレッタのスライドを動かして、クロスボウ男に向かって2発撃つ。
乾いた発砲音が鳴るのに続き、ドサッと何かが崩れる音。
「あ、あ......」
ははっ、ウケる。口開いてるし。
「悪かった、許してくれねぇか?」
誰が許すかバカ。俺はよく狙い、エドの眉間を撃ち抜く――撃ち抜けるはずだった。
銃弾は当たらなかった、いや、エドが躱したのだ秒速365mというスピードの銃弾を、5mほどの距離から。
「ハハハハハ!バカめ俺のジョブは『エクソシスト』だ!まぁ言うなれば戦闘に特化した『プリースト』って感じか!?要は悪しき者のてめぇの銃弾なんか見切れるんだよ!残念だったなぁっ!あっがっっ......」
そんな言葉なんか聞かずに俺の蹴りあげた右足は見事エドの股間を捉えた。
「じゃあこうして殴ればいいだろうよ」
俺は股間を押さえて、無様な格好でいるエドの眉間にベレッタの銃口を押し当てる。
「ヒッ......」
「そして避けられるならこうして接射すればいい、残念だったな」
本日3度目の発砲音、そして生暖かい血がリアスの顔の一部や手を染める。
顔についた血を袖で拭い、少女のいる方を向くと当然の如く、少女はかなり怯えていた。
無理もない、今日の所は帰ろう。体中が血なまぐさい。
そして街へ帰ろうと、来た道を振り返った時。
「あっ、あの!」
少し体ごと後ろを向きつつ見ると、そこには少女が立っていた、胸にはまだワンドを抱えている。
「さっきは助けて頂き、ありがとうございました。お礼、というかお願い何ですけど......私と、こ、コンビを!組んで、頂けません......か?」
――うぇ?