第2話 【Killing and rank up】
もう察した方しか居ないと思いますが、この作品のサブタイトルは全て英語で通してこうかなって思ってます。
「月が綺麗だなぁ」
ガラスのない窓から見える月を見ながら、男が呆けた声で呟く。
フード男の子供じみた発言から大体5時間程たった.....と思う。なにせ時計がないんだ、夕方から夜になった事以外分からない。
体育座りだった足を崩し、月が見えるように木の床に寝そべる。少しカビ臭い。
広場を出てからはただひたすら東に向かって歩いた、そして今は家主の居ないこのボロ屋の2階を少しばかりお借りしている。
もちろん、ここまでくる途中に村もいくつかあったが、特別このボロ屋.....が5件ほどある廃村に惹かれた。
というのもこの廃村は少しおかしい、東の農村エリアに、ましてや真ん中の街に続く街道沿いとかいう目立つ場所にこんな廃村は存在しなかった。
そして、あまりはっきりと覚えては無いけど、ここに来る途中の村の名前も変わっていた。
恐らく、あのクソッタレフード野郎がこの世界を、よりどこでもすぐバトルがしやすくしたり、この廃村みたいな地の利を得たり出来る場所を作ったのだろう。
変な気遣いしやがって、いらねぇっつうの
とかなんとか言ってもアイツもプレイヤーである以上、人の心は覗けないから伝わる事も無い。
――無いよね?
さぁ、明日から何をしようか.....やっぱり、千夏さんと早いとこ合流した方が良いよな。
アイツの目的が『PvPの戦闘によるプレイヤー同士の1位を目指すための戦争』である以上、必然的にこのゲームのプレイヤーは例えその気がなかったとしてもソレに巻き込まれる事になる。
――俺も、千夏さんも。
千夏さんもゲームが下手な訳ではない、むしろ上手な方だ.....ただし、一般人の中では、だ。
1周年の記念パーティーにわざわざ参加するようなゲーマー達の中に入ってしまえばその実力も霞む。
――そうだ、元はと言えば俺が誘ったんだ。多分、いや絶対、俺が誘って無ければ千夏さんはこんな事に巻き込まれるはずは無かった。
とすれば、俺には護るべき義務がある。
そのためにも早いとこ探さなきゃならない。
――今、千夏さんはどこに居るんだろうか…...
そんな事を思いながら、その辺に転がってたボロ布にくるまりながら寝た。
明日起きれば、また我が家の天井が見えるんじゃないか。という変な期待をしながら。
――鳥に頭を小突かれて目覚めたのは初めての事だった。
俺が体を起こすと、その灰色の鳥はバタバタと部屋の中を飛び回り、ガラスのない窓から大空へと飛び去っていった。
おはよう、異世界。さよなら、希望。
異世界生活の2日目が始まった。これでMIRAIのオートログアウトが機能してない事は確定。
ここからは必要以上の電気が脳への負荷として影響してくるって訳だ。
あー......マジでどうしようか......千夏さんは今どうしてるんだろう、まさかまだ広場には居ないだろうし、というか広場はどうなっているんだろうか、まさか気が狂った奴らが殺しあって血だまりになってはないだろうな。他にも色々考えなければ、どうやって飢えを凌げば良いか、どうやって生計をたてようか、どうやって、どうすればどのようにしてどうやれば――
――考えていても仕方ない、行動しなければ。
まずは、広場に行こう。
まぁ、なんとも嬉しい事にそこそこ長めの広場への旅路には邪魔が入ることはなかった。
銃弾は消費アイテムだし、人間との争いなんてしたくないからね。というかそんな事はぶっちゃけ興味がない。
さぁ、気になる広場は......まるで昨日の喧騒が嘘かのように閑散としていた。
こういう体験はした事がないから分からないが、普通何人かが協力しようと中心地に集まりやいのやいの、ってなると思うが......
結果として生まれたのは不信感、どす黒い1位への羨望や欲望らしい。
ともあれ、ここには千夏さんは居なかったんだ、帰ろう。
今日の夕飯は何にしようかな、金ないからなぁ......そうだ、街道沿いに生えてたキノコ、あれ食べれるかな......
そんな事を考えながら、東の街道に抜ける石造りのゲートにさしかかった時
「おい、そこのお前」
その男は現れた。
背中からはみ出た西洋剣、恐らくジョブはソードマン。
目を細めて、まるでのけものでも見るのかの様な目でこちらを見ている。
さぁ、幼稚園の頃に習った事を思い出そう『人と会ったらまず挨拶』だ。
「おいおい、初対面の相手に対してその目はやめろよ。はじめまして、いい天気だな!ソードマン」
「......ふざけてんのか?」
男は既に細い目をますます細める。
でしょうね、普通そうなるよね。
軽くため息をついてから、自分の思いの丈を話す。『思った事ははっきり言う』だな。
「単刀直入に言う。俺はPvPなんかしたくねぇ、というかバーチャルでも死にたくない」
「オーケーガンナー、お前の言い分は分かった。そして俺が言いたい事は2つ」
ソードマンがピースサインをこちらに向け、言葉と同時に指を曲げる。
「まずは、痛くないようにしてやるから安心して死ね。そしてもう一つは、寝言は寝て言えこのバカが。だ」
「あいにく、ついさっき起きたばかりでな。なぁソードマン、小鳥につつかれて起きた経験はあるか?」
ソードマンは俺の言葉を無視し、指をしきりに動かす。
そして俺の前に小さな画面の表示、書いてある内容は――
『LianさんからPvPの挑戦状が送られました。受けますか?』
そして『はい』と『いいえ』の選択肢。
「なぁソードマン。お前スペルミスしてるぜ?これじゃぁライオンじゃなくてリアンじゃねぇか」
「スペルミスじゃねぇよわざとだ。ライオンからもじったってのに気付いたのは褒めてやるけどな」
一切表情を変えないまま「それとライアンだ、ガンナー」と続ける。
「これからもよろしくライアン。残念ながら俺はこれからキノコ狩りなんだ、さよなライオン」
俺は尚もライアンから離れるべく、彼に背を向ける。
「――俺だってこんな事したくねぇよ」
弱々しくも、よく響く、太く低い男らしい声だった。
「でもよ、こうするしかねぇじゃんか。早くアイツを倒せば生きる可能性が増える。起きたら死んでるなんて......そんな事は、嫌なんだよ」
「俺もだよ、当たり前だ」
振り向き、早口で続ける。
「協力してやりたい、くれる命があるならいくらでもくれてやりたい。でも、ある人を見つけるのが俺の目的なんだ、俺はあの人より強いから、そんな事を言ってるのに、死んでたら......合わす顔が、無い」
「――個人主義者め」
決して、貶める様な声じゃなかった。
「悪ぃな」
俺はそう言い残して彼にまた背を向ける。
「おーいガンナー」
間延びしていて、微妙に気に障る声、それが歩きだそうとしてすぐに背後から聞こえてくる。
後ろを振り返ると、槍を持った金髪ポニーテールのイケメン野郎がニヤついた目と口で見てくる。
うっは、笑えるほどムカつく面構えだなおい。
そして、さらにムカつくポイントがもう1つ。
すぐ側にライアンの亡骸が横たわっていた。
「見させてもらったぜぇ?いやー大分仲良く話してたなぁ?」
「いやぁーまさしく滑稽だったよ」
あぁ、ヤバイ、腹立つ。なんだコイツ。
「るっせぇな、聞いてたんなら知ってんだろ?俺は今からキノコ狩りにいく、じゃあな」
帰ろう、コイツには関わりたくない。
「なぁクソ雑魚チキンガンナー」
――自分の中で、何かがキレる音がした。
「PvP、やろうぜ?」
キレてるせいだろうか、俺はすぐに了承した。
「おっ?決断が早いな」
「うるせぇ、とっととはじめろ」
出来るだけ相手を傷つける様に、低く鋭い声で、銃弾を込めながら答える。
「フン、まぁ良い、バトル.....スタートッ――」
その声は、銃声によって遮られ、ピリピリした戦闘の空気は、硝煙の香りによって煙に巻かれた。
「いっってぇぇぇぇ!!!」
ソイツが、俺が銃弾を叩き込んだ左肩――恐らく利き手の方の肩を右手で抑え、槍が地面に落ちる。
どうやら読みは当たったようだ、槍の基本攻撃は突きやなぎ払い、より力を込めるには利き手を後ろにした方が良いだろうし動きやすいだろう。
銃のスライドを引いた瞬間に、とっさの判断で左肩を打ったが、良かった良かった。
俺はゆっくりランサーに近づく前に、蹴りあげられるのも嫌だしちゃんと右膝を思いっきり踏みつけておく。
「イッッ!」
「さんざん煽っといて負けてやがんのだっせー」
「――るっせぇクソが.....すぐに殺してやるからな.....」
「殺されるのはやだから殺すわ」
ゆっくりと、ちゃんと両手で、相手の眉間に標準を合わせる。
「あと最後に、お前に言っとくわ」
「お前、めっちゃムカつく顔してんな」
『おめでとうございます!ランクアップです!』
という文字と、めちゃくちゃ細かい数字が出てくる。
――あぁくっそ、血で汚れちまった。
まぁいっか、PvPでもらった報酬もある事だし、温かい風呂とご飯でも食べよっと。
――野原には、強い死の臭いと、硝煙の香りが残っていた。
これは、ゲーム。そんな当たり前の事を再認識した。
けものはいてものけものは居ない、ただしつけもの、テメーはダメだ!
ちなみにうさぎは英語は得意じゃないです。
kaninchenとかほざいてますがドイツ語も無理です。挨拶と1、2、3位しか分かりません。
でも暇ができたらTOEICでも受けよかなとか思ってます。頑張る。
それまではよろしく頼むぜ、G〇〇gle先生。
えっ?伏せ字の〇がちゃんと機能してないって?
.....気にするな!(魔王ボイス)