【第1話】Start a new game. But it is not a new game
初見の方へ、うさぎの更新頻度はこんなもんです。ゆっくりまったり進めます。
だからブクマ外さないで.....ね?(暗黒微笑)
そして前書きの茶番もうさぎのおハコです2話です、サブタイ気になる人はググって訳せ。
――ただ暗い闇の中で、意識が覚醒する。
起きて早々、激しい頭痛と何日間も眠っていたような倦怠感が襲ってきた、体中が不調を訴えている。
思わず吐き気がして、それをそのまま口から吐き出そうとして――そして彼は、そこで初めて気づいた。
――今の自分には、口が存在していないという事に。
いや、口だけではない。頭も、目も、耳も、鼻も、首も、手も腕も足も、身体もない。
そして、ここが現実世界ではない事に気づいた。
まず起きたら聞こえてくるはずの『MIRAI』のモーター音が聞こえない。
という事はここは電脳世界の、VRの世界の中。目が無いのに見えてると錯覚してるのも、頭が無いのに頭痛をあるのも、身体が無いのに倦怠感があるのも恐らくMIRAIが脳波を測定し続けているからか?
――いや、それもおかしい。寝てたならMIRAIの自動スリープモードが機能して自動的にシャットダウンするはず、そしてMIRAIの起動画面は薄い水色、対してここは黒。
目がないから黒という訳では無い、現にMIRAIの起動画面とホーム画面にいる時はこんな感覚だ、脳の電気信号で制御してる以上、ぶっちゃけ体はいらない。
『I am a HERO』みたいなFPSはより一層VRを現実的なものにするだけのシステムにすぎない。
MIRAIには、人気は劣るにしろTPSのゲームもある。
――今はこんな事を思いだしてる暇じゃない。
とりあえずここは I am a HERO の中だしログアウトしなければ.....ってあれ?
ログアウト.....できない?いや、そもそもメニューが開けない?
バグ.....か?
混乱する彼の思考の前に、これまた混乱する画面が現れた。
黒の視界の中に反対色である白の『Now Loading』の文字と回る白い線。
ナウローディングって.....やっぱりここは
そんな思考を遮る様に次の文字。
――そして、場違いな安堵が彼を優しく包み込む。
角張った書体で表示される『I am a HERO』の金色の文字。
ちょっと下にプレイヤーネームとパスワードを打ち込むスペースとさらにその下に新しいキャラクターを作るボタンがある。
俺はプレイヤーネームの所に、昔、動画サイトに動画を上げていた頃から使っている使い慣れたニックネーム『EVE-Rias』読み仮名の方にイヴ・リアスと打ち込む。
もちろんこの時も手は使わない、あくまでも意識だけ。
そしてパスワードの方に自分の名前と、MIRAIを買った日の日付けを組み合わせた物を打ち込み、いざ!ゲームの世界へ――
『エラーが発生しました。このアカウントは存在しません。新規でゲームを始めるか、キャラクターデータの復元をお願いします』
――行かせてはくれないらしい。
運営もジョークが好きらしい。もちろん俺もお笑いは好きだ、流行りの芸人の真似だってできる。
そう考えながらもう1度打ち込んだ。
『エラーが発生しました。このアカウントは存在しません。新規でゲームを始めるか、キャラクターデータの復元をお願いします』
笑えない冗談だよ、ほんと。
何回、やり直しただろうか.....あの時の安堵感はとうに消えていた。一応、キャラデータの復元もしてみた、だが結果は同じ。
『エラーが発生しました。このアカウントは存在しません。新規でゲームを始めるか、キャラクターデータの復元をお願いします』
毎回このログが出てきた。
やるしか、ないか。
『新しいキャラクターでゲームを開始すると、今まで遊んでいたキャラクター、ゲームデータは消失します。よろしいですか?』
俺は、名残惜しいが『はい』を選択する。
そして、最初のログ。プレイヤーID、これは自動で設定。次に国や地域の設定、自動。プレイヤー名とパスワードは前と同じイヴ・リアス。パスワードも一緒。
次に外見の設定、髪を黒色に目は緑色、顔をイケメンってよりは可愛い愛嬌のある顔立ちに、身長は178cmに、体重はゲームをしてる間で可変する。
体色に関してはさっきの国の設定でMIRAIに設定してるのと同じアジア圏なので基本の色が黄色系になっているが、白めにしておく。
日焼けのシステムもあるがそこまでガッツリ色が変わるって程でもないし気にしない。
「ぶっはぁぁっっ!あぁっはぁぁ!」
キャラメイキングが終わり口ができ、精一杯息を吐いた。目ができた事で涙が出てきそうになる。鼻ができた事で匂いを嗅ぐ事もできる!匂いしないけど!
生の喜びを噛み締めてから、このゲームで最も大事な事、ジョブの選択をする。
俺は手を使って無数のジョブからただ一つを選ぶ。
『ガンナー』主に銃を使うジョブ。ジョブに最初から備わっている効果として。夜目が効くのと、アイテム所持数か多いこと、敵に気づかれにくく移動速度が他のジョブより少し早い。
迷わずこれを選ぶ理由はキャラネームと同じ、昔の実況者時代にやっていたFPSのガンシューティングゲームに基づいている。
そして最初の武器の支給。俺は安定性のあるアサルトライフルでも、近距離最強のショットガンでも遠距離最強のスナイパーライフルでもなく。小さなハンドガンを選んだ。
.....理由は一つ、軽いから。
このゲーム、RPGで最も大切なステータスというものが存在しない、あるのは『フィジカル』という身体能力値しかない。このフィジカルに筋力や防御力や素早さなどのステータスが全て含まれている。
だから最初の武器はあまり重いものではなく、ガンナーの利点を最大限に活かせるハンドガンを選択する人は少なくない。
ちなみに、フィジカルの値が低いままでいっちょ前にリボルバー片手撃ちなんぞしようものなら、遠慮なく肩が持ってかれる。
そもそも片手撃ちなんて実際できない、エイムがアホみたいに合わないし、反動がデカすぎて身を滅ぼすだけだ。
――さてこのハンドガン、なんと種類が選べる。
ザ・ハンドガンというものから何これ小さっ!っていう変わり種まであるが、俺は『ベレッタM92f』というハンドガンを選んだ。
イタリア製で装弾数は15発、口径は9mm。至って普通のハンドガン、ザ・ハンドガンだ。
さて、腰の辺りに重みが感じる状態で次の、最後の項目へ。
最後はスキル。最初は一つ、それもガンナー専用でなく全てのジョブで使える『オールラウンダースキル』しかない。
だがしかし、ここでも俺の選択は一つしかない。
『ワイヤーアクション』左右の手の甲に付いた円状よ射出機から電気の集合体でできたワイヤーを出し、立体的な動きができるというスキル。このワイヤーは優秀で、壁や天井、床ならワイヤーを打ち込む事ができ、さらにワイヤーにもダメージ判定もあるという優れもの。
当然、人気のあるスキルであり、このスキルのみを使ったタイムアタックレースもこの間開催された。
――さて、キャラメイキングが終わり、俺は終了のボタンを押す。
『お待たせ致しました。ようこそ!I am a HEROへ!』
という女性の声が聴覚が復活した事で聞こえてきた。
あれだけパニックになって起きながら、今は割と冷静に、なっている。
それどころか俺は、どこか高揚感さえおぼえていた。
昨夜、多くのプレイヤーがこのゲームの1周年を祝った中央都の大広場。その広場の真ん中にある噴水、中に入れる仕組みになっているその噴水の中でスポーンした。
噴水の中から出ると、強い夕陽に照らされた広場は昨日と同じく多くのプレイヤーで賑わっている。――ただ、その姿は異質だ。
――広場に集まるプレイヤーは皆、リアスと同じ白いシャツに紺のズボン、色違いのベストを着ている。
つまり、この広場に集まる全員が『このゲームの初期装備』を着ている。
リリース直後ならこういう事も不思議では無かった、しかし今は『リリースからすでに1周年』が経っている。
「なんだよこれ.....」
感傷に浸る暇もなく、その異様な光景に思わず声が漏れた。
とりあえず、ログアウト――できないか。やっぱり。
「千夏さん.....そうだ!千夏さんは」
震える手でフレンド枠を探すも、そもそもフレンドが居ない。
「ふっざけんなよ!」
時計はない、ログアウトできない、キャラクターデータは恐らく全員作り直し、何なんだよマジで!
思わず腰のハンドガンを地面に叩きつけようとした手がすぐ後ろで鳴ったサイレンで止まる。
リアスを含むプレイヤー達が一斉にサイレンの発信源である噴水の方を向く。
ホログラムでできたモニターが噴水の上の四方を取り囲んでいる。
そしてそこに1人の人物が現れた。
「やぁやぁプレイヤー諸君!平日の真っ昼間からプレイするゲームは楽しいかい?」
その人物は高めの声で楽しそうに叫んだ。フードのせいで顔を見る事はできないが、口元は見える。喋った日本語と口が噛み合って無いことをみると、恐らく外国人、MIRAIの自動翻訳システムが機能しているのか。
「僕?僕は楽しい!これ以上無いぐらいにね!だってさ、だってさ!」
「――僕がこのゲームの.....I am a HERO におけるランキングシステムの1位になれたんだからねぇ!」
――今、こいつ1位になったって言ったか?
どうせ嘘だろ、こんな口調も声の高さもガキみたいなやつが1位になれるはずが無い。
「疑ってる人のために僕が特別に1位の特典を教えてあげるよ。――1位の特典、それは.....」
「このゲームのシステムコードのプログラミング権限、及び一部の運営権限」
は?それってどういう事――
「――そして僕は作ったんだ、新しい、ゲームを.....2代目I am a HEROを!」
2代、目?
「まず手始めに運営とのリンクを解除した、嗅ぎつけられたら困るからね。本当はもっと安全な方法をとるためにMIRAIとのリンクも切りたかったんだけど、そんな事したら元も子もないからね。そして次にログアウトできなくした、皆このゲームをもっと楽しみたいだろ?さっすが僕!気が効くぅ!」
「おい待てクソガキ!」
低い男の声が広場に響き渡る。
「お前そんな事して何する気だ、あぁ!?」
相当に怒ってるらしい。まぁ、無理もない。
そしてフードの声は淡々と言った。
「戦争だよ、多対多のものではなく、一対一のね」
あぁー、訳が分かんねぇ。というか理解したくねぇ。
戦争.....戦争?
「あぁ、低脳には説明が足りなかったか。つまりこうだ。今こうしてる間もMIRAIは俺たちの脳波を測定し続けている、微弱な電流を使ってね。さて問題、人間の脳は電流を浴びせ続けられたらどうなると思う?」
フードがチッチッチッチッと時間を測る。
「ブッブー時間切れー。正解は脳に障害が残る、です!まぁ個人差があるせいでそれが軽度なものか深刻なものかは分かれるけどね。でも脳に障害は残る。確定で」
さっきの声の主とは違う男が言及する。
「バカかお前?MIRAIには時間で強制ログアウトさせる機能があんだよ、それも知らねぇのか!?」
「バカはてめぇだよ、言ったろ?そもそもこのゲームからログアウトができないって。MIRAIがログアウトしてもゲームはログアウトできない、運営に聞こうにも運営とのリンクを切っているから手の出しようがない」
イカれてる.....いいや、バカげてる。
「戦争、その言葉の意味はこうだ。脳の障害は遅ければ遅いほど深刻なものになる、このゲームでランキングを上げるには一番PvPが手っ取り早い。この世界のプレイヤーは大体8億人、その中の頂点はこの――」
フードは自分の手のひらを画面に見せる、その手のひらの上には淡く黄色に光る立方体が乗っかっている。
「――修復用のデータを入手する事ができる、要はこれが1位の特典だ」
「さぁ!8億のプレイヤーを倒し頂点に立て!英雄になってみろ!」
俺は遅かれながら気づいた。コイツは、コレは関わっちゃいけないパターンのやつだ、と。
「あぁ、自己紹介がまだだったね.....僕の名前は――『HERO』この世界の支配者だ」
――そこでホログラムは消えた。
それとほぼ同時に怒号が、殺気が広場全体を包み込む。
あぁ、イカれてる。単純にそう思った。
いや、誰でもこの惨状を見ればそう思っただろう。
歪んでいて狂った現実に合わせてる、それか単純にこの現実を楽観視してはしゃぐ者。
耐え難い憤りを覚える様な奴の態度と今の広場の惨状に激昂し身体全体を使って最大限の怒りを表現する者。
そんな現実を受け入れ、自分の非力さを呪う、又はただ単に悲壮感に苛まれてその場にうずくまり、大声で子供の様に泣き叫ぶ者。
そして、耐え難い現実を突きつけられても、耐え難い怒りが爆発しそうでも、己の非力さを知っても......それでも、ただ前へ、自分達の成さねばならぬ事を成し遂げようと、気丈に振る舞いその目に光を宿す者。
――又は彼のように、その光を失くし、喜ぶ事も、怒る事も、泣く事も、楽しく明るく振る舞う事もせずに、ただ――ただただ全てを受け入れて希望は無いことを知って絶望する者。
「誰だ!俺に石を投げたやつ!」
「戦争?面白ぇ、上等だコラ!」
「こんな状況でPvP送ってきたの誰だよ!?送り主出てこい!」
あーダメだこりゃ、頭おかしくなるわ。
そう思った俺は足早に広場を後にした。
冒頭の部分の説明難しい(:3_ヽ)_
だって現実にあぁいうシステムまだ無いしね
ヾ(:3ノシヾ)ノシ”
あったらとっくに買っとるわ_(:3 ⌒゛)_
あとすいません、少し終わり方気に食わないんで明日の午後5時頃加筆致します、すいません。
えっ?なんで明日なのかだって?
バイトだから早く寝ないと起きられないんだよ(:3[___]