基本的に語彙力がゼロだが美少女のみに濃厚な描写を行ってしまう僕の異世界チート生活
まず、この物語を書き記すにあたって言っておきたいことがある。君たちのようなむくつけき男どもに文字数を割くのは全く業腹だが、ごく少数いらっしゃるであろう麗しのレディ達に僕が馬鹿だと思われては困る。注意事項だと思って、伏してよく読むように。
ひとつ、僕は男が嫌いだ。正確にはそう認めて嫌ってやる価値すら認めていない。この世には八百万の神々がいるというが、僕以外の男には神はいないとすら思っている。
ふたつ、僕は女性を愛している。この物語は女性を描くためにあり、その辺をうろうろしている雑草にも劣る野郎のために使う文字数が惜しくて堪らない。
みっつ、もしかしたらこの小説を読むことで僕がまるでいけ好かないチートハーレム野郎のようだと思うことがあるかもしれない。そんな君たちのことを思って先に一言言っておく。
羨ましいだろ、ばーーーーーーーか!!!!!!!
*
トラックに轢かれて気を失ったかと思えば目の前に女神がいた。なんてこった、僕は自分が死んだのではないかと疑うよりも先に神々しいこの女性を舐めるように見つめる。
肌は白磁のように滑らかで、まるで現実感がない。まさしく偶像、その言葉に違わぬ魔性とすら思える美しさ。にこにこと静かに微笑んでいるだけなのに、この人に従いたいと思ってしまう威光のようなものが僕を狂わせる。
服装は薄衣を纏ったのみで、靴や装飾品なども一切身に付けてはいない。実に簡素な格好だった。ファッションとはほど遠いと言わざるを得ないが、しかしそんなものは全く必要がないと断言出来る。
美しすぎるのだ。服や装飾などこの美の前には足を引っ張るだけで無用である。ただそこにあるだけで、親愛や情欲や、庇護心や支配欲、見る者の感情を揺さぶり、湧き立たせる。これが神。まさしく美の神であろう。これが神でなくば、人の世に光なしとそう信じさせる美貌であった。
「異世界に行きなさい。チートをあげます」
「分かりました」
声は子雀のように可愛らしい。桜色の柔らかな唇から放たれたそれに僕は何も考えずにこくこくと頷く。冷静に考えたらその背から射す後光と裏腹にしょうもないことを言っている気がするけど、この声の言うとおりにしたいという欲求に勝てなかった。
「転移をさせてあげます、転生ではないですよ」
「かしこまりました」
「目的とかはないですけど、ヒトを一匹別の世界へ移し替えたらどうなるか興味があるのです。良きに計らいなさい」
「仰る通りにいたします」
与えられる天上の調べとも思えるような美声に僕はもう脳がとろけたようになりながらこくこくと頷き続ける。かなり酷いことを言われているような気もするが、とにかく僕が顎が外れんばかりに頷いたのだった。
*
ばしゅん。草原だ。盗賊が箱のようなものを襲っている。汚いおっさんだ。いらね。全て倒して話しかける。チートだね、すごいね。
「無事ですか?」
「ありがとうございます、貴方は命の恩人です!」
箱だと思われたものの扉が開き、麗人が降りてくる。どこかの貴族だろうか、賊に襲われボロボロになったこれは女性を運ぶ馬車のようだ。
その淡い水色の髪は、晴れ渡る空のようであった。手入れされ、艶やかに光を反射するその様は正しく天使の輪。世界に祝福されたかの如き輝き。白皙の美貌は傷一つなく、名だたる彫刻家が磨き抜いたのではないかと思うほどに滑らかだ。
潤んだ大きな瞳はサファイアのように青く、薄く紅を引いた唇と合わせて奇跡のような調和を誇っている。そこから滑り出る声の美しさたるや、如何なる楽団も己の非才を恥じて弦を切るのではないかと危惧するほどである。
手足はすらりと伸び、貴人であると一目見て分かるような仕立ての良いドレスに身を包んでいる。デコルテの強調されたその服は、最早純然たる視覚への暴力。そこから目を離すことなど出来ぬ魔法のような魅力を振りまいている。それら全てが、神の造りし傑作であると断言できる。よもやそれらのパーツそれぞれに機能があり、観賞用の人形でないということが不思議なほどである。
彼女の名はナナリーと言うらしい。可憐な彼女にぴったりの名前だ。僕は彼女と同行し、近くの街へ行くことにした。道中分かったのはなんと彼女は領主の娘であるということだ。
「何か困ったことがあったらいつでも我が家にお越し下さいね!」
*
「冒険者登録をしたいんだけど」
「はい、畏まりました」
「てめえが冒険者ァ? 笑わせるぜモヤシが。田舎に帰って牛の乳でもしゃぶってな!!」
絡まれたのでなぐった。ぼこん。
「ぶげら!!」
*
武器とかなんか色々買ってダンジョンにきた。気難しそうなドワーフのおっさんとかに気に入られたけどおっさんなのでどうでもいい。
「グギャー」
「えい」
「プギャー」
「ほい」
出てきた魔物を倒していたら、別の冒険者達を見つけた。
「折角だから一緒に行こうぜ。俺はマルコ」
マルコは男だ。
「俺は■■■(名前忘れた)」
男だ。
「アマリエよ、よろしくね」
アマリエと名乗る少女、年の頃は十八ほどであろうか。髪は燃えるように赤く、伸びたその髪をポニーテールに結んでいる。気の強そうな顔立ちで右目の下にある泣き黒子がセクシーだ。うなじからつう、と一筋の汗が垂れている。正しく少女と女の境目であると感じさせるような健康的な肢体。蛹が美しい蝶に羽化するように、女としての色香を理解し、男への最適な振りまき方を学習するその最中である。以前出会ったナナリーのような高貴な者の持つカリスマを含んだ魅力ではなく、ただの女であるからこその魅力。薄暗いダンジョンの中で見る媚を含んだその目線はくらくらするほど僕に「女」を意識させた。
背に弓を背負い、歩くその姿は軽装。スパッツのような体に張り付く生地の服の上に、ホットパンツのように短いパンツを履いている。足音が殆どしないのは彼女が斥候を担当するレンジャー職にあるからだろう。快活な様子の彼女はダンジョン内の罠を探す時には驚くほどに静かであった。
隊伍を組む関係上彼女の後ろを歩くこととなり、僕はその肉感のある臀部とそこから伸びるカモシカのようにほどよく鍛えられたしなやかな脚を見せつけられる。ダンジョンを悶々としながら進むのであった。
*
「うわーーーッ!!!」
進んでいると蛇が出てきて男が喰われた。多分死んでる。なんかマルコも気付いたら死んでた。
「あれは古の怪物、エウポリト・メディヌリア!! 駄目よ、あんな化け物……どうやって勝てばいいの……」
アマリエは顔を青褪めさせた。かたかたと弓を持つ手が震えて音を立てている。腰が抜けたのか尻もちを着く。そのまま少しでも逃げようと後ずさりをするが、硬直した体が言うことを聞かないのか大した効果もない。無理もない話である。日本では十五の少女はこのような環境に生きてはいまい。殺伐としすぎている。瞳の縁に溜まった涙が盛り上がり、恐怖に歪んだその顔を流れ落ちていく。
この少女を守らねばならない。僕はそう固く決意した。目の前にいるのは古代より恐れられてきた蛇である。龍に至るとすら言われている。チートがあるからといって、勝てる保証などない。
――――だからなんだ。目の前で怯える少女がいる。彼女が縋るように僕を見ている。なら、助けなくちゃいけない。そこに、あれこれとした理由なんか必要ない!
「せいや」
どかん。
「しゅごい、抱いて!」
抱いた。
*
「えへへ」
あれからアマリエと僕はパーティーを組み、冒険に出かけるようになった。意外なことにアマリエは初心で、今も隣り合って座っているだけで顔を赤らめて微笑んでいる。僕は嬉しくなって彼女の頬を撫でる。うっとりとした表情の彼女。瞳を閉じる。吸い込まれるように僕はそのまま――――。
「てえへんだ、てえへんだ!!」
「領主様のご息女のナナリー様がご結婚されるぞ!」
「お相手は隣領のブターリオ伯爵だ」
「何だって! あの豚みたいな顔の!」
「あの幼気な女性にあれやこれやすることで有名な伯爵だと! お可哀想にナナリー様!!」
何てこったい、僕はぶち壊しに行くことにした。
*
「病める時も、健やかなる時も、彼を愛し――――」
「その結婚、待った!!!」
空は晴天。雲一つなく晴れ渡り、風は澄んでいる。見渡す限りの砂浜と海辺の教会は白塗りで、彼女のウェディングドレスを照らすライトのように太陽の光を反射させている。ナナリー。海と同じ瞳をした目の前の女の子は、どうして僕がここにいるのか全く理解が出来ないといった表情でこちらを見ている。貴族としての務め。両親の期待。両家の婚約によって生まれる所領への好ましい影響。彼女はそんな理屈の枷を嵌めて今日この日を迎えたはずだ。
だが、そんなものは知ったことではない。
「ナナリー、僕と結婚してくれ」
確かに迷惑だろう。常識外れだろう。一冒険者でしかない身分違いの傲慢、そうだろう。だけど、僕にとっては行動するのには十分すぎる動機が一つある。
「え、ど、どうして……?」
「僕は君が欲しい」
僕は可愛い女の子が大好きだ。そんな女の子がこんな豚みたいな伯爵に取られるのは我慢ならない。
「やめて! 私に中途半端な希望を持たせないで!!」
「好きだ」
「貴族の娘は道具なのよ!! 政略結婚の道具なの!!」
「関係ない」
「私はもう、何にも希望したくないの!! それを取り上げられる気持ちが分かる!?」
嗚呼、何と麗しき涙。それだけで、僕はこの世の不条理と戦う覚悟が出来た。見知らぬ異世界の法など知ったことではない。彼女をこのつまらない柵から解き放つためならば、僕は修羅となろう。彼女の腕を掴まえて引き止める者あらば、その腕を斬ろう。彼女を叱りつけ思うままにしようというのなら、その口を縫いつけよう。彼女を守るのだ。男に惚れた女を守る以上の誉れなど、ない。
「信じてもいいの……?」
これまでどんな絶望を味わっただろう。逃げようとすれば、それを手伝う者もまた同罪。彼女が動けなくなるのも分かる。だが、それも今日までだ。
「ああ、任せろ!!!!」
「……はい」
「よし、逃げよう!!」
「な、何者だ!!貴様こんなことをしていいと思っているのか!」
「誰か、この無礼者をひっ捕らえろ!!」
有象無象が騒いでる。薙ぎ倒す。
「ええい、出会え、出会え!」
薙ぎ倒す。
「恨みはないが、これも雇われの――」
薙ぎ倒す。
「その方、中々の実力者と――」
薙ぎ倒す。薙ぎ倒す。薙ぎ倒す。それでもまだまだやってくる。
「くそ、何て多いんだ! 描写がしつこい!」
「もういい、 あいつを殺せ!! フリードマン!!」
「御意」
「またか! いい加減しつこい!」
薙ぎ倒――せない。
「我が名はクライツェルト・フリードマン。畏れ多くも国王陛下より『大楯』の名乗りを許されし者。いざ、尋常に勝負……」
殴る。殴る。殴る。殴る。倒れない!!!
なんだ、こいつ……?
「軽いな……貴様の言葉も、拳も!!」
胸を浅く斬られる。この世界に来てから初めてのことだ。ぱっ、と華のように血飛沫が舞う。痛いというよりもむしろ熱い。命の源が漏れ出ているような感覚に襲われる。
拳を握る。正拳の構え。幾度となく放ってきた一撃だ。神から授かった祝福と、体内のプラーナを混ぜ合わせ、全身に行き渡らせる。体から羽毛のような燐光が散る。古の蛇をも殺したこの奥義で、決着をつけてやる……!
「第八奥義……『荒天画撃』!!!」
鋼鉄の鎧に突き当たる。拳が螺旋状に渦巻いて突き刺さるような幻影すらも見えるほどに凝縮されたエネルギーが全て敵の体内に撃ち込まれ、その体を破壊せしめんと暴れ回る。はっきり言って人体に耐えられるパワーではない。僕が神から与えられた能力によって無理やり耐えているくらいだ、常人に耐え得るものではない。
だが。
「————温い」
立っている。否、立っているどころか、傷一つ付いていない。その身に纏う鎧は粉々に砕け、体をなしていないというのに、その中の本人が何の痛痒も感じさせない顔で平然としている。
「一角の武人ならば皆、技を受ければ人生が見える。お前の拳は軽い。軽い人生だ」
更にもう一太刀。振るわれた逆袈裟斬りをかわしきれずまた胸元が裂ける。出血量は先ほどの比ではない。
そんな……まさか……勝てないのか……?
「……私を置いて逃げて!! このままじゃ貴方は殺されるのよ!!」
ナナリーが悲痛に叫ぶ。僕の敗北を悟ったのだ。武の一文字も知らぬ彼女が。それほどまでに、状況は圧倒的だった。
「ま、だまだぁぁあああああアアアア!!!」
分かる。このままでは負ける。
「……救えん小僧だ」
「やめてえええええ!!!」
だが殴る。殴り続ける。拳が裂けても、血が飛び散ろうと!!!
だが、届かない。無傷で、男はそこに立っている。
くそ、くそ……くそ!!! 男は持っていた剣を振り下ろすべく、上段に構える。どうする、どうすればいい。脳内で凄まじい勢いでこれまでの人生が回転している。走馬灯にはまだ早い。僕は負けない、負けるわけにはいかない。考えろ、このコンマ数秒。僕の身に剣が突き立つその瞬間までに!!
「全ては無駄なこと!! 我が身には『打撃無効』の祝福がかかっている。物理攻撃ばかりの貴様には相性が悪過ぎるのよ!!!」
「何だそんなことかよ、焦って損したわ」
ぼわっ。火の魔法で男は灰になった。
*
小鳥の囀りと木漏れ日の中、僕は微睡む。薄ぼんやりとした意識の中、最愛の妻達の声が聞こえる。
「あなたー、おはよう。ご飯よー?」
この声はアマリエだ。あの後全てを捨てる覚悟で僕と添い遂げてくれた。犯罪者として扱われる僕と一緒になることに一片の迷いも見せなかった、彼女。
「あら、旦那様はお疲れだからもう少し休ませてあげてちょうだい。『ずっと起きてたから』」
それに対してナナリー。昨晩は床を共にしたからかいつになく不敵だ。彼女は普段貴族令嬢らしく淑やかにしているが、どうも僕が絡むと暴走しがちである。困ったものだが、それだけ愛されていると思うとそれも悪くないと感じてしまう。
「アンタねえ……横入りした癖に態度がデカイのよ!」
「あら、家格から言えば私が正妻よね?」
「絶縁されてるでしょうが!!」
こうして僕は二人の妻を持つ夫となり、もうすぐ父となる。面倒事も多いので秘境に移り住んでいるが、こんな二人の美女を妻に出来たことを考えれば安いものだ。
「あなた、この女に何とか言ってやってよ!!」
「品のない女ね、そう思わない? 旦那様」
「異世界、最高!」
おわり
比較的ちゃんとしている上に美少女だけを贔屓しない人物説明
主人公
転移時点で年齢は17歳。かつて所属していた冒険者ギルドでは『一撃』という二つ名で呼ばれるS級冒険者だった。無類の女好きで男のことは路傍の石ほどにも認識していない。
今は二人の妻と人類未到達地域である最果ての地『バハレシアの森』にて暮らす。時折チートの一つである瞬間移動で流行の服や宝石を買ってきてはプレゼントするのが楽しみ。
ナナリー・シュゼルクローム
主人公と同い年。スレンダー系の儚げな美人。元貴族令嬢だが主人公と駆け落ちし、ただのナナリーとして彼の妻となる。その際に先に主人公と結ばれていたアマリエとのキャットファイトは歴史に残らないのが残念なほどの一戦であった。
ちなみに彼女の家は公爵家でそれを連れ出した主人公の首には高額の賞金がかけられている。
アマリエ
スタイル抜群のお姉さん系美女。快活で明るい性格。生まれはスラム。幼い頃から生業にしていた泥棒から足を洗い、真っ当に暮らすために冒険者となった。最初はダンジョンで一人彷徨う主人公を助けなくては、という親切心だったが、窮地を救われ恋に落ちる。その一途さは、他の女と駆け落ちしようとしている己の男に迷わずついて行くほど。
マルコ
おとこ。
ブターリオ伯爵
ぶた。
クライツェルト・フリードマン
ごみ。