6話
先週の投稿忘れてたわけじゃないですよ (;'∀')
どうもすみません。
6話をどうぞ。
6話:《世間は広いようで狭い》
どうやって逃げようか、という俺の心配は杞憂に終わった。
「お~い、みんなかいさーん。」
「ほらほら、撤収!撤収!」
「う~い、」
「おう、今日はなんてラッキーな日だ!」
「だな!まさかちゃんと女の子の格好をしたヒカリちゃんに会えて、しかもバトルまだ見れたんだからな。」
みんな、三々五々騒ぎながら去っていく。
いや、待て!、なんだその規律の保たれたアイドルファンのグループみたいな反応は。
てか、『ちゃんと女の子の格好をした』じゃねえよ!、自分で言うのもなんだが女装だよ!
俺の心の中での突っ込み空しく、ギャラリー達はあっという間に去ってしまった・・・
俺の中でレーナさんへの恨みがまた一つたまる。
「あ、あの・・・ヒカリ先輩ですよね・・・?」
「ん?ああ、そうだけど、えっと・・・・?」
助けた少女は片方が桃色の髪に緑色の眼、もう片方が緑色の髪に桃色の眼をしており、顔立ちはよく似ていてまるで双子の様だった。
と、その双子|(?)の内、しっかりしてそうな方はどうやら知り合いだったらしい。
しかし、俺の方ではよく思い出せない。
「あ、あの私はこっちではルルっていいます。先輩と会うのは2年ぶりです。えっと、妹のララも同じく2年ぶりのはずです。」
どうやら本当に双子か姉妹の様だ。
「う~ん、ごめん、ちょっと待って、確か2年前といったら・・・・・ああ、《GQO》にはまって剣道の道場をやめた年か・・・」
「へっ!剣道やめたのってそんな理由・・・・」
俺の呟きを聞いてルルとララは肩を落とした。
ん?剣道ってことはまさか!
「ああ!あの双子か!、なんだか美人になってたから全然わかんなかったぞ。」
「あ、ありがとうです。」
「それより先輩、剣道をやめたのがゲームにはまったからってどういうことですか!!」
妹のララがしゃべったと思ったら、ルルが何やら激高していた。
「先輩急に道場来なくなってその後すぐにお祖父ちゃんからやめたって聞いて、怪我したのかな、剣道嫌いになったのかなって、ずっと、ずっと、心配してたのにぃ!!」
「あ、いや、その、悪かった。」
俺はしどろもどろになって謝る。
まさか、そんなに心配されているとは思ってもなかった。
確かにいきなりやめたけど、道場の師範である爺さんにも話したんだがな~、そん時試合させられたっけ・・・と、まあそれは今はいいとして。
「ルル姉、待です。ヒカリ先輩が困ってるです。」
「はっ!わ、私としたことが!す、すみません。お礼も言わず、怒鳴りつけてしまって。」
「い、いや、俺も仲良かったのに二人に何も言わずに道場やめちゃったのは悪かったし、まあ、とりあえず近くのレストランでも行って落ち着いて話すか。」
「え?、えっと、その、わ、私たち今ちょっとお金が・・・」
「ああ、武器を買ったんだったけ?いいよ、2年前心配させたことのお詫びとして俺が払うから。」
「い、いえ、そんな悪いですよ・・・」
「そうなのです。助けてもらった上にそれは申し訳ないのです。」
二人は申し訳なさそうな顔で首を横に振る。
「いや、俺が二人と久しぶりに話したいんだ・・・ダメかな?」
「そ、そんな事言われたら断れないのです。」
「そう言うとこは変わってない・・・先輩ずるいです・・・」
二人は少し頬を紅く染めながらしぶしぶ頷いてくれる。
ルルの声は小さすぎてよく聞こえないが頷いているから大丈夫だろう。
「よし、じゃあ行くぞ、っと、その前にすまん。服屋に寄って服を買いたい。」
俺は改めて自分の服装を見るとげんなりする。
「よ、よかったのです。実は先輩がアッチの方に目覚めたのではないかと内心心配だったのです。」
「いや、いや、縁起でもない。これはちょっと知り合いに嵌められたんだよ。」
割と本気で胸をなでおろすララに俺はさらにげんなりとしながら返すのだった。
その後、鍛冶屋で『刀』を受け取り、服飾店に行って無難に『無地のポロシャツ(青)』と『ジーパン(紺)』を購入し、店にある装備変換用の小部屋で着替えた。
ちなみにどちらも性能はVIT+5で、シャツが500Gでジーパンが700Gだ。
当初の目的を果たした俺はとりあえず北西区に移動して、この街で一番大きいレストランに入った。
「いらっしゃいませ。ホールと個室、どちらをご利用ですか?」
「個室でたのむ。」
「かしこまりました。では、02番のお部屋をお使いください。」
俺は結構リアルの個人的な話になることを予想して、個室をオーダーした。
ちなみに、店員はNPC、ノンプレーヤーキャラクターだ。
俺たちは個室に入って俺たちは飲物とケーキを注文した(遠慮する二人を何とか説得して・・・)。
「っと、まずは二人とも、瑠璃と玲奈であってるよな?」
「はいです。お久しぶりなのです光理先輩。」
「そっか、懐かしいな。あの頃は剣道にはまって、結局爺さんに剣道どころか剣術まで教えてもらったんだよなー。」
「はいなのです。あのころのヒカリ先輩は道場の生徒の誰よりも強かったのです。」
「まあ、爺さんには一本もとれなかったんだけどな・・・」
「お祖父ちゃんは別格なのです。」
俺とララは懐かしい思い出話に花を咲かせているのだが、ルルは一人なんだか不満があるような嬉しいような複雑な表情ををしていた。
「お姉ちゃん、早く機嫌直さないとヒカリ先輩に嫌われるのですよ。」
「う、うん、あの、先輩、一ついいですか?」
「ああ、なんだ?」
そこでルルは一つ咳払いすると真剣な顔をする。
「先輩が剣道をやめたのは、剣道が嫌いになったとか、その、その、わ、私たちが嫌いになったりとかではないんですよね?」
「ん?ああ、そのことは本当に悪かった。あの時は幼馴染たちと始めたゲームにはまって、そっちに専念したかったから他の事をやめたんだ。だから決して剣道やルルたちが嫌いになったわけじゃないんだ。」
「そうですか・・・よかった。」
そこでやっとルルは花の様な笑みを浮かべた。
「あの先輩、そう言えばお祖父ちゃんに許可をもらったと言ってましたが、お祖父ちゃんはなんと?」
「ん?ああ、訳を話したら、爺さんは『わしと試合をして納得させろ。』って言われたぞ。で、試合には負けたけど、爺さんは『よかろう。』って言ってくれたんだ。」
「そ、そうなんですか・・・なんだかお祖父ちゃんらしい。」
「そうなのです。」
三人は声をそれえて笑う。
「そういば、二人ともこの《LAWO》が初めてのゲームか?」
「はいです。」
俺は何となしに尋ねる。
二年前の二人の様子はゲームはあまりやらないといった感じだったことを思い出したのだ。
「友達に誘われたのか?」
「いえ、六日前くらいに急にお祖父ちゃんがこのソフトとヘッドギアを持ってきて、『このゲームの中なら本物さながらに剣を振れる、息抜きと一緒に剣の稽古ができるからやってみるといい。』って言われたので二人で始めて見たんです。」
「へぇ~、あの爺さんが勧めたのか・・・ってか、よくソフトが手に入ったよな。」
「やっぱり、手に入れるの難しいんですよね、こういうの。その後お父さんもお祖父ちゃんもなんだか徹夜明けみたいな顔していたのでまさかとは思ったのですが・・・」
「いや、すごいな!爺さん、ゲーム買うために徹夜したのかよ。」
俺は爺さんの人柄を思い出しながら驚愕する。
「それを言うヒカリ先輩も、徹夜したのです?」
「ああ、まあ、幼馴染と一緒にな・・・」
「では、その幼馴染と一緒に遊んでいるのです?」
「いや、今回は基本は別行動だな。まあ、クエストで人手が欲しかったりしたらお互い声をかけるけど。」
「そうなのですか。あの、ずうずうしいお願いなのですが、私たちはあまりゲームに詳しくはないのでよかったら先輩、いろいろ教えて欲しいのです。」
ララに可愛くお願いされて断れる男がいるのだろうか?いや、いるがずがない。
俺は二つ返事でララの申し出を受けた。
可愛い後輩のためだ、一肌脱いでやろう。
それから紅茶とお菓子を堪能しながら少しの雑談と現状の二人のステータスの確認を行った。
二人は生産系のプレイを目指すつもりらしく、昨日はずっと修練所に籠っていたらしい。
ルルが将来家を継ぐことを考えて、《鍛冶》のスキルを取っており、ララは家業は姉に任せて自分はアクセサリーデザイナーになりたいらしく《細工》のスキルを取っていた。
なんでも、どちらの作業も相当難しいらしく、昨日籠った結果できたのはNPCメイドに及ばない武器やアクセサリーばかりだったらしく自分たちで作ったものは全部インゴットに打ち直したらしい。
「そうか、じゃあ二人の目標はとりあえずスキル上げのための資金稼ぎってところか?」
「はいです。材料のインゴットも燃料の木炭も少し値が張るのです。」
ララは愚痴るように返す。
「じゃあ、鉱石採掘も資金稼ぎに並行してやるか。」
「はいです。できれば装飾用の宝石なんかも採掘したいです。」
「はは、まあそれは運しだいかな?」
「あの、先輩、今やってるイベントは私たちも参加した方がいいのでしょうか?」
「ああ、今のイベントはランキング上位を目指さなくても、最後にイベントアイテムを報酬に交換できるからな。それに『初心者イベント』だ。もしかしたら交換商品に『初級移動炉』とかがあるかもしれないぞ。」
「『しょきゅういどうろ』ですか?」
「ああ、これがあればスキル上げや商品を作るときにわざわざ修練所を利用する必要もなくなるぞ。」
「そ、それは魅力的ですね・・・・私たちもイベントモンスター狙ってみます。」
「そうか、じゃあとりあえず、この後狩りに行くときにも狙って倒してみようか。」
「「はい(です)。」」
二人の元気な返事を聞いてから、俺たちは店を後にしたのだった。
レストランを後にして、俺たちは雑貨屋でピッケルを数本買い、圏外フィールドにでた。
採掘をすることを考えると北側フィールドに行きたかったのだが、いかんせん北と東側フィールドは少しレベルが高いため毎度おなじみの西側フィールド《クインメリーの森》にやって来た。
クインメリーの森は、南側を《アメリア山脈》、北側を《ヴィクトリア山地》に挟まれており、フィールドの境界線は崖になっていて、そこにいくつか採掘ポイントがあるのだ。
今回俺たちは北側の《ヴィクトリア山地》側の崖付近の森の中に来ていた。
「ルル、ララ、そこの壁のでっぱりのところ、採掘ポイントだぞ。」
「はい、掘ってみます。」
「私は警戒するのです。」
俺たちは順調にレベルを上げながら、採掘も進めていた。
現在、ルル、ララともに3レベで俺は変わりなく9レベ。
今のところ、銅鉱石×14個、石ころ×28個、宝石の原石|(未鑑定)×5個が採掘の成果だ。
俺が《識別スキル》で採掘ポイントを見つけた後は採掘者の運が良いのか、結構な確率で石ころ以外が掘れるので採掘は順調だ。
ルルが《採掘スキル》を取得してからはなおの事取得アイテムがよくなった。
ちなみに、未鑑定の原石は後でまとめて俺が鑑定することになっている。
アイテム分配は、食材関係は俺に優先的に回してもらう代わりに鉱石類と宝石は二人に渡すことにしておいた。
「ララ、あそこに『トリケロン』がいるぞ。レベルもそんなに高くないから一人で倒しに行ってみるか?」
「う~ん、やってみるのです。」
「ああ、無茶をせず、自分がやっぱり無理だと思ったら逃げていいんだぞ。」
「はいなのです。」
俺の問いかけに少し考えた後ララは自分の得物である片手直剣に手をかけ、ノンアクティブの草食獣モンスターに戦いを挑む。
『トリケロン』は「突進」と「体当たり」しかしてこないので、正面を避けそれをうまく避けることができれば一人でも倒すことができるのだ。
ルルもララも流石に剣術道場の娘だけあって、相手との間合いの取り方、攻撃するタイミング、など剣道とはかなり勝手の違うものではあったがすぐにそれを身に着けた。
「先輩、ここの採掘終わりました。」
「そうか、じゃあ、ララの手伝いをして、もう少しだけ奥に行ってみよう。」
「はい、でも結構奥の方まで来てしまいましたけど大丈夫なんですか?」
「ああ、北側は草原エリアが狭い代わりに森の中のモンスターが少し弱めなんだ。まあ、奥の方に行き過ぎるとその限りではないんだがな。」
「そうなんですか。」
と、俺たちがそんな話をしているうちにララは一人で『トリケロン』を倒し終わっていた。
剣を腰に納めたララと合流して俺たちは先に進む。
次に見つかったのは『スターターチキン』だった。
「ルル、ララ、さっきもやった通り、俺がそっちに追いやるからとどめ頼んだ。」
「はい」
「任されたのです。」
三人で協力をし、さくっと『スターターチキン』を倒す。
ピロリンッ!
「あ!」
「やったのです!」
今の『スターターチキン』で経験値がたまり、二人そろってレベルが4に上がる。
二人はレベルアップを知らせるウインドウを消した。
しかし、ララの前に再びウインドウが現れる。
「あれ?『移動アイテム《始まりのダンジョンキー(三人用)》』というアイテムをゲットしたのです。」
「お!まじか?」
ルルがウインドウの内容を読み上げ、俺はそれに驚きの声を上げる。
「それはどんなアイテムなんですか?」
「名前の通り特設ダンジョンに移動して、ダンジョン攻略ができるんだ。俺が今イベントのトップに居られるのも俺と幼馴染の一人の二人でダンジョンを攻略したからなんだ。」
「そうなんですか。ならこのアイテムを使えば私たちも結構上位狙えますか?」
「まあ、結構いい線に行けるんじゃないかな?」
「そうなのですか。では、ヒカリ先輩にはお世話になってますし、この三人で行くのです。」
「そうですね。」
「ああ、だが、一度街にもどt!!」
言い終わらないうちに俺の視界は真っ白に染まる・・・
気付けば、ダンジョンの小部屋についていた。
俺はその場にがっくっりと膝をつく。
「そ、その、ごめんなさいなのです。」
ララが俺の横に立ち、謝ってくる。
「はあ、まあいいさ、ララはその人の話を聞かずぐんぐん進む癖まだ健在だったんだね。」
「ふぇんふぁいいふぁいほふぇす!!」
「せ、先輩、『まあいいさ』とか言いながらやっぱりお仕置きするんですね。」
ララのほっぺを縦に横に引っ張る俺にルルが苦笑いを浮かべる。
2年ぶりのこのやりとりだが、懐かし限りだ。
「ふええ~、ほっぺがとれちゃうかと思ったのです・・・」
涙目を浮かべながら自分の頬を抑えるララを横目に、俺は現在の状況を整理した。
俺の方は装備も回復薬系も一応は充実している。
しかし、二人は資金不足のため回復薬は初心者回復薬を5本だけ、装備は安い革の胸当てのみと大変心もとない。
まあ、今更嘆いても仕方がない。
「とりあえず、ここでリタイアするのはもったいなさすぎる。適度に自然回復させながら進むぞ。まあ、マップを見る限りここは『1Fダンジョン』だ、前回の時の経験から考えて数時間はかかるだろうけど。気長に行くぞ。」
「「はい(です)」」
二人が頷くのを確認してから俺たちはダンジョンに繰り出した。
ダンジョン内は前回と同じく、『攻撃的な始まりの鶏』しかいない。しかし、このダンジョンは前回よりも迷宮が複雑な造りとなっておりトラップも少なからず存在していた。
「ララ、ストップ!」
「へ?何なのです!?」
ガコッ!
俺の《識別スキル》に何かが反応し、急いでララに声をかけるが間に合わず、何かのスイッチが押されてしまった。
「ヤバッ!!」
「キャッ!、せ、せ、せ、せ、先輩?」
俺はルルの後ろから迫る槍に気付き、抱き寄せてその場に倒れるようにして回避させる。
スイッチを押した本人以外を狙ってくるとはなかなかに意地の悪いトラップだ。
「はあ、ララ、俺が先に行くから後ろから来い。」
「はいです。」
ララはすまなそうにたたずむ。
「っと、すまん。ほら。」
「あ、ありがとうございます。」
ルルを離し俺は立ち上がると、ルルに手を差し伸べる。
ルルはその手を取り、顔を赤く染めながら立ち上がった。
「よし、気を取り直して進むぞ。」
「は、はい!」
「はいなのです」
それからしばらくトラップを避けながら歩いていると分かれ道に着いた。
「う~ん、二人ともどっちがいい?」
俺は振り向きながら二人に尋ねる。
「えっと、私は左がいいと思います。」
「ん?理由を聞いてもいいか?」
断言するように言うルルに俺は尋ねる。
「いえ、それほどしっかりとした理由は無いのですが、こういう迷路などは左の壁に沿って歩くといいと聞いたことがあったので。」
「ああ、なるほど。じゃあ左に行ってみて、行き止まりだったら戻ってこよう。ララもそれでいいか?」
「はい、問題ないのです。」
ララが頷くのを確認して左の道を進む。
しかし、残念ながら少し進んだ先は行き止まりだった。
ただ、嬉しいことに宝箱を発見した。
「おお、トレジャーボックスか。前回のダンジョンじゃ、中ボス倒した後の回復薬補充でしか出てこなかったんだよな。」
「そうなのですか?」
「ああ、よし、トラップもなさそうだし開けてみるか。」
「「はい(です)」」
俺は《識別スキル》を使い、宝箱のトラップの有無を確認した後、宝箱に手をかける。
「「「おおーーーー!!」」」
中には三つのアイテムが入っていた。
「えっと、まずこれが、『始まりの金槌』で、こっちが『始まりのヤットコセット』、でこれが『始まりのバンド』か・・・」
俺は鑑定を使ってそれぞれのアイテムの名前を調べる。
おそらくこのダンジョンへつながるダンジョンキーを取得したララの所持スキルの中で生産系スキルのレベルが一番高かったからであろう。
宝箱の中のアイテムの内二つは《鍛冶》《細工》用のアイテムだった。
最後の一つがアクセサリーになったのは俺が生産系スキルを持ってなかったのが原因だと考えられる。
『ヤットコ』とは、細工に利用するペンチみたいな道具で、先が丸くなったものと平らになったものの二種類がセットで入っていた。
ちなみに、アイテムのステータスがこれだ、
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《始まりの金槌》
分類:生産用アイテム
グレード:R
品質:B
金色の翼が彫ってある金槌
鍛冶による生産の成功率及びグレードアップ|(小)
STR+6
DEX+7
________________________
________________________
《始まりのヤットコセット》
分類:生産用アイテム
グレード:R
品質:B
金色の羽の彫ってあるヤットコ
細工による生産の成功率及びグレードアップ|(小)
STR+3
DEX+10
________________________
________________________
《始まりのバンド》
分類:アクセサリー
グレード:R
品質:B
金色の羽を模したデザインのリストバンド
STR+5
VIT+5
RUK+3
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中々の性能である。
「まあ、これの分配は考えるまでもないな。ルルが金槌でララがヤットコセット、俺がリストバンドで大丈夫か?」
「はいです。」
「はい、これで修練所を借りるときの代金が少し浮かせそうです。」
俺の問いかけに二人が嬉しそうに首肯した。
アイテムの分配を終わらせると、また来た道を引き返した。
元の分かれ道まで戻ってくると今度はもう片方の道を進む。
相変わらずトラップがところどころに設置してあるが、俺の《識別スキル》のおかげで難なく回避できている。
敵も相変わらず『アグレッシブスターターチキン』のみである。
ダンジョンキーを獲得したララのレベルに合わせたのかこのダンジョンのモンスターのレベルはそこまで高くはない。
俺たちは敵を倒しながら着実に迷宮を進んでいくのだった。
それから数十分、俺たちは今まであった小部屋の四倍くらいの大きさの部屋に到着していた。
「くそー、やっぱっり居やがったか・・・・」
そうぼやく俺の前、大部屋の中には『攻撃的な始まりの鶏・中』が二体存在していた。
まだ、部屋の前の通路に隠れているためまだ中の二体は気づいていない。
「俺が左のやつを倒す。その間二人で右のやつを相手していてくれ。なんなら倒してしまってもいいんだぞ。」
「はい!倒すのは無理かもしれませんが、足止めは任せてください。」
「がんばるのです!」
「よし、じゃあ行くか!」
俺の言葉と共に三人で一気に部屋に飛び込む。
「「コケーーーーーーー!!」」
________________________
『アグレッシブスターターチキン・中A、B』
Lv5
少し大きめの攻撃的なスターターチキン。
弱点属性:火、風、闇
耐性属性:土、光
________________________
鑑定した結果、そこまで強くないことにひそかに安堵する。
俺は左側の『スターターチキン・中』に向かて走りながらアーツを発動する。
「リープスラッシュ!!」
補強された脚力で飛び込み、そのまま刀を振り下ろす。
「コケェェーーーー!!」
クリティカルだ!!、
クリティカルとは一定の確率で敵がノックバックを起こし、その間の攻撃が1.1倍になる現象だ。
ちなみに発生確率はLUKの値が関与しており、また、弱点部位への攻撃やパリィによっても起こりやすくなる。
閑話休題
アーツが終わり、地面に着地した俺はすぐに振り返ると、スラッシュを発動して背後から切り上げる。
そして、それが終わらぬうちに今度は刀の刃向きを変えて、次のアーツにつなげる。
「エッジ!」
「コケェェェーーーーーーー!」
エッジの斬り下ろしが終わったくらいにやっとノックバックの硬直が解けた『スターターチキン・中』だったが、反撃を繰り出す前に残るエッジの斬り上げによって光の粉となった。
俺はすぐに体制を変えると、ルルとララが相手をしている方に向かって行く。
ルルとララは交互に攻撃を与えては逃げ、与えては逃げを繰り返す『ヒット&アウェイ』戦法で『スターターチキン・中』のHPを削っていた。
実際に敵モブのHPバーは見ることはできなのでどのくらい残っているかはわからないがかなり削れているように見える。
俺は走りこみながら、二人のタイミングに合わせて叫んだ。
「ルル!スイッチ!!・・リープスラッシュ!!」
「は、はい!」
攻撃を与えようとしていたルルは俺の声に応え、攻撃を与えながら走り抜けて俺の前を開けた。
「コケェェェーーーーーーー!!」
やはり、ルルとララの二人でかなりのダメージを与えていたようで、『スターターチキン・中』は俺のアーツ一発で光の粉と散った。
「お疲れ、二人とも結構頑張ってたじゃないか。」
「あ、ありがとうなのです。」
「は、はい!」
嬉しそうな二人の返事を俺は少し微笑ましく思う。
と、部屋の真ん中に光が集まり宝箱が出現した。
俺は識別でトラップの有無を確認してふたを開ける。
「よかった、二人はこれをボス戦に備えて温存な。」
俺は中に入っていた9本の回復薬を二人に渡す。
「いえ、先輩も取ってください。3等分しましょう。」
「そうなのです。」
「いや、二人の方が回復薬が心もとないだろ?、俺は充分持ってるから大丈夫だ。」
「ですが・・・・」
「じゃあ、俺がピンチになったら二人のどっちかが俺に回復薬を投げて回復させてくれ。」
「うーん、それなら・・・」
「いいかもです・・・」
二人は渋々ながら了承し、二人で回復薬を分ける。
「うし、ここで回復薬が出たってことはもうすぐでこの迷宮のボス部屋に到着するってことだ。残りも気を引き締めて行くぞ。」
「「はい(なのです)!」」
二人が元気よく頷くのを確認して俺は大部屋の外に繰り出した。
このお話を読んでいただき、ありがとうございます。
先週は私のミスで投稿をしておらず申し訳ございません。
予定はずれましたが、来週に7話を投稿します。
忘れないように宣言しておきます。
これからも、この拙作をよろしくお願いいたします。
m(_ _)m