2話
2話、中央都市《アムンゼン・スコット》
『うっし、じゃあ次は中で会おう!』
『うん』
「おう」
集団通話を終えて俺はスマホで時間を確認する。
五日前のあの日、結局朝までおじさんと話し続け、無事三人で《LAWO》を手に入れることができた。
それからの五日間は今までの人生の中で最も長かった五日間じゃないかと思う。
三人で集まってはゲーム内の説明書を読みながら色々な話をした。
だが、その長かった日々も今日までだ。
本日7月25日12時ちょうどから《LAWO》正式サービスが開始する。
今は11時55分を少し過ぎたころだ。
昼ご飯は母さんに頼んで少し早めに食べたから今からログインに備える予定だ。
俺はベットに横になり、すでに《LAWO》をインストールしてあるヘッドギアを被った。
俺の『VRダイバー』は最新型ではあるがデザインは今どきは珍しく一昔前流行ったフルフェイスマスクタイプだ。
そんな事を考えているうちに時間は59分に突入する。
俺は眼前の硬化プラスチック画面に映る時計を見つめ、その数字が移り変わるのと同時にギアの起動ボタンを押した。
〈 Welcome to VR World 〉
そんなアナウンスと共に俺の意識は暗転した。
現在のMMOは昔と違ってキャラクターメイクの要素がかなり少ない。
それは一昔前、まだVRシステムが導入されてすぐくらいの時にゲーム内でネカマによる詐欺など正体がわからないことをいいことに犯罪に用いられるケースが多発した。
その為、数十年前に発行された『パーソナルナンバー』システムを使って実際の自分の姿を一年ごとに登録し、それを使ってしかVRシステムの利用ができないようになった。
そして、ゲームでは耳や目などを自分の実際の姿をもとにいじることはできるが、一から自作したアバターというものはVRMMOから完全に姿を消した。
閑話休題
〈今からキャラクタークリエイトを行います。まず、名前を入力してください。〉
そんなアナウンスと共に目の前にキーボードが現れた。
俺はいつも使っているというか本名を入力した。
『キャラクターネーム:ヒカリ
使用可能です。
名前は以後変更できませんがこの名前でよろしいですか?
YES/NO 』
俺は迷うことなくYESをタッチする。
〈では、髪型と色、そして目の色を選択して下い。〉
俺は表示されたモデルマネキン(首から上のみ)のパラメータを数値の一番下にあるランダムにチェックを入れ、髪は深い藍色、目は空色に近い青色にした。
『こちらで間違いありませんか?
YES/NO 』
モデルマネキンに俺が設定した通りの内容が反映されていることを確認し(髪型はデフォルトの爽やかヘアのままで、横にランダムという文字が浮かんでいる)、YESのボタンをおした。
ちなみにこのランダムにチェックを入れると髪型は実際にキャラが完成するまで分からず、気に食わないときはゲーム内の理髪店でゲーム内通貨を払って変更しなければならない。
YESボタンを押した後、俺の視界は再びブラックアウトし、次に見えてきたのは机と鉛筆、そして何かグラフが書かれた紙だった。
紙をよく見てみるとそれは懐かしい百マス計算の用紙だった。
〈今からステータスクリエイトに移行します。これから約一時間ほど時間が掛かりますがご了承下さい。では、まず、目の前の百マス計算のタイムを測定します。測定は『加法』と『減法』の二種類を一回ずつ行います。計測は用紙に数字が現れてから開始されますのでご注意ください。〉
アナウンスが終わり、俺が用紙に視線を落とすと、
『百マス計算の説明が必要ですか?
YES/NO 』
という文字が現れていたので、念のためYESをタップした。
だが、やはり小学校の頃やった通り上の数字と横の数字を足したり引いたりしながら百個あるマスを埋めるという既知のやり方だったので準備完了ボタンをタップした。
それから約一時間、百マス計算を始め、小学生レベルの漢字テスト100問を30分でどれだけ埋められるか(俺はすべて埋めた。)や、性格診断テスト(ex:~がありました、貴方は~しますか?YES/NO)、また体力試験として、50メートル走、シャトルラン、反復横跳び、ハンドボール投げ、重量挙げなどの高校の体力テストを思い浮かべる内容をこなした。
そして、驚いたことに各テストでは本当に息が切れたり、疲れたりといった現象が実際に起きた。
しかし、現実の自分よりも少し成績がよく感じられたことから自分が無意識下に意識している自分の限界を測っていたのではないかと俺は予想した。
まあ、そんなこんなで今俺は真っ白い部屋の中でチュートリアルを受けていた。
〈では、最初に視界上のアイコンについて説明します。まず、右上に表示されているのが現在時間です。ゲーム内時間は現実時間とリンクしています。ゲームは体の事を考え適切な時間でプレイしましょう。〉
そんなアナウンスと共に右上の13:04の文字が赤く点滅した。
〈次に、こちらに簡易ステータスが表示されます。上から『キャラクターネームとレベル』、『ヒットポイント』、『マジックポイント』、『空腹ゲージ』となっており、状態異常の時は名前の横にアイコンが表示されます。状態異常のアイコンが点滅しだすと10秒後にそのアイコンは消滅し、状態異常が回復します。ただ、『麻痺』、『眠り』、『石化』の状態異常に関しては点滅はしませんのでご注意ください。〉
次は時間の下の部分が四角く赤渕で切り取られて点滅した。
〈次は、メニューウインドウの開き方です。メニューウインドウは表示したい場所を人差し指で二回タップしていただくか、ボイスコマンドで『メニュー表示』と唱えていただくと表示されます。また、ボイスコマンドに関してはメニューの一番下にある機能から手動でON/OFF切り替えが可能ですので自分の好みにカスタマイズしてください。では、実際にメニューウインドウを開いてみましょう。〉
俺はアナウンスに促されるままにメニューウインドウを開く。
ウインドウには上から順に『ステータス』、『アイテム』、『装備』、『マップ』、『クエスト』、『パーティー』、『フレンド』、『機能』の文字が並んでいた。
〈はい、メニューウインドウの起動を確認しました。ウインドウに表示されている順番は『機能』から自由に設定いただけますのでご自由にカスタマイズしてください。では、最後に外に移動して自由に動いて見てください。また、動作確認が終わりゲームを開始したい場合はメニューウインドウを開いてください。では、あなたの旅に多くの幸があらんことを。〉
そんなアナウンスと共に俺は白い光に包まれた。
そして目を開けた時思わず感嘆の声をあげた。
「す、すげー」
俺はあたりを見回す。
周りは本物の森の中の様でゲームの中とは信じられない。
俺はきょろきょろとあたりを見回している時に視界の右端に見慣れない物を発見した。
それはさっきまでなかったはずの名前とレベル、そして『HP』『MP』だった。
「おお、ってことはすでにステータスは反映されてるのかな?、おぉ!!?」
疑問に思った俺がその場で飛び跳ねてみるといつもよりかなり高く跳べた。
「うっし、じゃあ、まだ時間もあることだし色々やってみるか。」
テツたちとの約束は13:30なので気兼ねなく走ったり跳んだりと色々な事を試した。
「ふう、やっぱり現実より運動神経がよくなってるな。まあ、当たり前か。っと、そろそろ行くか。」
俺は色々試して満足したのでメニューウインドウを開いた。
『ゲームの世界に移動します。
YES/NO 』
俺は迷うことなくYESを押した。
すると、再び俺の視界は白い光に包まれるのだった。
次に俺の視界に飛び込んできたのは活気のある街並みだった。
視界の左上には『中央都市《アムンゼン・スコット》』とあり、それがこの街の名前であった。
俺はあたりを見回す。
パッパーン
すると、急にファンファーレと共に目の前にウインドウが現れた。
『『強制クエスト:チュートリアル』がクリアーされました。報酬、5000G』
そのウインドウは俺が一度タップすると消滅した。
さっきのチュートリアルはクエスト扱いだったらしい。
とりあえず、俺は高台になっている転移魔法陣から降り、北西側に設置してあるベンチに向かった。
するとそこにはすでに二人の幼馴染の姿があった。
「すまん、遅くなった。」
「おう、お前のことだ、チュートリアルの最後のステージで色々試してたんだろ?」
「ふっふふん、お見通しなんだよ!」
謝りながら近づく俺を二人は笑ながら迎えた。
「悪い悪い、っと、じゃあ、約束通りステータスチェックしますか。」
「「おう(うん)」」
俺たち三人はリアルでした約束通り三人で同時にステータスを表示した。
Name:ヒカリ
Lv1
種族:人間族
HP:15
MP:15
STR:7
VIT:7
INT:10
DEX:8
AGI:8
LUK:9
Name:テツ
Lv1
種族:狼人族
HP:23
MP:7
STR:13
VIT:13
INT:1
DEX:4
AGI:9
LUK:3
Name:ハル
LV1
種族:妖精族
HP:10
MP:20
STR:5
VIT:3
INT:14
DEX:9
AGI:9
LUK:10
以上が三人のステータスだった。
また容姿は俺が薄めの青い瞳、肩までの長めの藍色の髪。
テツが赤に近いオレンジ色の瞳に紅色のツンツンとした髪型でその横からはこれまた紅色の狼耳が二つ生えている。
ハルは黄色い瞳に金色のショートカットの髪、そして薄紫色の二対四枚の羽根が背中から生えており、耳も少しとがっていた。
「あっはっは!やっぱりテツは脳筋だ~!INTがたったの1だなんて、漢字一個もかけなったの~?」
ハルはテツのステータスを見ながら大爆笑している。
「うっせ、十個くらいは書いた!はあ、たく・・・」
「おいおい、ハル、それくらいでやめとかないと周りのテツを見る目がかわいそうな事になってるっぞ。」
「うんうん、INTが1の太陽級バカの上に二人の美少女に挟まれてるんだかえね~」
ハルは某不思議な国のアニメに出てくる紫色の猫のような意地悪な笑みを浮かべる。
そう、ハルはその猫をほうふつさせる茶目っ気たっぷりの目に小ぶりの鼻と口、と見た目は完璧元気系美少女である。
そしてもう一人は・・・・・・・・・・・・・・・・・俺だ・・・・・。
俺は容姿が母親に強く似てしまったため髪を伸ばしてしまうとよく女と間違えられてしまう。
「くそっ!、ランダムなんかにするんじゃなかった。それより、2時になる前にさっさと武器とか買って準備整えようぜ。」
俺は自分に飛び火した火の粉が燃え盛る前に強引に払い落とす。
絶対余裕ができたら髪型変えてやる!!
「あー、そうだな。さっさとしないとセレモニーに遅れちまうな。」
テツもここぞとばかりに話題を逸らした。
実は2時から《LAWO》のサービス開始記念セレモニーがここ、転移魔法陣広場にで行われる。
俺たちはそれに参加することにしていたのだ。
俺とテツはハルの返事を聞かないまま歩きはじめる。
その後ろでハルが『もう、仕方ないなぁ~』的なリアクションを取っていたがむかつくので無視だ。
俺たちはそのまま歩き、広場端の何かの肉の串焼きの屋台の前に来た。
このゲームでは空腹システムというのがあり、MPバーの下にある空腹ゲージが減少するとペナルティーや最悪死亡判定を受けてしまうため、こういう風にレストランや屋台が存在する。
ちなみに、空腹ゲージが減少すると実際に空腹を感じる。
「おっちゃん、串三本。」
「おう、まいどあり!、150Gだ。」
「ありがとう。」
俺がおじさんから串を受け取ると屋台の前にあるパネルにタッチした。
ピロリン♪
『150G消費しました』
タッチするとウインドウが開いて、すぐに消えた。
この世界ではお金を払うときには今のようにレジ部分にあるパネルをタッチすることで支払いが可能になり、支払いが終わった時点で品物の所有権が買ったプレーヤーに移るのだ。
俺は受け取った串を二人に渡す。
「サンキュー」
「いただきまーす。」
二人は串を受け取るとすぐにかぶりつく。
俺も二人にならい串にかぶりつきながらおっちゃんに尋ねた。
「おっちゃん、これってなんの肉?」
「ん?これか?これは西の方のフィールドにいる『弱虫鶏』ってモンスターの肉だぞ。」
っと、違った。
「そうか、っと、この街の武器屋ってどこにあるの?」
「ん?普通の武器屋なら北東区のそこの角を曲がって二番目に店だぞ。」
俺はおっちゃんの言葉に引っかかりを覚えて再び尋ねる。
「ふ~ん、普通のか・・・じゃあ、普通じゃないのは?」
「う~ん、俺は知らねえけど、なんだか北西区の路地裏にあるって話は聞いたことがあるぞ。」
「そうか、おっちゃんありがとう。」
「おう、気にすんな、」
俺たちはおっちゃんにお礼を言い、また歩きはじめる。
ちなみに串は俺のおごりだ。
こういうことは三人の内で暗黙の了解にあり、誰も代金を払うなんて言い出すことは無い。
俺たちはそのまま雑談をしながら北西区に向かった。
この街は綺麗な円形をしており、東西南北の四か所に野外フィールドにつながる門がある。
そして、街の中は、北西区、南西区、北東区、南東区の四か所に区切られており、それぞれ似たような施設が固まっているのだ。
閑話休題
俺たちは北西区に足を踏み入れた。
入ってすぐに右手に見えた道に入る、と、すぐにいかにもそうな細い路地を発見した。
俺たちはそこに突入し、さらにまた細い道を曲がった。
するとそこには右目に傷を負った男が大きなシートの上にいろいろな装備品を並べて座っていた。
「あの、武器を見てもいいですか?」
「・・・好きにしな・・・」
思わず敬語になって話しかけると、男からはそっけない返答が返って来た。
俺はシートの上の物を物色する。
すると、一つの武器が目に飛び込んできた。
「あの、これのステータス見せてもらってもいいですか?」
「・・・タップしな・・・」
「ありがとうございます。」
男、店主の投げやりな了承を聞き、俺は気になっていた武器の表面をタップする。
Name:刀
グレード:N
種類:刀
耐久値:100/100
STR+8
DEX+6
《備考》
白銅で打たれた刀、
価格:800G
表示されたステータスはなかなかなのに、かなりお買い得な値段だった。
「うし、これください。」
「・・・タッチしな・・・」
俺は得物をこれにすることに決め店主に言うと、店主はそっけなく店の端にある支払い用タッチパネルを顎で指した。
ピロリン♪
『800G消費しました。』
俺がパネルをタッチして確認ウインドウが消えると、店主が俺に刀を渡してきた。
「・・・いい目をしてやがる・・・・」
「あ、ありがとうございます。」
俺はお礼を言いながら刀を受け取ると、早速メニューで操作をして刀を装備した。
「よっし、俺はこの『バスターブレード』を買う。」
「ん~、私はこの『杖』かな?」
「・・・タッチしな・・・」
俺が刀を装備している横でまだ商品を物色していたテツとハルが自分の得物を決めた。
その後もその片目に傷のある店主の店で装備品をそろえた。
________________________
Name:ヒカリ
上半身:ただのシャツ VIT+1
手:指ぬきグローブ VIT+3
下半身:ただのズボン VIT+1
インナー:ただの下着
頭:なし
胴:革の胸当て VIT+5
腕:なし
腰:なし
足:革のブーツ VIT+2 AGI+3
アクセサリー:なし
________________________
ただのシリーズは初期装備だったので実際に買ったのは『指ぬきグローブ』と『革の胸当て』、『革のブーツ』の三つで1600Gだった。
なので、現在の所持金は2450Gだ。
薬などを買うことを考えると少し心もとない額ではある。
「じゃあ、行くか。ありがとうございました。」
「待ちな・・・」
買い物を終えた俺たちは次は薬屋に向かおうとすると、店主の男に呼び止められた。
「・・・持ってきな・・・」
「!、ありがとうございます。」
「「ありがとうございます。」」
店主は俺に三つのポーチを渡すと、俺たちのお礼に手を振ってこたえた。
おまけポーチ
《備考》
隠れ装備屋の店主が好意でくれたポーチ、見た目より少しだけ多くの物が入る。
俺がポーチをテツとハルに渡して、タップして性能を見ていると、
『前持ち主が所有権を破棄しました。したがって所有権が貴方に変更されました。』
という、アナウンスウインドウが表示された。
NPCとプレイヤーの間ではトレード機能を使うことができないための措置と思われる。
「お得だったね~、てか、隠れ装備屋なのにすぐにフラグ立ったし、見つかったね。」
「いや、だって事前にパッケージについてたこの街の地図に店の場所とか乗ってたから誰もNPCに尋ねたりしないって考えだろ。まあ、でもこういうのはRPGのだいご味だしな。」
「はっ、違いねーな。まあ、最初の買い物とかはヒカリに任せてたらいいからな。」
テツの言葉通り大体こういった初期の隠しショップを発見するのは俺の役割だが、今回は予想以上の難易度の低さに驚きだ。
「ふっふっふ~ん、ヒカリのおかげで3000Gも余ったままいい装備が買えたよ~」
「俺も1300Gは余ってるからな。ヒカリ様様だよ」
二人は自分の新しい装備を眺めながら言う。
ちなみに二人の装備がこれだ。
________________________
Name:ハル
武器:堅杖
木でできた堅い杖
STR+5、INT+7
上半身:ただのシャツ VIT+1
手:なし
下半身:ただのズボン VIT+1
インナー:ただの下着
頭:なし
胴:ローブ(白) VIT+2、INT+4
腕:なし
腰:なし
足:ただのサンダル VIT+1、AGI+1
アクセサリー:魔法のイヤリング INT+8
________________________
『堅杖』950G、『ローブ』900G、『魔法のイヤリング』150Gの合計2000G
________________________
Name:テツ
武器:バスターブレード
銅でできた大剣
STR+8
上半身:ただのシャツ VIT+1
手:指ぬきグローブ VIT+3
下半身:ただのズボン VIT+1
インナー:ただの下着
頭:なし
胴:銅の鎧|(上) VIT+7
腕:銅の手甲 VIT+3
腰:銅の鎧|(下) VIT+7
足:革のブーツ VIT+2、AGI+3
アクセサリー:なし
________________________
『バスターブレード』900G、『指ぬきグローブ』300G、『銅鎧|(上下)』1500G、『銅の手甲』500G、『革のブーツ』500Gの合計3700Gである。
テツが計画なしに買い過ぎだとは思うがまあセレモニーの後一緒に狩りをする予定なので大丈夫だろう。
まあ、そんなことを話しながら南東区にある薬屋に到着する。
こっちはやはり地図に載っていたこともありまあまあの人数が並んでいた。
俺たちは最後尾に着く。
俺たちが雑談をしながら列で順番待ちをしていると何かに気付いたプレーヤー達が少しざわめきだしたので少し耳を傾けてみる。
「おい、一番後ろのあいつらって」
「ああ、間違いないと思うぞ。俺、別のゲームですれ違ったことがあるもん。」
「じゃあ、やっぱりあいつらが『TS』・・・」
「へ?『TS』ってなに?なに?すごいの?」
「ん?『TS』だと?『トランスセクsyグハッ!」
「その、『TS』じゃねえよ!ほら髪の色とかよく見ろ。」
「ん?『赤』『青』『黄色』・・・はっ!『信号機』」
「そうだ、あいつらはいろんなゲームの中で毎回のようにトップランカーに入り込む。しかも某MMORPGの最難関グランドクエストをたった三人でクリアーしたって伝説があるんだ。そして、その時のプレーヤー達が彼らの髪や装備の色から連想して『 Traffic Signal 』って名付けたんだ。」
「まじか・・・てか詳しいな、おい!」
「そりゃーな、あの三人はかなりファンがいるんだぞ!まずあの両手に花のバーサーカ重剣士『テツ』、その色が表す通り奴の前に立つのは超危険。そして、ショートカットの元気っ娘、お茶目な釣り目に誘惑の黄色『ハル』、そして、最後が一番人気のみんなに安心をもたらす清楚で可憐な青、しかしまさかの俺っ娘美少女でこのネカマができないVRゲームで男のロールプレイングをやっている『ヒカリ』だ。まあキャラクターネームはさっき言ってたゲームの中の話だから違う名前かもな。」
「ふーん、っと、俺の番だ!」
そこで話は途切れる。
ひとつ言わせてもらおう。
俺は正真正銘男だーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!
正直不満だがそのことで以前のゲーム内いざこざになり結局皆の中で俺は男をロールプレイしていることになったのは今でも心の傷だ・・・
とりあえず横で声を殺して笑ってる二人の幼馴染のすねにけりを入れて列を進むのだった。
薬屋で無事買い物を終え、今13時56分、転移魔法陣広場にいる。
結局薬は『初心者回復薬|(50G)』を十本、『解毒薬Lv1|(100G)』を五本、『MP回復薬|(200G)』を五本の計二十本購入した。
残り残金は450G、結構ギリギリだ。
ただここでとんでもないことが起こった。
なんと初スキルを手に入れてしまったのだ。
【鑑定Lv0】
対象のモンスターやアイテムなどのステータスを表示することができる。
表示内容はレベルが上がることに詳しくなる。
レベルが1上がることにINTに+2の補正がかかる。
『INT:+SLv×2』
テツやハルと話した結果、俺がログインしてから買ったものや商品の素材やステータスを見せてもらっていたのが原因ではないか、というのが俺たち三人共通の意見だった。
ちなみに、スキルは最初の三つまではかなり得やすくなっているのでそれも関係したのだと思われる。
だが、まだ他にも原因はありそうだと三人でワイワイ話しながらセレモニーの開始を待つのだった。
それから数分、ついにセレモニーが始まった。
ヒューー・・・バァァン
パン、パン
時刻が14時ちょうどになるとどこからともなく花火が上がる。
花火のエフェクトが消えると、転移魔法陣広場の上に大きさスクリーンが映った。
『全プレーヤー諸君、本日はこの《 Life of Another World Online 》の世界へようこそ。改めて、私は斎賀涼、このゲームの開発者だ。まずはこのゲームの作成者としてこのゲームをプレーしてくれたことに感謝する。ありがとう。私はいちクリエーターとして諸君の旅路が楽しく素晴らしいものになることを祈っている。そして、ここに宣言する。私たちネクスト社『VRシステム』研究室は来月の末までに、『VR世界』における『脳加速システム』をこのゲームに取り入れ、ゲーム内のイベントなどで使用できるようにする。現在、我々のチームはこの『脳加速システム』の実用の最終段階に入っている。ゲーマー諸君には大いに期待して待っていてもらいたい。また近いうちに進捗状況は報告させてもらう。』
そこで斎賀は一度言葉を切った。
その場のプレーヤーは斎賀の言葉を聞き逃すまいとしんと静まり返っている。
『では次は開発者としてではなく、『ゲームマスター』として話そう。皆お待ちかねのイベントの話だ。』
斎賀のその言葉ににわかに場がざわつく。
『これから1週間、《LAWO》サービス開始記念イベントとしてイベントを行う。場所は全フィールド。まず、イベント限定モンスター『スターターチキン』というモンスターが圏外フィールド出現する。この『スターターチキン』は《LAWO》マスコットモンスター『チキンチキン』の色ちがいで色が金色をしている。内容はこのイベントモンスターが一定確率でドロップするイベントアイテム『始まりの鈴』を集める収集イベントだ。1週間後、所持量が多かった上位100名までに入賞ボーナスが出る。また、入賞できなかった者も収集した『始まりの鈴』を特別なアイテムと交換できるので皆頑張って入賞を目指してくれ。また、低確率で出現する移動アイテムを使うことによってボーナスダンジョンに入ることができる。ダンジョンの詳細は入ってからのお楽しみだ。』
「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」
斎賀の言葉に会場が湧く。
皆まだ見ぬ自分の栄光の姿に心躍らせているようだ。
そういう俺ももうはやる気持ちを抑えるのでいっぱいいっぱいだ。
隣にいるテツもハルもその表情は上位入賞するき満々である。
フッと俺たち三人は笑みを交わしあった。
『おっと、最後に、これからは私の代わりに広報担当の久保田君がこういったほうこk『さ、斎賀さん聞いてないですよ・・・!!』』
『久保田、これ生放送、生放送!!』
『は!ひゃい、ごめんなさい!』
斎賀の言葉を急に慌てた若い女性の声が遮り、その後ろからまた別の若い男性の声がいさめる。
そんな様子に会場は笑いに包まれた。
『はっはっはっは、すまなかった、まあ、という事で次回からは久保田君がこういった場所に立ってくれることになる。君達も私のようなむさいのではなく若い女の子がいいだろ?』
斎賀はいたずらっぽい笑みを浮かべると、また表情を引き締めて別れの言葉を紡ぐ。
『では、長々と時間を取ってしまいすまなかった。これからの君たちの旅路に幸多からん事を。では《 Life of Another World Online 》スタートだ! 』
そんな言葉と共に映像は終了し、スクリーンは消滅した。
「「「「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」」」」」」
その場にはさっきの数倍の歓声が響き渡のだった。
どうも、このお話を読んでいただきありがとうございます。
どんなことでもいいので感想をお待ちしております。