カナノロココ
カナノロココ
私の専らの仕事は離れ小島の清掃だ。
そこはよからぬ噂が流れるいわくつきの島。
この桜京市で一番の危険スポット。
なぜかと言えば、それは私が仕事をしに行くのだから、わかるだろう。
心霊現象や怪奇現象を起こす「漂うもの」の巣窟だからだ。
なぜかあそこには「漂うもの」が集中しやすいらしい。
島そのものが収集型の「漂うもの」という仮定を打ち出した死神もいた。
でも、今の私にはそれは関係なくて。
今のコード05の死神には、離れ小島という存在は生命線そのものだ。
「本来ハ人間ノ心臓ヲ喰ウ方ガ効率ガ良インダ」
化物はそう言った。
私はそれを聞いて鼻で笑う。
そんな一気に徳を無くすような真似ができるか。
私の命は前世で積み上げた徳が尽きるまでなのだ。
「漂うもの」であっても、その魂を喰らう事は禁忌に値する。
魂を喰らえば、徳をも喰らう。
そして全ての徳を喰い潰した時、私の命は終わる。
「それは……お前が……喰いたいだけだろう……」
はっきりとした意識のない漂うものは見境なく生物を狙う。
それはきっと新鮮な魂が欲しいから。
この化けもの曰く、新鮮な魂は非常に美味らしい。
特に、徳を積んだ人間の魂はこの世界の何よりも美味いとの事だ。
「お前には……同胞の魂が……丁度いい……」
化物は私に向かって牙を見せつけてきた。
私は一切動じずに欠伸をする。
どうせこんな、私の頭の中で何かあったって、痛くも痒くもない。
というか、お前の餌を用意してやっているだけありがたいと思え。
「俺ハ、テメェヲ喰イタインダケドナ」
「お断り……します……」
私は化物の腕を殴った。
どうせ現実じゃできないんだから、此処ぐらいではいいじゃないか。