キサノリカヒ
キサノリカヒ
私はほんの少しだけ目を開いた。
そして私が死神の3人に囲まれているのを理解する。
どうやらむこうは私が起きている事に気が付いていないようだ。
「心臓と左脳は無事」
「この人の心臓の位置がやや左に寄っていた事だけが救いだった」
「文字通り右側は化物って事か」
左は無事で、右は化物?
ダメだ、体勢が悪くて見えない。
とりあえずこの3人の話を聞こう。
「こいつ、何番目だ?」
「16番目」
女の死神が即答した。
そして次々と私が死神になったきっかけや異能力の説明をしていく。
男の死神は腕を組んで考えた。
「その異能力、変異させる事は?」
「可能だけど、可哀そうだな」
女の死神は私を見下ろす。
そして自分の魂がいかに徳を積んできた善良な魂だったかを語る。
締めくくりはこの言葉。
「君は数々の魂を喰って、その半身を蝕んだ「漂うもの」の侵蝕を抑えなければならない」
「死ぬまで業を背負い続け、積み上げた徳が無くなるまでの命だ」
ここで初めて気がついた。
右半身の異常な熱さと、その異業の姿に。
手が、足が、胸が、背中が、顔が。
全部が醜い化物と変わり果てていた。
「私がもっと早くに駆け付けていれば腕だけで済んだのに……ごめん………」
私は女の死神に抱きしめられた。
そのまま大きな声で、雨にも負けずに泣き続けた。