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カナノロココ
カナノロココ
私は暗闇の中で立っていた。
服なんて気の利いたものはなく、あるのは私の身体がひとつだけ。
恥ずかしくなって胸を手で隠した。
「ソンナ事スル女ジャネェダロ、テメェハ」
前方から3m近くはある巨大な犬が近寄ってきた。
身体が委縮する。
でも、なぜだか右半身は特に何も感じていないようにも感じた。
「化物……!」
「アア、俺ハ化物ダ」
「ダガ、ソノ定義ナラオ前モ化物ナンダヨ」
片言でも人の言葉を話す犬のような化物。
私は徐々に懐かしさを感じだした。
その時、ふと私の前に鏡が現れる。
映ったのは化物なんかではない、私自身だ。
全裸の私が鏡に映り、それを化物が静かに見つめていた。
「オ前ハ大好キダッタ男ヲ殺シタ」
鏡に彼の遺影と棺が映る。
棺に縋って抜け殻のようになっている彼の両親を、死神の私は冷たく見ていた。
そうだ、私は死神だ。
彼のような無駄な殺人をさせないように、私は死神になった。
人間に見えてしまう程に強力な「漂うもの」を私は殺す為に死んだ。
死神となって、最強の死神を目指した。
その途中で私はこの犬に喰われた。
「化物……いや、犬」
私は鏡の後ろで座っている犬に声を掛けた。
犬は耳を立ててこちらに向ける。
「飼い主には、噛みつくな」
「……承知シタ」
「飼イ主サマ」
鏡に映る私は、やっぱり右半身が醜かった。




