トコノエマンネウス
トコノエマンネウス
とある雨の日だった。
私は、ある化物に喰われたのだ。
大きな口に入れられ、鋭い牙が突き刺さり、光は閉ざされた。
あれ、私はどうしてこんな化物に喰われているんだっけ?
そう思ったのだが、そこまでしか考えられなかった。
その日、私は仕事をしに来たのだ。
犬の唸り声のようなものが毎日02時22分に聞こえると言う怪奇現象を追っていた。
そしてその時間になると、やはり犬の唸り声が聞こえる。
このまま姿でも現してくれないだろうか。
私は武器を構えてそう思った。
その時だ、その言葉は本当になった。
私が咄嗟に振りかえると、そこには3mはあるだろう巨大な犬がいた。
こんな話は聞いていない。
私はせいぜい、大型犬のサイズとしか聞いていない。
こんなの、無茶苦茶じゃない!
そう思ったが、ここで引き返すわけにはいかなかった。
私は意を決して化物との死闘を繰り広げた。
その結果が何になったというのだ。
結局、力尽きた私は化物に喰われてしまった。
そもそも、死神になった事が運の尽きだ。
死んだっていい。
私はゆっくりと目を瞑った。
その時だ。
【何か】によって身体が侵食される感覚を覚えた。
血管を広げて押し進む【何か】が気持ち悪かった事は覚えている。
身体がビリビリと電気が走ったかのように痛んだ。
これは何なのだ?
私は屈辱を味わう為に、死んだわけではない。
最強の死神を目指したわけじゃない!
そんな思考を巡らせるのも限界に達していた。
こんな志のせいで「漂うもの」の反感を買ったのだろうか。
でも、高みを目指して何が悪い。
ところで、妙に頭が冴えるな。
気のせいかほんの少しだけ眩しいような気がする。
もしかして、これが天国というやつなのだろうか。
……なわけないか。