Chapter1&2
はじめまして、ひよりです。
初投稿となります。よろしくお願いします。
Chapter1 ロックオン
それは、春の只中のことであった。私は、高校の前に立っていた。別段おかしいことではない。ただ、自分の通っている学校の目の前にいるだけなのだ。だけど、周りの反応は異様だ。理由は明白。
ーー私が登校した。それが原因。
私の姿は、春だというのにセーターを羽織り、女らしからぬ無造作な髪型だ。そして、マスクをしている。花粉の多い春だから、不思議なことではない。しかし、私にとってマスクは、別の意味を表す。
顔面のほとんどをマスクで覆った少女が校門に現れる時。それは、不吉なーーいや、不吉よりももっと恐ろしい、頭が痛くなるような事態が起こる前兆なのだ。マスクの少女が目指すその教室で、起こってしまうのだ。
ーー恐ろしい、巨悪ないじめが。
誰が悪いというわけではない。そもそも、私が手を出しているわけでもない。しかし、その教室の者は、被害者にも加害者にもなり得るのだ。そして、傍観者という最悪な地位を与えられる者が多く存在することになる。
一歩、少女が踏み出した。周りの者は慄く。私は、ずんずんと下駄箱へ向かう。
ーーどこに行けばいいの?今度はどこを不幸にするの?
自らの意志ではなく、私の意識は下駄箱で途切れた。そこからの記憶はなく、目覚めた私の目には、2年3組という文字盤が虚ろに映った。
『ターゲットは、2年3組』
この瞬間、カチリと歯車の回り始める音がした。
Chapter2 主役はだーれ?
「おい、まさか…」
私が入るべき教室の中は、とてつもなく重い困惑が渦巻いていた。
「片桐玲奈が、きちゃったよ…」
私の名前を呼んだのは、生徒Aだろうか。生徒Bだろあか。それとも、固有名詞の付く者なのだろうか。
ーー玲奈に命ずる。中岡光を主役に任命せよ。
私の頭に駆け巡った思考。中岡光。被害者決定。私は静かに、教室に入った。両隣の部屋から漏れる安堵の声。目の前の部屋に広がる、不安な空気。全てが私を刺激した。中岡光の元へ行く。
「み、みっちゃん…あいつが、こっちに…」
主役の隣の生徒Aは恐怖の言葉を口にした。主役は、目に涙を浮かべている。主役の姿は、派手だ。容姿端麗で成績優秀、しかし髪を染めるなど素行不良の面もある。良くも悪くも、注目される人だ。勝ち組である。しかし、
ーー「あなたが、主役よ」
この瞬間、負け組の最底辺へ落とされた。