五話 失われた記憶と動き出す悪意
うん。ちょっと見ないだけで今までの展開忘れる私の頭どうなってるんだろうね。不思議不思議~。しかもそれが自分の小説だけって、えぇ......。
というかですね。今回長くね?
「あ゛ー、イテェ」
何が痛いって?お尻だコンチクショウ。今俺たち四人はウェルテクスに向かって馬車を走らせている所だ。流石に徒歩は無理な距離だからな。
それから目的地に着くまでにもう一度色々と聞き直した。異世界の人間がいると言う話、そして咆哮とクリスタルだな。
そんで最初に聞いたのが異世界の人についてなんだが、自由なんだなってさ...そう思うよ。本当に。
「その殆どが神様の気まぐれや神様事情で異世界の人間が転移してくるんです。この事に気づいたのがいつの頃なのかは情報が無いので分からないですが」
トラックに轢かれてしまってな...とか目覚めたらココドコ?って言うのは大体神様がやってるらしい。はははそんな馬鹿な、と言おうと思ったが今自分がここにいるのも半分は神様のせいなのでこれまたなんと。
気持ちを切り替えて次はクリスタルと咆哮だ。
「異世界の転移に気付いて直ぐに異世界から人を召喚する方法を探しました。それが国を守る宝石」
「クリスタルだな?今は例の咆哮で壊れたわけだが」
「はい。宝石が壊れたと言うのもありますが、世界と世界を繋ぐ何かに異変が起きた事も原因です。今は原因を探してるところです」
さて、かなり省略するとだ。俺達とは別の、つまり召喚されていない異世界転移の話は関係なさげだから切り捨てて良いだろう。クリスタルの修復については実際どれだけの時間が必要なのかは分からないが何とかなるだろう。
「あーそうだ白ちゃん。咆哮について超簡単に説明お願い!」
「「ん......? 白ちゃん?」」
「オホン! あの咆哮は詳しく調べている所です。ただまぁ、魔王が動いているっていうのが一番ですね。おかげで皆いつ襲われるかとビクビクしてます」
九九と一緒にソフィアと白狼を見る。ソフィアはニコニコしてて、白狼が顔赤らめてるんですけど。こいつらどんな関係なんだ。知り合いというのは知っていたが。
「私じゃなくてソフィアがたまにはやってくださいよ。そろそろ私は疲れましたし」
「仕方ないなぁ。分かったよ。んっんー!......咆哮って大きな戦い、戦争時に使う物なの。それ以外でいうと神竜都市がそうだよね。朝に咆哮が聞こえていたと思うけど、クリスタルの代わりなんだよね」
「まぁ間違ってはいないです。取り敢えず『加護の咆哮』と『戦神の咆哮』というものがあって、前者は護り、後者が攻撃です。これ覚えとけばいいですよ」
分かった分かった。お前らちょっと面倒になったな。まぁここまで言われれば大体は分かるからいいかな。と言うかなんでこんな上から目線なんだ俺?
「皆さん、準備を」
「主様!敵来ます!」
「んー…大型が3で、小型が20ぐらいですね」
「ちょっと数が多いか?いや、大丈夫か」
俺たちは全員、それぞれの武器を持って馬車から飛び出す。俺は刀と銃。九九が札、ソフィアが魔法、白狼が二刀流といったところだ。
少し馬車より前に出て待っていると、直ぐに相手が見えてきた。魔物の正体は大型が恐らく、ケンタウロスが2体でゴーレムが1だな。雑魚は以前と同じゴブリンって所だな。ゴブリンキング的な奴はいないのか?
「九九とソフィアはゴブリンを先に倒して!終わったら直ぐに援護を。白狼、一緒に行くぞ!」
「「了解!」」
「琥珀さん!数が多くてすみませんがケンタウロスをお願いします。私はゴーレムを、アレは面倒なタイプですから」
「分かった。気を付けろよ!さぁ、行け!」
合図と同時に俺と白狼が飛び出し、九九とソフィアが魔法を放つ。飛び出した俺らの直ぐ近くを通って一番に相手に直撃する。間髪入れずにもう一発当てると大きな爆発が起きた。おいおい、威力高すぎて土煙がヤバいって!
「流石魔法使い...いや違うけどさ。さてお前らの相手は俺だぜ。ケンタウロス」
片方が弓でもう片方が剣を持ってるのか。負けはしないだろうが......これは苦戦しそうだな。白狼の方も接敵したみたいだし、後は二人の援護待ちかな?とりあえず弓持ちのケンタウロスに向けて九九から貰った銃を3発程撃ってみる。追加で神力を込めた4発目も撃ってみた。
「初見でこれは避けれないぞ!」
「グゥゥ、グオオオォ!」
最初の3発は耐えたみたいだが、追加の4発目はかなり効いた様に見える。だけど最初の3発を耐えれる固さっていうのは間違いなく強い相手みたいだな。
冷静に分析してるところに、剣持ちケンタウロスが突撃してきた。回避は難なく出来たが、なんだあの威力!?
「ウオオオオオ!!」
「うわ!地面へこんでるし、剣というか鈍器かよ!」
とりあえず一発撃ってみたが、弓持ちと同じで余り効いてる様には見えない。一度銃は止めて刀で斬りにいった方がいいかもしれないな......。
〜〜〜〜〜〜
さて、本当は数の多いケンタウロスを私が引き受けるべきなのですが。ゴーレムは下級、中級、上級の3つあります。下級は体力と防御が高いですが、動きが遅いので新米の冒険者でも何人かいれば倒せます。
中級は下級と違って、魔法を使わないとかなり厳しい戦いになります。逆に言えばパーティーに魔法使いがいれば難なく倒せます。
さて、上級のゴーレムですが、こいつは四属性の攻撃をしなければ倒せません。しかもその攻撃が上位の魔法でなければいけないんですよ。面倒ですね。
「分からないですね......上級のゴーレムなんて、ギルドが冒険者を召集するレベルの敵ですよ?」
「ギギギギギ......!!」
「あぁ、ちょっと援護が欲しいですね。これは」
体から幾つもの砲台が出てきましたね......。援護がくるまで逃げ続ける訳にもいかないのですから戦いますけどね。
「精霊達よ、私に力を!『精霊結界』」
結界とは言いましたが、自動で結界が出来るタイプではないので、自分で設置しなければ発動しないんですよね。その代わり威力は高いですよ?設置する数は四つです。精霊は四大精霊の事を指していますから。
「まず1つ、炎よ!」
私の持っている2本の剣の内1つに火の力を宿し、それを地面に突き刺します。もう1つの剣には水を宿しておきます。こうすると残り2つはどうなるの?となるけど大丈夫です。他2つは作られますから。
「後は攻撃を回避しつつ剣を刺せば終わりだけど...」
「ゴググググ......!!」
「っ!さっきから攻撃が激しすぎる!」
これじゃあ結界を作れない......!砲台からビームが出てくるんですが、思ってたより数が多すぎる。ここは無理せずに応援を頼みますか。20体とはいえ、もう終わっているでしょう。
「ソフィア!援護を頼みます!」
「待ってました!水達よ、これより此処は私達の領域だよ!」
援護を頼んで直ぐに、大量の蛇のような水がゴーレムの周りを泳いでます。これはずっと待機してましたね?まぁそれより少し離れた方が良いですね、これは。
「さぁて、結界が出来るまでは持つよね?行け!『クリスタルフラッド』」
ゴーレムの真下から水が吹き出して宙に浮いた!今なら行ける。普通に走っても間に合わないけど、私は狼。これくらいなら余裕です!
「2つ......3つ目に、4つ!」
「やっちゃって、白狼!」
「任せてください。自然の裁きを...!『精霊結界』起動、大爆破!」
「......!!?!?」
結界を起動させると、結界内で4属性の小爆発が始まりゴーレムに向けてさまざまな魔法が飛んでいきます。この精霊結界は少し運要素があるんです。この世界にある魔法全てをランダムに発動し続けるので連続で最高ランクの魔方が起きたりします。
まあそれは良いんですが、久し振りに大型の魔法を使うという事と、久し振りの戦闘で大爆破!とか言いましたが私まだ結界の中から出てないんですよね。
「守って!『水風船』」
「わぷっ!?」
突然水に囲まれました。お陰で自爆せずにすみましたけど、服がビショビショですよ。ゴーレムは...うん、大丈夫。ちゃんと倒せたみたいですね。
「あ、ありがとうございます。はぁ...ふぅ...」
「ううん大丈夫だよ。ふふふ」
「んん......?」
水魔法。やっぱりソフィアでしたね、助かりました。けど何ですかその怪しい笑みは?さて残りは琥珀さんの方ですね。な!?あれは...!
〜〜〜〜〜〜
「終わりだ。一閃!」
「グオオォオォ!!」
さて、1体は倒した。こいつら銃よりも刀の方が有利みたいだな。あとは弓持ちの方なんだが...。
「危ねぇ!さっきからチクチク本当にはらたつなぁ...!」
「............」
あーそうかい、無言ですか。でもこいつ、中々近づかせてくれないんだよな。あいつと距離が離れてれば攻撃も緩やかなんだが、近づこうとすると攻撃が激しくなる。
白狼の砲をチラ見してみればソフィアが援護に入ってるみたいだな。これなら、行ける!
「一撃で終わらせるぞ!」
「矢は私が落とします、主様!」
神力を込めた弾を撃ち直ぐに突進する。弾を回避しつつ矢を放ってくるが、全部九九が落としてくれる。九九が居てくれるだけで大分安定するから助かる。
「居合い九連撃!」
「喰らえ、我が炎よ!」
「グオオオオ!!!」
居合いも九九の炎も全部入った。終わったかな......?ちょっと白狼の方は見てみるとなんだあれ?ゴーレムの周りに、火と水と土と風だよな?色んな魔法が渦巻いてる。そういえば結界とか言ってたっけ?凄いな。その時白狼が焦った表情で叫んだ。
「琥珀さん!逃げて!」
「え?......がはッ!?」
いっ...何が起きた?お腹が痛い。押さえようとしたとき何かが手に触れた。これって......。
「弓矢?まさか...」
「主様!?......ッ!咲き誇れ!守護桜 開花!』
2本目が俺に当たる直前に目の前に一本の木が、桜が生えて花は満開になり、俺目掛けて飛んできた矢を弾き飛ばした。それに腹部の痛みが引いている?矢を取ってみたが痛みがない。怪我が治ってる最中みたいだな。
今のは九九か?でも九九はこんな技持ってない。それにこの感じ、懐かしいような感じがする。まさか……。
「九九?」
『私が守るから』
この感じ、やっぱりあいつだ。
白狼とソフィアが訳がわからないと言うような顔だ。分かってるさ、ちゃんと説明する。でも、その前に。
「白狼、ソフィア、援護頼む」
「分かった、任せて琥珀!」
「援護無しでも大丈夫そうですけどね」
もう大丈夫だ。九九が、あいつがいるなら本当に大丈夫だ。銃はしまって刀だけに変える。若干まだ腹部に違和感があるがこいつとの戦闘で支障をきたすほどじゃない。
「ほぉ?この気は、まさか......」
「お前喋れたんだな。まぁいいか」
「ソフィア、行きますよ!」
「分かってるって!」
ケンタウロスも対抗してとんでもない速度で矢を放ってくるが、桜の木が矢を跳ね返してくれる。それでもこっちに向かってくる矢は後ろの二人が落としてくれる。
「九九、力使わせてもらうぞ。燃え上がれ、九尾の炎!」
刀に炎を宿し突撃する。初めて使うが使い方は分かった。これは一振りするだけで無数の炎が飛んでいく強力な物だ。その代償として体力を持ってかれるみたいだから長くは使えないが。
「この一撃を受けるがいい!『九尾の炎 鬼の型』」
「ぐぅ...!」
俺の鬼の型の元は殺音だ。これは突き刺したり斬りつけたりよりも居合いの方が多い。それに居合い斬りの方が九尾の炎も多く飛ぶみたいだしな。でもこれで倒しはしない。倒すのはあいつだ。俺の家族、俺の妹。
「ちゃんと当てろよ!篠!!」
篠、神城篠が。
『勿論!咲き乱れよ、花言葉!』
いつから持っていたのか、刀をくるりと回すと、地面から色んな種類の花が咲き乱れる。それと同時に後ろの桜の木もより、花びらが舞う。それはとても綺麗な光景でこの世の物とは思えないぐらい美しいものだった。
『これで終わり!』
「おのれ...!勇者ああああ!!!」
刀を降り下ろした時に発生した衝撃が、ケンタウロスに当たった瞬間爆発が起きた。なんだその攻撃?威力高すぎるだろ。とにかくあいつは倒せたみたいだ。しかも気になることを言って死んだけど、勇者って誰の事を指してるんだ?
「篠!」
「.........。もう帰ったみたいですよ、主様」
「戻ったのか?って、知ってるのか九九」
「意識はありましたからね。一度馬車に戻りましょう。今日は野宿ですからね」
「......あ。」
〜〜〜〜〜
あの後、まだ怪我がちゃんと直ってないかもしれないと無理矢理馬車に押し込まれて3人に手当てを受けさせられた。篠の回復だぞ?問題無いっての!
あぁ、そういえばあの桜の木。消えないまま残ってるんだよな。何か特別な気を感じるからあれを頼りにすれば篠と会えるかもしれないな......。はぁ、今俺の回りに3人の美少女が居るというのに。妹の篠の事しか頭に無いとはな。
「あ゛~俺たちウェルテクスに行く最中だったよなぁ~?なんでいきなりこんな戦いしてるんだよ」
「誰も隣の町に行く途中に魔王の手下が要るとは思いませんよ」
「はぁ!?魔王だと!?」
「まぁこれも向こうについてからにしましょう?」
「だねぇ。今はお腹が空きました!」
「主様は先に寝ていて良いですよ。私の力を使ったんですからかなり体力を消費しているはずですよ」
流石に自分の力なだけあって詳しいな。正直、確かに体を動かすたびにあちこちが痛い。それでもまだ動けるハズなんだが、急に睡魔が......何かしたな?九九。
「主様!」
「な、なんだ?」
「貴方は頑張りすぎです。それじゃあいつか壊れてしまう」
それは......。
「私を置いていったりしないでくださいね?」
「っ!.........ああ。分かってる」
お休みなさいの後に小さくありがとうと九九は言った。意識が落ちる前に一言好きだと言ってやったらどんな反応するんだろう?なんて考えながら眠りについた。こっちこそありがとう、九九。
~小番外☆電車~
「デンシャって何ですか?」
「鉄の塊だ。凄い速い」
「主様、それはいくらなんでも適当すぎじゃ?」
「悪い。そうだなぁ...。今俺達はウェルテクスという町に向かっている訳だが」
「えぇはい。そうですね」
「電車があれば1日もかからないし、もしかしたら数時間でつくかもな」
「す、凄い便利なんですね......。異世界ってなんでもアリですね」
「それはこっちの台詞でもあるぞ。スライムとかゴブリンとか、こっちはそんなの居ないからな」
「妖術とか神術とか魔法みたいな物はありますけどね。後は超能力とか?」
「九九、それを言われると、ちょっと……」
「まぁまぁ。どの世界にも不思議な物はあるってことですよね?琥珀さん」
「その通りなんじゃない?ソフィア君」