色。

作者：巡理圍

「空の色って何色？」

少女の質問に少年は、歯切れよく答えた。

「青色だよ」

少年の声を聞くと、ベッドで目を瞑る少女は嬉しそうな声音ではしゃぐ。

無機質な色だけで飾られた部屋に笑顔が咲く。

それだけで、少年は此処へ来て良かった...そう思えた。

「青色は確か、綺麗で澄んだ色。

海は空の色と同じなんだよね？」

「そうだよ」

彼女は目が見えない。

少年は、そんな少女に色を教えている。

もう、どれくらい前から始めたか分からない少年の授業だが、思い出の数だけの月日が経ち。

それは、同時に少女の目が回復する兆しが全く見えていないことを意味する。

だが、二人はそれでも良いと思っていた。

この時間が永遠に続けば良いと。

「ねぇ、君の色は何色？」

不意に紡がれた言葉に少年は戸惑う。

彼は、その問いに満足な答えを持ち合わせてはいなかった。いや、誰も知らないのだ。

少年は答えを覚えることは出来ても、答えを導きだすことが出来なかった。

決して少年が悪いと言う理由ではない。

答えを出せない人の方が多くて当たり前だ、でも、少女は目が見えないせいか、誰もが『当たり前』と切り捨てることを追求し、問う。

「僕には...わからないよ」

申し訳なさそうに少年が言うと、少女はミルクティーを口に運ぶ。

ミルクの濃くと砂糖の甘さ、紅茶独特の優しい苦味が相まったミルクティーは、人を落ち着ける。

「君は赤色かな？」

「僕が情熱の赤？

似合わないよ」

それは間違いだ。と、告げる様な口調。

でも、二人は数式を解いているわけではない、つまり、明確な答えなどないのだ。

それは、少年でさえ否定出来ない。

否定してはいけない。

「情熱の赤というよりは、怪我した時流れる血の赤かな？痛みを知った人に絶対に流れる色で、人の痛みを知れるリーダーの赤」

「僕にはわからないよ...

君の苦しみなんて」

「そんなことないよ？

動けない私の側に居てくれる。色んな色を、外の世界を教えてくれる」

「君は色々だね」

少年が冗談混じりに言うと、小さな笑いが起きる。問う側を答える側。見えない少女と見える少年、二人の答え合わせは続く。

「それじゃあ、山の色は？」

「緑かな？」

「町の色！」

「灰色だね」

「面白くない～。もっと遊べば良いのに...」

普通の解答に少女は頬を膨らまして拗ねる。

そんなことを言われても...と、頭を掻きながら手持ち無沙汰になる少年。

そのまま時間は過ぎてしまい、少年が帰らなければならなくなった時、少女は再び口を開く。

「明日の色は？」

これは二人の中の別れの挨拶。

赤色ならば、明日も来るという意味で、青色ならば明日は来れないという意味だ。

少女も少年なりに気を使い、自分だけに縛られるこたがないように、断りやすい様に遠回しに予定を尋ねている。

「明日は黄色。それは、希望の色」

少女の質問に少年は、歯切れよく答えた。

数書いて技術を蓄えようとしてる巡理です。

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