桃太郎は格闘し次に進む
「で、鬼ヶ島までどうやって行くんだ?」
島、となっている通りどうしても海を渡る必要がある。
「あぁ、それなら…よいしょっと」
浦島がポケットからなにか取り出す。
「これを使えば、すぐですよ!」
浦島が出したものはどうやってポケットに入ってたんだと疑いたくなる、俺と同じ大きさはあるピンクのドアだった。
「お前…絶対そのうち怒られるぞ?」
「大丈夫ですよ、こんな物語、天下の青ダヌキ様は見ませんって」
今の発言で、子供の人気がめちゃくちゃ減っただろうな。
「それで、これを通過すれば良いのかしら?」
「そうですね、鬼ヶ島までひとっ飛びですよ」
「そんな急に言われても準備が出来てないわ」
よく見ると赤ずきんさんは少し震えているようだ。
「もしかして、ビビってるんですか」
浦島、本当にお前は怖いもの知らずなんだな。
「心配には及ばないわ。武者震いよ、私の『M30-B2』も血に飢えているわ」
怖い!!怖すぎるよ!!
俺たちに銃を構えながら喋るためなおさら怖い。
「それじゃ改めて、行きますか!!」
浦島を先頭にピンクのドアを抜けるとそこには、来るものを拒むように荒れ狂う海、空を突き刺すようにとがった山、そしてゆうに2mは越えているであろう赤鬼と青鬼の目の前に出た。
もう一度言おう。ゆえに2mは越えているであろう赤鬼と青鬼の『目の前』に出た。
「「ウガアァァァァ!」」
「最初からクライマックスですよ、桃太郎さん!!」
「なんでこんな位置に出るんだよ!!」
「と、とりあえず…逃げましょう」
青鬼が手に持った棍棒を降り下ろしてくる。
それをなんとか飛び込んで避けながらそのまま10mくらい距離をとる。
「いきなり攻撃してきやがったよ、話し合いとかの余地なんてく無いですね」
「そりゃ、相手は『鬼』だぞ?まず言葉が伝わるかどうか…」
そんな話をしているうちに青鬼が距離を詰めてくる。幸い、図体が大きいせいか移動速度はたいして速くない。
「なに呑気に会話してるの……よっ」
それでも追い付いた青鬼の第二撃を避けながら赤ずきんさんが言う。
「私はこっち青鬼を倒すので、
二人であっちの赤鬼を頼みましたよ」
青鬼を引き付けるように大きな動きをしながら距離をとっていく赤ずきんさん。
「それじゃ桃太郎さん、行きましょう。突進あるのみです」
といって無謀にも素手で赤鬼に立ち向かおうとする浦島。
「おいおい、待て待て、わてはどこの自殺志願者じゃこら」
「どこの方言ですか」
「知らないよ。ただ、武器も無しに鬼に挑むのはバカだろう」
すると浦島は例のごとく
「くうきほう〜」
なんて言いながら何かを取り出そうとした。
「お前はアホか!!」
ツッコんだ。
すると浦島は手を戻して
「いやいや冗談ですよ。ではこれを」と、次に渡されたのは木刀だった。
「……こんなので勝てるのか?」「日本昔話で『流血』なんて良くないですからね。真剣は使えないですよ」
えぇー……。
赤ずきんさん普通に銃撃ってるよ?
「そんなこと言ってる間にまた赤鬼さんが近づいて来ましたよ」
またノロノロと近づいてくるのか、と思いきや…
「は!?」
超ダッシュで近づいてきた。
え、そんなスピード出せんのかよ。
一瞬で間を詰められる。
巨大さゆえの圧迫感、振りかぶられた棍棒。
体が全く動かなくなった。
やられた――、そう思った瞬間、何かが俺に覆い被さった。
それは――浦島だった。
どんっ、と鈍い音がした時にはなにもかもが遅かった。こっちに顔を向けながら倒れてくる。
その顔は、なぜか微笑んでいるようにも見えた。「桃太郎さんには…勝ってもらわないと…いけないですからね」
そう言って息絶えたように目を閉じる浦島。
「…バカやろう」
お前最初に死んだらどうなるか分からないって話したじゃねぇかよ。
浦島をやられた怒りからか心臓がドクドクと早鐘を打っている。
「ウガアアアァ」
敵を倒した喜びからか、訳のわからない雄叫びを上げている。
意識を失い、俺にもたれ掛かるように倒れていた浦島を地面に下ろし、赤鬼に向かい剣を構え直す。
さっきまで熱くなっていた全身も今では冷静さを取り戻してきた。
――うん、大丈夫。今なら俺は動ける。
「悪いな、赤鬼。明確な守るべきものが出来ちまったからよ」
俺はやっぱり桃太郎なんだ。
「今は負ける気がしねぇ」
勢いよく赤鬼に向かって飛び出す。
突然の突進に驚いたのか、単調な左上側からのこん棒の降り下ろし。
その攻撃は何度も見た。
左上から勢いよく降り下ろされる棍棒の威力を、木刀の上で滑らせることによって、体の横でそのまま地面まで振り落とさせる。
本来俺に当てるはずだった棍棒を地面についた赤鬼は少し右側によろめいた。
俺はそれを逃さず、頭の上に置いていた木刀を正面に戻し赤鬼の頭、左脇腹、左足に向けて思いっきり三連打した。
完全に重心を傾けてしまった赤鬼は無惨にも倒れる。
再び立ち上がろうとする脳天を一刀両断の気持ちでぶっ叩いてやった。
ざっとこんな感じ。
わずか一分足らずの攻防。
のびている赤鬼を尻目にそういえば…と、赤ずきんさんを探すと後ろの方で倒れた青鬼とへたりこんでいる赤ずきんさんを見つけた。生きていてくれたことにひと安心。
肩で息をしながら服なんか破れていたりして、ギリギリだったみたいだけど。
「これで…どうなるのかしらね」
近づいてきた赤ずきんさんが言う。
浦島は目を覚まさない。
「奪われた金品でも見つけて帰らなくちゃいけないのかしら?」
辺りを見回す。
視界の端にそれらしきものを見つけたが、いかんせん体が動いてくれない。
「あー…、なんだか疲れたわね」
それ以来赤ずきんさんの声が聞こえなくなったのは、赤ずきんさんが意識を失ったからか、俺が意識を失ったからか…、それとも両方なのかはもうわからない。俺たちはちゃんと目的を達成できたのだろうか。
どこかに落ちていく感覚だけは感じた。
昔々あるところに子供の桃太郎がいました。
ある日、桃太郎は鬼退治には行かず人を探しました。探して探して、探し続けていました。
すると――、
「桃太郎さん、桃太郎さん」
桃太郎は砂浜で誰かに声をかけられました。
「お腰につけたきびだんご一つ私にくださいな」
そんなことを、亀を助けながらある男が言いました。
「それじゃあさ、友達になってよ」
そう言って二人で笑いあいましたとさ。
おしまい
完結させました!!
なんとかー……って感じで(笑)
反省点をあげると
・赤ずきん様(?)が完全に空気でした(笑)
・戦闘シーン上手くならなきゃなぁ!!
って感じですね
次回頑張るよ!!うん(笑)