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新・日本昔話  作者:
4/5

桃太郎は恐縮し説明を再確認する

昔々あるところに赤ずきんちゃんがいました。

赤ずきんちゃんはお婆さんのお見舞いに行きましたが、実はお婆さんの振りをした狼で丸飲みされてしまいました。

そこに猟師さんがやって来て狼を倒し、赤ずきんちゃんとお婆さんは無事助かりました。

それ以来赤ずきんちゃんは猟師さんの腕に惚れ込み、弟子入りし、修行を重ね、最早敵なしとなっていました。



「それで、そんな可憐な赤ずきんちゃんはこんなところで何をしてるんです?」

相手が日本昔話の仲間とわかった途端この余裕だよ。まったく、浦島は都合が良いな…

「さんで呼びなさい」

「は、はいぃぃ。赤ずきんさん!!」




思いっきり威圧されてるじゃないか。

浦島と赤ずきんさんの上下関係がはっきり区別された瞬間である。


「それで…そのぉ、僕たち赤ずきんさんに頼みたいことがあって、ここに来たんですけどぉ…」

浦島、思いっきりキョドってるじゃないか。

「一体なんなんですか?」

とりあえず浦島が今、『日本昔話』が直面している問題を赤ずきんさんに話した。

「ふーん、つまりもう一度本来の『日本昔話』に戻さなければならない、と」

あかずきんさんは物分かりが良かった。

「そうです。それで、倒しに行かなきゃいけない敵がいるんですよ」

「私に倒せない相手なんていません」

「またまた、絶対いますって……てっ!?」


浦島はわざとらしくゴクリと唾を飲むしぐさをし、

「それは…、鬼ですよ」

と言った。

すると赤ずきんさんは意外にもたじろいだ。

「なっ…鬼と戦えるのですか!?」

「そうです。さすがの赤ずきん様でも勝ったことないでしょう?」

おいおい、様づけになってんぞ。

「いえ、実は私、鬼とは一度も手合わせしたことが無いんです」

「……え?」

「赤ずきんちゃんの作品の中に鬼なんて絶対出てくるわけがないでしょう?」

「それは、そうでしょうね…」

鬼が出てそれを猟師さんなんかが倒した暁には物語のタイトルは『りょうしさん』になってしまっているだろう。

撃退した相手が狼程度だったからこそ猟師が目立たないのだ。

「鬼と戦えるなら喜んで着いていくわ」

「本当ですか!?」

「鬼を倒した瞬間、私たちの物語は最初に戻ってしまうけれど」


「あっ……」


浦島とハモる。

「当たり前じゃない。鬼討伐隊ってことは、クズ…じゃなくて浦島さんも、女神…じゃなくて私も、『桃太郎』という作品の立派な出演者に為るのだもの」


「おいおい、言い間違いがひどすぎるだろう」

「うるさいわね、撃つわよ」

なんてハスキーな奴なんだ。

爆弾か?処理班呼んでこーい。


「それによって起こる問題点が二つあります」

赤ずきんさんが指を二つ立てる。

「一つ、最後の一撃は桃太郎自身で決めなければならない」

「そうだな」

「もう一つ…私と浦島が万が一、鬼に殺されてしまうことがあったら、もう元の作品には戻れなくなってしまうかもしれない」


そうだ、その通りなんだ。俺たちは基本、決められたレールの上をひたすら回ることをしているだけなのだ。

桃太郎は鬼を退治し、

浦島太郎は玉手箱でおじいさんになり、

赤ずきんちゃんは猟師に助けられる。

今まで、永遠にそれをループし続けてきた。

それは、マンネリ化していたと同時に『安定』もしていたのだ。


それを今回…30年という年月を隔ててしまったために、マンネリから抜け出そうとしたがために、『安定』を『不安定』に変えてしまった。



それゆえ、これから起こることと、それによって引き起こることが、全く予想できないのだ。

「それでも…行かなきゃ結局、人間に忘れ去られて消えてしまうでしょうけど」


「行かぬは消滅で行くは未知なら…」

「行く道しかないでしょう、鬼退治!」

元気よく浦島が応えた。


そうして俺たちは新たに赤ずきんさんを加えて歩き出した。


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