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新・日本昔話  作者:
2/5

桃太郎は集めるため料理する

昔々あるところに40歳の浦島太郎がいました。

浦島太郎は10代のときに若者たちから亀を助けましたが、「助けた亀の上に乗って竜宮城に行くなんてとんでもない、それではいじめていた若者たちと変わらない。」と亀の提案を拒否しました。それから30年余り、もちろん竜宮城でもらえる玉手箱から出てくる煙も浴びることなく、本来は過ごすことのできない20〜40代を満喫して生活していました。



まさかあの浦島太郎さんだったとは…

もっとひょろっとしてるイメージだったけど意外とガッチリしているんだなぁ。若者から亀を救うくらいだもんな。


「桃太郎さん、とりあえず仲間を集めましょう。鬼退治に仲間は多くて困ることは無いですよ」





そういう浦島はすでにいつも通りの格好。半袖半パンである。

「なんのためのスーツだったんだ」

と、素直に疑問をぶつけてみると、

「雰囲気出てましたよね!?危機感持ちましたよね!?」などと言ってきた。

イタズラだったのかよ。 黒づくめの男がやってきて体が小さくされちゃうとか思っちゃったわ。


「それで仲間なんですけど、犬、猿、雉は外せませんよね!!」

「鉄板だな。それでどうやって仲間にするんだ?」


「きびだんごですよ。あれなら何でも仲間にできます」

「きびだんごは作れないと言ったはずだが?」

そういうと浦島は「チッチッチ」



と右手の人差し指だけをたてて左右に降る行動。うわ、なんだあの指、折ってやりてぇ。


「ここにおばあさんが残したきびだんごの作り方があるんですよ!!」

なんでお前のポケットから出てくるんだよ。

ドラ○もんか?四次元に繋がってんのか?

「これぞ作者の秘技、ご都合主義ですよ」

うわぁ…汚いよ。


「さてさて、材料はっと…」そう言って紙に目を落とす浦島に習い、俺もきびだんごの作り方の書かれた紙を覗き込む。

「なになに、片栗粉、水、ヨモギ…」

なんだ、いたって普通じゃないか。

「練って材料を混ぜ合わせて……」

そこで浦島の朗読が止まる。

「……なんてこった」

「どうした?足りない材料でもあるのか?もし無いのならいくらでも取ってくるぞ?」

「いや、そんな生易しい問題じゃないんですよ」

「途中から書かれてないとかか?」

「いんや、違うんです。きびだんごは――」

浦島は一息入れ、もったいぶってこう続けた。


「おばあさんが一人で、おばあさんの愛情込めて、おばあさんが手で丸めなくちゃ出来ないんですよぉ!!!!」


えー…。

どう反応したものだろうか。そんなことないだろうと思ってしまう。

しかしその迫力に気圧されてしまいながら、

「ま…まぁ物は試しだ。ダメもとで作ってみようぜ」「料理をなめちゃぁ…あかんのですよ」

お前だれだよ。


それでも浦島を説得してご都合主義で材料を浦島のポケットから出して実際に作ってみた。




俺達がこねるまではレシピ通り作れたんだ。綺麗なヨモギの緑色をしていたはず、それなのに…、

今、俺達の目の前にある異臭漂わせるこの黒い物体はなんであろう。

プスプスいってるよ?

どこに熱を加える行程があった?

あっ、煙のせいで目が痛い。桃子、涙が出ちゃう。女の子だも…「やっぱりお婆ちゃんの愛情は必要なんだぁぁ!!」

だからお前だれだよ。


こうしてきびだんごで仲間を釣る作戦は実行する前に終わった。


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