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花言葉の物語 ~青春グラフィティ~  作者: 十六夜 あやめ
1章 想いを乗せてキミのもとへ
21/30

アリウム

 更新再開です!

 お待たせいたしました!!

 短めですがどうぞお読みください。





 青々とした空が広がっていた。灰色の空はいったいどこへ行ってしまったのだろうと不思議に思う。

 太陽のあたたかな日差しが通学路脇の木々に降り注ぎ、鮮やかに色付く緑を水溜りに映し出している。通学路一面を覆う雨水に映し出される空と木々は天と地を反転させたかのような幻想的な光景だった。

 まるで空の上を走っているような感じがした。


 学校に到着したものの表門は鍵が掛けられて入ることができなかった。仕方がなく校舎の裏側にある門から校内に入ることにした。すでに2時限目が始まっている時刻のせいか、生徒の声がほとんど聞こえない。中庭の向こうにあるグラウンドの方から体操をする掛け声が聞こえるだけだ。

 ぼくと茉依はまず2年生の昇降口に向かって上履きに履き替えた。


「2時限目始まっちゃってるみたいだね」


「そうだな。でもこっちの方が都合がいいのかもしれない」


「ねぇゆーちゃん本当にいくの?」


「やっぱりこわい?」


「だって校長室だよ? わたし入学してから一度もいったことないよ?」


 まぁ、そうだろうな。ぼくだって校長室に行ったことなんてない。そもそも一年生の時はどこに校長室があるのかすらも知らなかったくらいだ。


「大丈夫だって……きっと」


 根拠も自信もない。けれどいまはそう自分に言い聞かせて気をしっかり持ち続けないと恐怖や不安に押し負けてしまいそうだった。


「ゆーちゃんがそう言うなら大丈夫だね!」


 茉依の笑顔がぼくの背中を押す。力が湧いてくる。思わず絶対大丈夫と思ってしまった。


 先生たちが徘徊していないのを確認しつつ、隠れながら少しずつ校長室に向かう。途中職員室前を通らなければならず、タイミングを逃すわけにはいかなかった。もしも見つかれば怒られるだろう。最悪そうなったら茉依だけでも逃がしてやりたい。ぼくのせいで茉依が怒られるのは耐えられないし、茉依に罪はないのだから。

 職員室の扉の隙間から中の様子を窺う。どの先生たちも自身のデスクに座って何やら仕事をしている様だった。


「いくぞ茉依」


「うん」


 ぼくたちは姿勢を低くして、尚且つ早足で職員室を横切り、奥にある階段を下りた。

 階段を下りるとそこは来客用の昇降口と受付事務所がある。幸い訪問者らしき人はおらず、受付事務員の人たちも他の仕事をして窓口にいない。

 先ほど同様に姿勢を低くして事務所横を通ってさらに奥へ進んだ。



 見えた。校長室のプレートだ。



 高級感のある艶やかな焦げ茶色の木の扉は重厚感と威圧感を兼ね揃え、まさに校長室と言わんばかりの雰囲気を醸し出していた。扉に触れることですら不安になる。

 茉依は「きれいな扉だねぇー」と笑顔で何やら楽しそうだった。危機感というものに覚えはないのだろうかとときどき心配になる。

 ぼくは深呼吸して自分の気持ちを整理させた。丁寧な言葉遣いを心がけ、目上の人に対する態度をとり、石田の自宅謹慎の取り消しをお願いする。よし、ばっちりだ。



 コンコン。



 扉のノックする音が聞こえた。

 おいおい、ぼくじゃないぞ。ということは1人しか……。


「ゆーちゃん中に入らないの?」


 もうどうツッコめばいいのかわからなかった。ときどきは訂正することにする。茉依はいつも危機感というものがない。断言してもいいと思った。


「――はい」


 朝礼のときや開会式のときに聞いたことのある少し低めの声が扉の向こうから聞こえてきた。

 茉依のおかげでせっかく整理した内容を全て忘れてしまった。

 もうここまで来たら仕方がない。いまぼくにできる最大限のことをするんだ。言葉を間違えちゃいけない。正しい主張をしたら大丈夫なはずだ。そして石田の謹慎処分を取り消してもらう。



「失礼します!」



 ぼくは少し裏返った声で扉を開けた。










 アリウム。花言葉は、『くじけない心』『正しい主張』などです。

 次回話に続きます。


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