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花言葉の物語 ~青春グラフィティ~  作者: 十六夜 あやめ
1章 想いを乗せてキミのもとへ
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ユーパトリウム 【1】 

 このお話は【1】【2】の二部構成でお送りします。






 ぼくは須永悠。ちょっと変わった幼馴染と平凡(?)な毎日を送っている。

 その子の名前は浦木茉依といって、ぼくとは違うクラスだがよく顔を出しにやってくる。いつも紙ヒコーキを持っているちょっと変わった奴だ。まぁ、仲はいい。


 今日も相変わらず茉依は紙ヒコーキを折っていた。寸分の狂いもない綺麗な折り目。英語のプリントが使われているのか、紙ヒコーキのくせにデザイン性がある。もはや茉依の紙ヒコーキは芸術品だった。きっと性能も申し分ないだろう。

 その紙ヒコーキはいったいどのようにして作られているのか。実に簡単だった。

 プリントを1組前の廊下の壁に押し付けて折り、壁にもたれ掛って形を整えるだけ。そして、完成した紙ヒコーキを開いた窓の外へ――――って!?



「外に飛ばすなよ!」


「あ、ゆーちゃん」


「前からずっと言ってるだろぉ……。見つかったら絶対怒られるぞ」


「でも今のすっごく出来が良くってね、天気もいいしちょうど窓も開いてたし、紙ヒコーキも外を飛んでみたいって――」

「言ってないから」



 紙ヒコーキ好きを極めると会話ができるようになるらしい。もちろん信用してはいない。信用するはずがない。

 茉依の外見は高校2年生にしては幼く見える。身長は低いし、Sサイズのセーターでも手が隠れてしまうほど身体が小さい。細い脚は転んだだけで折れてしまいそうで、靴のサイズは「小学生かっ!」とツッコミたくなる。外で遊んでいる子のような活発な感じではないが、それなりに走ったり回ったり飛んだり跳ねたりして元気な奴だ。

 前世は猫だったのではないかとたまに思う。

 おまけにひとつひとつの仕草が子供っぽい。紙ヒコーキを作っているのもそうだが、飛ばす時に効果音を付けてみたり、何気ないことで喜んだりいじけて拗ねてみたり。とても同い年とは思えない。

 ぼくはそんな子供みたいな茉依を父親のように見守っている。(見守らないといけない気がする)

 おかげでいつも心配させられてばかりだ。



「はぁ……ゴミになる前に拾いに行くぞ」 

 

 茉依の手を掴んで昇降口へ向かおうと思った瞬間、一機の紙ヒコーキが後方から飛んできた。


「あ、こーくんだ!」


 振り返るとそこには如何にもチャラそうな男子がいた。髪は長くて茶色っぽく、男子のくせにヘアゴムで後ろ髪をくくっている。次第にはシャツのボタンを三つ四つ外し、中にボーダーのTシャツを着ていた。校則というものを知らない奴なのか?


「もー茉依さんどこ行ってたんスかー。紙ヒコーキ作ってる間に消えちゃうなんてビックリしたっスよー。俺と飛距離競うんじゃなかったんスかー?」


 話し言葉もなんだかむかつく。

 直感的に分かるものがある。――――コイツは苦手だ。


「ぁ、ごめん忘れてた……」


「いやぁーいつも通りっスねー……って、もしかしてあなたがゆーちゃんっスか?」


「……ゆーちゃん言うな。それとお前誰だよ」


 めんどくさそうな相手だ。多少冷たい感じで接した方がいい。


「あぁやっぱりそうっスか! 何度か1組には入ったことあるんスけど、誰がゆーちゃんなのか分からなかったんスよねー。そういえば俺の名前っスよね、俺は石田浩介いしだこうすけっス! 茉依さんとは同じクラスで、最近仲良くなったばかりで紙ヒコーキクラブのメンバーっス」


 茉依のクラスにこんな奴がいたのか。ぼくの方から8組へ行ったことないからまったく知らなかった。合同授業でも8組とは組まないから尚更か……。それにしても、これだけ目立つ奴を2年生になるまで気付かなかったぼくっていったい何を見てきたんだ?

 あと、紙ヒコーキクラブってなんだ?


「こーくんはね、紙ヒコーキが好きなんだって! いつも話し掛けてきてくれてすっごくいい人なんだよー。それにね、紙ヒコーキクラブにも入ってくれたんだぁー。これで部員が3人になったの!」


「へ、へぇー。それで、その紙ヒコーキクラブだけどさ、一人は茉依だろう? んでこの石田で二人だろ。あとの一人は誰だ?」


「何言ってるの? もう一人はゆーちゃんに決まってるじゃん」


 …………。


「はぁ!? おいおい、聞いてないぞ! いつの間にそんなクラブに入れられてるんだ!?」


「えぇーずっと前からだよ? 忘れちゃったの?」


 忘れたも何も、まず聞いてない。ずっと前からっていつだよ……。


「もー二人だけで話しちゃってズルいっスよー! 俺も混ぜてくださいよー。それに、ゆーちゃんも俺ともっと話してくださいよー!」


「だからゆーちゃん言うな。あと、話すことないし……いい」


 やっぱりコイツは苦手だ。人の言葉を聞いていないし、容姿も言葉遣いも好きになれない。茉依さんって呼んでるのも気に食わないし、どうも合わない。

 あーなんだろう。さっきからずっとイライラしてる。きっとぼくのペースを乱されてるからだ。茉依にペースを乱されてもこんな気持ちにならないのに……。


「ゆーちゃんそういうの良くないよ? 同じ紙ヒコーキクラブのメンバーなんだから仲よくしなきゃ」

「そうっスよー」


 …………。

 その一言が余計なんだよ……。

「紙ヒコーキクラブのメンバーかどうかは知らないけど、まぁ努力するよ……」


「あっ、茉依さんそろそろ教室に戻らないと帰りのホームルーム始まっちゃいますよ。2分前行動しないとダメっス」


「あ、ほんとだぁーもう休憩時間終わっちゃたんだ。じゃあまた放課後ね、ゆーちゃん!」


 その小さな歩幅で走って戻っていく。

 その後を追うように石田も小走りで戻って――――と思った瞬間、急に立ち止まった。そして、振り返ってぼくの方へ駆け寄ってくる。



「俺、茉依さんのこと好きっス。でも安心してくださいね、ただ友達としてですから」



 そう言い残して8組へ戻って行った。

 ……なに言ってんだアイツ。

 石田は勘違いしている。そうに違いない。

 このイライラしたりする気持ちはその勘違いのせいだ。











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