初カレ
私の名前は 雪。十六歳。
私は十六歳にして、やっとのことで彼氏ができたんだけど、その彼氏が、嫉妬深くて、ナルシストで、なぜか仕事も一緒の所で……。
しかも、同棲までしてるんだけど、ついには限界をこえ、今駅で彼氏に泣き付かれている所でありまして。
出会いは、私が十五歳の時。
友達皆、高校に行くなか、私は中卒でコックとして働いていた。
だけど、なんの出会いもなく、このまま私は彼氏ができずに……。
みたいな事が頭をよぎり、すぐさま出会い系で、出会いを求めてた。
以外にも格好いい人をゲット!!
名前は優君。十九歳。
すごく優しくて、話もあって。
告白された時は、すぐにオーケーをだして付き合いはじめた。
ものの、私がおもっていた彼氏というイメージはいっきに消え去り、わがままの泣き虫の、自己中。
最初は、彼氏なんてこんなものなんだなぁ〜っておもってた。
が、限界はそこまできていまして……。
もう、私も付き合って疲れてきたというわけでして。
だって、クリスマスプレゼントが、結婚届けの紙と、結婚指輪!ですよ。
あれが、いちばんきいた。
私まだ、十六なのに……。まだ、やりたいことたくさんあるのに。
そう思い、今こういう展開になっております。
泣きじゃくる彼氏。
それをギャラリーがチラチラとこちらを見て、笑ってる。
私は恥ずかしくなり、やっと我にかえって、優君をなだめる。
「そんなに泣かないでよ」
「だって……だって、なんで急に別れるとかいいだすんだよ。さっきまで、楽しく食事してたじゃないか」
鼻水をながし、優君は震えた声で私に言う。
―それは、最後のばんさんとおもって―
とは、さすがに私は言えなかった。
どう言っていいのかわからず、私も黙り込んでしまう。
付き合うのも優君が初めてで、別れるのも優君が初めてで。
皆、別れる時ってどんなふうに別れを告げるんだろう。
バイバイがいちばんいいのかな?
でも……そんな別れかた、なんか嫌だ。
嫌いになったわけでもないのに。
ただ、友達として戻りたくなっただけ……。
私ってわがままなのかな?
なんだか、私も悲しくなってきた。
ツーンと鼻が痛くなり、涙がうかぶ。
私は座り込んで泣いている優君の手を優しく包んだ。
冷たくなった優君の手は真っ赤で、拳を握り締めている。
「こんなに好きなのに……駄目なんか?」
小さく優君が呟く。
「ごめんね……」
喉のあたりが熱くて。
私は謝る言葉しかみつからなかった。
急に優君は握っていた私の手を振りはらい、立ち上がった。
涙で顔が、ぐしゃぐしゃになっている。
「もうお前なんかしるか!!お前だけは……お前だけは」
優君の怒鳴り声に私はびっくりした。
「俺の側から離れないとおもったのに……」
そう言うなり、優君は私を睨みつけて、走って帰ってしまった。
ギャラリーが、まわりで集まっていても、今の私には、その声すら耳にはいらなかった。
―お前だけは、俺の側から離れないとおもってたのに―
優君の言葉が、私の頭のなかで、何度も繰り返されて聞こえる。
さっきまで、優君の手を握っていた自分の手を、私はもう片方の手で握った。
まだ……まだ少しだけ暖かい。
ポロッと、涙がながれてきた。
「今さら……」
笑いながら、私は自分の涙をぬぐう。
だけど、何度ぬぐっても流れてくる涙。
―雪―
もう、優君にこの名前を呼んでくれることはないんだよね。
自分が別れをきりだしたのに……どうして……どうしてこんなにも胸が痛いの。
あれから一年がたち、私はもう恋愛なんか……彼氏なんかいらないって心のなかで誓っていた。
付き合って駄目になるのなら、ずっと友達のままでいたいって。