タイトル未定2025/06/25 11:35
かつてこの世界には、あらゆる食があった。
肉、魚、野菜、米――
しかし、ある日、世界に**「最も美味なるパン」**が誕生した。
それは味覚を超え、脳を焼き、精神を発酵させるレベルのうまさだった。
それを食べた者は皆こう言った。
「もう……パンしか、食べたくない」
だが、それは呪いだった。
パンを食べた者は、やがて**“パンパイア”**と呼ばれる存在へと変貌した。
彼らは米を見ても吐き、肉をかじれば口が崩れ、最終的には――他者のパンエネルギー(=炭水魂)を吸うしか生きられなくなる。
そして今も世界は、パンパイアで満ちている。
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【廃都グルテンベルク】
空には焦げたパン雲。
地にはトーストの灰。
誰もが口を閉ざし、麦の香りに怯えて生きていた。
そんな街角で、少女はパンを盗んだ。
「やめろぉぉぉぉ!!!」
周囲の住人が絶叫する。パンは、禁忌の食べ物だ。
だが少女は、空腹だった。ただ、それだけだった。
ごくり。
口に入れた瞬間、世界が弾けた。
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脳内に響く、無数のイースト菌の囁き。
視界が焼け、世界が小麦色に染まる。
「――あ、あはっ……あはははははははッ!!!」
少女の名前は、穂乃花イースト。
パンを食べてしまった彼女は、新たなパンパイアとして覚醒してしまった。
腕に浮かび上がる、発酵の印。
胃袋から聞こえる、“パン以外拒否”のアラーム。
「やだ……もう白米が怖い……!
ミソスープって何!? カレーって何!?
パン以外、考えたくないっ!!」
彼女は逃げる。パンを追う。
いや、もはやパンを“信仰”する以外に、生きる道がなくなってしまった。
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【地下・カビ教団】
逃げ込んだ先には、パンの匂いが満ちていた。
そこにいたのは、かつてトースト神殿の神父だった男――
「ようこそ、我らが教団へ。
我々は全員、かつての食卓を捨てた者たち。
パンパイア専用の“発酵シェルター”へようこそ」
「えっ、ここ……給食ないの?」
「あるさ。三食パンだ。
朝はバターパン。昼は蒸しパン。夜は……魂で焼いたパンだ」
「最高かよ」
パンパイアとなったイーストは、その日から人間をやめた。
だが――彼女の奥底では、まだ何かが燻っていた。
「……この呪い、ぶっ壊す」
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【最後のセリフ】
「この世界、パンに喰われた。
だったら私は、パンを喰い返してやるわ。
血も涙も小麦もなにもかも焼き尽くして――
パンの神に、ぶん殴りの一発を入れてやるッ!!」
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《To Be Continued…》
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次回予告
第2話「バゲット刑務所、脱出不能のラスク壁」
パンしか食えぬ者たちが、パンで作られた牢獄から脱出を試みる!
お読みいただきありがとうございました!
当方は1話完結で楽しめるライトな小説を目指して作成しています。よろしければ評価よろしくお願いします!