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いくぜっ!?香港!? ~零細一口馬主ですが、出資馬が桜花賞と秋華賞を獲ってしまいました~   作者: 黒星★チーコ


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5/7

ロッテンマイヤーさんの思い出

前々話、「2025/10/19 秋華賞 運がつく?」で(※1)と注釈を入れていた件になります。

一部、以前投稿した短編『いくぜっ!桜花賞 ~馬キチの夫×オタクの妻が一口馬主をやってみたら出資馬がGⅢを勝ちました~』と重複する内容があります。

 本エッセイのタイトルにもありますが、我が家は零細一口馬主です。

 調べた事はありませんが、多分加入しているシルクホースクラブの中でも最も細い客じゃないでしょうか。

 何せ、一年に一頭どころか、二年に一頭しか出資していないのですから。


 いやー、お金があればね、うちだって何頭も出資したいですよ。お馬さんは可愛いのでね。推し馬が増えたら良いに決まってるじゃないですか。

 単に出資するお金がないだけなんですよ!! 本物の馬主ほどではないにせよ、一口馬主だって何頭も出資できるのはお金持ちだけでしょう。


 まあ、その二年に一頭の条件でよく二冠馬を一本釣りしたなぁと自分でも思いますけれども。

 それは、エンブロイダリーちゃんの母親であるロッテンマイヤーさん(なぜかさん付けしたくなる)との薄い縁があったからなのです。


 ★


 私の夫はそれはそれは馬が好きですから(ギャンブルもそこそこやりますが、乗馬もやりますし馬そのものが好き、という感じです)、グリーンチャンネルに加入しています。

 グリーンチャンネルというのは、JRAの全競馬の生中継をやっている、ケーブルテレビの有料配信チャンネルです。


 週末、夫は朝から他にすることが無いと、とりあえずグリーンチャンネルをつけて競馬中継をダラダラ見る……なんてことが日常です。

 その中継で私はロッテンマイヤーさんと出会いました。


「……ロッテンマイヤー、父、クロフネ。母、アーデルハイト……」


 ある日、そんな声が聞こえてきて私は「ん?」とテレビに向き直りました。

 この時の詳細ははっきりと覚えていないのですが、グリーンチャンネルの競馬中継では父名だけでなく(母がよほど有名な馬でもない限り)母名も挙げている時というのは、勝った馬を紹介するアナウンスぐらいのものです。

 ロッテンマイヤーの過去の戦歴と、この時期を照らし合わせると、どうやら新馬戦(つまりデビュー戦)を彼女が勝利した時の、勝利馬を紹介するアナウンスだったようです。


「なるほど……ハイジつながりかぁ」


 馬については素人の私でしたが、夫の影響で馬名は両親から(ちな)んでつけることもある、という知識は持っていました。

 そして馬キチだけれどオタクの素養は全くない夫は気づいていなかったのですが、オタクの私は「アーデルハイト」がアニメ「アルプスの少女ハイジ」のハイジの本名であるという知識をも持っていました。


 アニメでは、皆がハイジと呼んでいる中でロッテンマイヤーさんは「アーデルハイト」と呼ぶので、そこから名付けをしたんだろうなぁとニヤニヤしたのです。

(※二人の関係性を考えると、アーデルハイトからロッテンマイヤーが生まれるのはおかしいと思いますが、そこは目をつぶって下さい)


 さて、そんなわけで特に馬に深い興味があるわけでもない私の記憶に、しっかりとその名が刻まれたロッテンマイヤーさん。


 その後、再び彼女が出るレースのパドック中継も偶然目にしたのです。

 それが2戦目のクイーンカップでした。


「あ、この子、確か……」


 パドック中継でロッテンマイヤーさんの名前を見て、すぐに先日ニヤリとさせられたことを思い出しました。それで何となく応援するようになったのです。

(※なお、このクイーンカップでは三着だったのですが、エンブロイダリーちゃんはクイーンカップを勝ちました。お母さんが勝てなかったレースを子供が勝つってなんかロマンがありますよね。)


 ロッテンマイヤーさんはわすれな草賞を勝利し、オークスにも出場しました。こちらも応援していましたが残念な結果に。

 その後、クイーンステークス(前述のクイーンカップとは別物。少々紛らわしいですね(;^ω^))に出た後、故障してしまい長期のお休みに入ります。


 その後は私とロッテンマイヤーさんとの縁は切れてしまったようです。故障明け復帰後、いくつものレースに出たようなのですが、私が彼女の出るレースやパドック中継を目にすることはありませんでした。

 戦績を確認したところ、一回だけ勝利した後に、もう一度レースに出て引退した模様です。

 そして引退=繁殖牝馬として、第二の人生ならぬ馬生が始まったわけですね。


 ★


 さて、二年と少し前、つまり2023年の夏。

 新しい仔馬(出資馬候補の1歳馬たち)のカタログを見ていた私に、再び彼女との縁がつながりました。そこに「ロッテンマイヤーの2022」という文字を見つけたのです。

 繫殖牝馬となったロッテンマイヤーさんの二番目の子が2022年に生まれ、シルクホースクラブの持ち馬になっていました。


「ロッテンマイヤーさんの子どもじゃん! この仔にしよ!」


 私は夫に即座に言いました。しかし夫の反応は鈍かったのです。


「うーん、ブエナビスタの遠戚だし……いいとは思うんだけど……」


 一口馬主は夫の趣味です。もちろん、今まで出資した馬を生で観るために競馬場に行ったり、テレビの前で応援したりと私も少なからずは楽しんでいましたけれども。会員の名義は夫ですし、出資金や毎月の会員費を支払い、リターンである賞金を得ているのも夫の口座です。

 当然、今まで出資する馬をどれにするか決めるのも夫の独断でした。私は馬については素人ですから、馬に詳しい夫の決定の方が良いに決まっていると思い、これまでは出資馬を選ぶ際に口出しはしませんでした。


 だから、私が「この馬がいい!」と強く言うのはこれが初めてでしたし、夫は夫で別に出資したい候補の馬がいたので、私の意見を取り入れようとはしなかったのです。


 それが急転直下、ロッテンマイヤーの2022(のちのエンブロイダリーちゃん)に出資を決めたのは、これも夫の判断でした。

 シルクホースクラブは1頭の馬の権利を500口に分けて出資を募ります。人気の仔馬は口数以上の応募が集まると、当然抽選です。

 しかし実は500口全部くじ引きという訳ではなく、そこにはちょっぴりこみいったルールがあったりします。


 500口のうち、200口が抽選枠、300口が実績枠です。実績枠とは、過去3年の出資の実績に応じて(つまり、沢山出資している人から順に)入れる枠のことです。我が家は二年に一頭しか出資していませんから、実績なんてないのです。最初から200口の抽選枠に賭けるしかないのでした。


 なお、この抽選枠、「抽優」とも呼ばれていますが、抽優は一年に一頭しか申し込みできないシステムになっています。

 つまり、我が家と違って、一年に複数の馬に出資するつもりの会員さんだと……自分の過去3年の実績に関係なく、運を天に任せて抽優の申し込みする馬が一頭(人気のある、走りそうな馬にすることが多いです)&自分の実績で獲りに行けそうな馬を何頭か申し込む、というやり方をするみたいなんですが。

 我が家は毎回、抽優一頭だけの申し込みです。そしてその抽選が外れたら、その年はもう出資ができずに終わり(それか、募集が集まらなかった人気薄の仔を妥協して申し込むかの2択)なわけです。


 夫が最初に検討していた馬は大人気で(締め切りの数日前まで、だいたい何人くらいが申し込んでいるのか申し込み状況がサイトで見られるそうです)、当選確率が3割以下だったかと。いくら運のいい夫でも、獲ってこれる自信はありませんでした。

 そしてその時(直前の駆け込みなどで変動はあるでしょうが)、ロッテンマイヤーの2022ならば、当選確率は7割前後だったのです。


 この状況と、そして私がしつこく「ロッテンマイヤーさんの仔にしようよ~」と言い続けたお陰で夫は舵を切りました。


「うん、多分抽選に外れないと思うからこっちで申し込む」

「やったー!!」


 そして狙い通り、抽選も無事当選し、ロッテンマイヤーの2022改め、エンブロイダリーちゃんに出資することが決まりました。

 うっすらではありますが、推していた馬の子どもに出資することになった私はただそれだけで満足していました。その仔が将来G1を二つも取る、化け物クラスの馬だと知る由もありませんでした。


 なお、夫が最初に出資しようと検討していた大人気馬ですが……現状は未勝利を何とか勝っただけです。

 なので、私は事あるごとに夫に「私が! エンブロイダリーちゃんを! 選びました!」とマウントを取っています(笑)。


 まあ本当は、グリーンチャンネルでロッテンマイヤーさんの紹介アナウンスを偶然聞いていなかったらこうなっていなかったのですから、私の実力ではなくて、不思議なご縁だとは思っているのですけどね。

 でも夫には内緒です。(* ´艸`)


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― 新着の感想 ―
競馬知識ゼロの私でも、ロッテンマイヤーさんの仔ということだけは、先のエッセイからハッキリ覚えています。 ホッシーの愛と、ご縁の尊さを感じる素敵なお話です。 こういう楽しみ方もあるのだなと、人生を学ば…
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