表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

共同戦線

 綺羅に連れてこられたのはうどん屋だった。しかも、安いことで有名なチェーン店。

「便宜って·····」

「だって僕の給料じゃ、ここ以上で奢れるお店なんてありませんもの

 私立探偵事務所の、見習いですから」

 それでよくもあれだけ堂々と探偵だと名乗れたものである。

 彼は出汁のかかった温玉載せうどんを旨そうにすすりながら、

「探偵って、ドラマやアニメみたいに、事件現場に乗り込んでズバッと事件を解決することはなくて、あくまでも調査員なんですよ」

 当たり前である。

「でも、僕は人間相手の尾行に向いてないらしくて、浮気調査とかの任務からはよく外されてしまうんです」

 確かに、中身はともかくこんな美青年、尾行対象から顔を覚えられてしまうだろう。

「だから、主に僕の仕事って犬猫探しや雑用なんです

 けど、他の仕事も出来るってことを、所長や先輩に認めてもらいたいんです!

 というわけで、僕が事件を解決出来るように、力を貸していただきたい!!」

「·········」

 何が、というわけで、なのだろうか。

 しかし、この青年、デリカシーはないが、やはり悪人かというと、そうでもなさそうな気がする。探偵としての能力は全く信頼に値しないが。

 何より、協力しないと延々と彼に付きまとわれそうな気がする。

 浮世はかなり熟考してから、

「話すのは良いけど」

「ありがとうございます!!」

「けど、条件があるの」

「はい!!どうぞ!!」

 内容も聞かずに綺羅はまた良い返事をする。これで要求が全財産よこせとかだったらどうする気なのか。

「私も、事件のことを知りたいの」

「はい」

「だから、私も一緒に調査させて」

 闇雲に怖がっているよりも、そちらの方が良い気がした。相棒に多大な不安はあるが。

 しかし綺羅は初めて、少し弱ったような顔を見せた。

「殺人事件の犯人を探すんです。危険かもしれませんよ?」

「それでも、ただじっとしてるだけなのは落ち着かないの」

 綺羅はうーんと唸ってから、人差し指を立てて、

「じゃあ、約束をひとつ

 一人で動かないこと。事件と関わるときは必ず僕と一緒に行動してください」

「わかった」

 こいつと一緒の方が心配だが、贅沢も言っていられない。

「では、我々は共犯ということで」

「···そこは共同戦線とか仲間とか言って欲しいな」

 そう言いつつ、浮世は差し出された綺羅の手を握り返した。

 今回は全編シリアスを目指してみたが、作者にそんな器用な真似が出来るはずなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ