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立太子式典と皇族

今日も何話か投稿します。

続きが気になると思っていただけましたなら、是非ブックマークしてお待ちください。


 





『今日はクリス皇子の立太子式典に参加してもらい、感謝申し上げる』


 あれは拡声の魔導具かな?

 城のバルコニーから、城外に集まる貴族・豪族に向けて、サザーランド皇帝陛下が演説をしている。

 周辺国からの来賓は城内の別のバルコニーからその様子を伺い、僕達レーガン公爵家に連なる者たちは最前列でその声を聴いていた。

 もちろん跪いているから、治りかけの肋骨が圧迫されて痛むけど。


『では、紹介しよう。今日(こんにち)より、サザーランド皇国の皇太子となるクリス・ド・サザーランドだ』


 そう告げる皇帝陛下の横から、皇帝陛下とも僕とも同じ、銀髪の青年が顔を見せた。


『陛下。ありがとうございます。

 皆の者、これまでも支えてくれたように、これからも私を支え、そしてこの国を支えてほしい。

 私はそんな皆の期待に応えるために、これからも一層精進し、この国の礎になれるよう日々を過ごしたいと思う。

 今日は来てくれてありがとう。立太子の儀が終わり次第、パーティを始めるから楽しんでいってくれ。以上だ』


 皇子殿下がそう締め括ると、僕達を囲む騎士達が抜剣し、剣を眼前へと掲げた。


 やっと立ち上がれる……






 公爵家が所有する皇都別邸の自室へと戻ってきていた。だって…立太子の儀って半日も掛かるから城で待つなんて……むり。


「面倒な用事だったけど、収穫もあったね」


 収穫とはもちろん『鑑定』のこと。僕が縋れる唯一の能力。

 ここぞとばかりに国の主要人物たちを鑑定しまくっていたんだ。


 ※ ミハエル・ロキシー・サザーランド 40歳 男 人族

 体力…70

 魔力…45

 腕力…41

 脚力…42

 物理耐性…48

 魔力耐性…32

 思考力…110


 流石皇帝陛下。恐らく帝王学を学び思考力を伸ばし、自身が先頭に立てるように若い時に鍛錬を行なっていたのだろう。

 耐性系が軒並み低めなのは、元皇子への忖度や遠慮が大きく影響していたのかな。


 ※ クリス・ド・サザーランド 18歳 男 人族

 体力…85

 魔力…68

 腕力…59

 脚力…60

 物理耐性…45

 魔力耐性…38

 思考力…101


 こちらも凄い数値だ。

 次期皇太子としての教育の賜物かな?


 そして一番の収穫。


 ※ガウェイン・フォン・ジーレス 39歳 男 人族

 体力…144

 魔力…50

 腕力…81

 脚力…75

 物理耐性…102

 魔力耐性…55

 思考力…81


 ジーレス様は近衛騎士団長で皇国最強と言われている人。

 恐らくこの数値は年齢により増減するのだろう。10年前、全盛期であれば、もしかしたら筋力系も100を越えていたのかもしれないね。

 近衛騎士は団長でなくとも執務が多いって聞くし、団長はその比ではないんだろうね。


 100か…この辺りが僕たち人族の限界点なのかもしれないな。

 でもこれは数値を見れない、対策が出来ない人々の限界。僕には他の人が思いつきもしない鍛錬が出来る。もちろんサキだった頃の記憶も、大きな利点だし。


 そしてこの旅で分かった事が一つ。

 耐性系を伸ばすと、傷の治りが早いという事。

 これまではそこまで耐性系の数値が大きくなかったからわからなかったし、骨折は一度だけで後は打撲や擦り傷だけだった。


 世の強者でこれに気付いている人はいるかもしれない。でも、何の確証も得られていないはずだ。

 その人たちは強くなれば傷の治りが早いくらいにしか思っていない。きっとそうだ。


 僕だけに見えるステータス。

 この有利で、必ず覆してみせる。たとえ他の能力が如何にチートであっても。








「ヒュージ様。この方が弟君ですか?」


 僕から見たら唯一まともで、唯一僕の事を毛嫌いしている兄上。その婚約者であるミシェル・レ・レーヴン侯爵家令嬢が声を掛けてきた。

 兄上は僕より六つ上の14歳、ミシェル嬢は五つ上の13歳だ。

 前世では中学生の二人なのに…婚約とは……私なんて独身のまま死んだのに……


「お初にお目にかかれ、天上にも昇る気持ちに思います。シャルル・ド・レーガン、レーガン公爵家の次男にございます、ミシェル様」


 僕は貴族の礼節として、左手を右胸に持っていき、七十度程腰を折った。


「まあっ!可愛らしい騎士様ですことっ!この様な素晴らしい弟様を、何故早くご紹介してくださらなかったのですか?!」

「い、いや、タイミングが…」


 これで弟が異常者だとは言えまい。ふふふっ。

 僕は外では猫を被る事に決めている。

 自領での噂であれば、父上がどうとでもしてくれる。でも他領であれば、それは即ち父上の、ひいてはレーガン家の汚点で弱みになる。

 僕は家族に迷惑を掛けたいわけじゃないからね。

 もちろん兄上にも。


「ミシェルお姉様!お姉様もシャルルの良さがわかるのですねっ!」


 ここで話に割り込んできたのは、僕を溺愛する一人……


「ジュリア様!お久しぶりですわ。ええ。(わたくし)にもこの様に愛らしいお顔で、賢い弟が欲しかったのですわ。家にいるのは暑苦しいお兄様達だけですし…」

「お姉様。いずれシャルルはお姉様の弟になります。すぐにその夢は叶うはずですわ」


 母上似の愛らしい顔で母上と同じ赤髪。ジュリア・レ・レーガンは僕の四つ上の姉だ。

 喋らなければお人形さんみたいで可愛いのに、うるさい程によく喋り、僕にちょっかいをかけてくる。

 僕からすれば、無視してくれる兄上の方がよっぽど理解出来るし、有難いんだよね……


 その後も賑やかな時間は続いた。

 そして宴も終わりに差し掛かる頃、モーゼの十戒のように人の海を割り、こちらへと向かって歩いてくる二人が目に入った。


 あれは……


「ほ、本日は誠におめでとうございますっ!皇国の未来も・・・」

「良い。遠いといえど、我らは親族ではないか。それよりもヒュージよ、この者がお主の弟か?」

「は、はい!皇太子殿下!」


 やって来たのは本日の主役、クリス皇太子殿下だ。

 10年後、この方と同じ年齢になった時、僕は皇太子殿下の三倍くらいのステータスにはなれているのだろうか……

 頭を下げて視線を外しながら、僕はまだ見ぬ未来を夢想していた。


「お兄様。早くご紹介してくださらないかしら?」

「ああ。済まない。レーガン家の者達よ。今日の主役は私だが、準主役を連れて来た。

 今日が社交会デビューとなる、末の妹レイチェルだ。さあ、挨拶なさい」

「レーガン公爵家の皆々様、お初にお目にかかります。サザーランド皇国第四皇女のレイチェル・レ・サザーランドと申します。サザーランド皇国筆頭貴族であり、皇室とも縁あるレーガン公爵家へのご挨拶が遅れましたこと、平にご容赦下さい」

「妹は幼少の頃、病弱でな。しかし、今は見ての通りお転婆娘へと変貌した」


 皇太子殿下はそういうと、はははっと鷹揚に笑う。笑えるのは皇家の方だけでは…?

 しかし、病弱…?


 ※レイチェル・レ・サザーランド 8歳 女 人族

 体力…70

 魔力…95

 腕力…11

 脚力…11

 物理耐性…202

 魔力耐性…142

 思考力…38


 うん。立派な化け物です。

 でもおかしいな。

 信じられない程の耐性値はまあ何かあったんだろう。でも、それに比べたら体力と魔力が低すぎるよね?


「貴方様は…」


 しまったっ!鑑定に夢中で、ボーッと皇女殿下を眺めてしまっていたっ!!


「皇太子殿下、皇女殿下。お目にかかれ光栄にございます。私はシャルル・ド・レーガンと申します。レーガン公爵家の末子にございます」


 よし。何とか誤魔化せた…よね?


「ほう。シャルルと申したか?歳はいくつだ?」

「祝福の言葉が遅れ、申し訳ございません。立太子、誠におめでとうございます。8つにございます。皇太子殿下」

「そうか。ではレイチェルと同い年であるな。よし、シャルルよ。妹をエスコートしなさい」


 はっ。

 僕はそう言うしかなかった……

 まさかこの子使徒じゃないよね?


「では、皇女殿下。お手を」


 腕ちぎらないでね?

 僕はそう願いながら、皇女が手を置きやすい様に左肘をくの字に曲げた。








「まぁっ!そのような物がレーガン公爵領にはあるのですねっ!」


 淑女と少女、その二つが混じったような口調で、皇女は軽快に口を動かした。

 同年代の子は良くも悪くも子供で、僕と話なんか合わないけど、皇女殿下は思考力も高く表示されていた様に、話すのも上手だ。


「皇女殿下、不躾な質問を一つしても良いでしょうか?」

(わたくし)に答えられることであれば良いのですが…」


 ここはパーティ会場が見渡せるバルコニーの一つ。護衛は周りにいるが、一応貴族である僕もこの状況には慣れているから、気にせずに聞きたい事を聞く。

 皇女殿下は帝王学をしっかりと学んでいる様で、迂闊な事は言わないだろう。

 でも、僕が知りたいのは皇室のスキャンダルでも、他の貴族家の弱みでもない。

 身構える皇女殿下に、僕は満を持して問いかける。


「皇太子殿下は皇女殿下の事を以前病弱だったと仰られていましたが、実際にはどの様な症状だったのですか?」

「ああ、そのことですか…いえ、それなら問題ありませんわ」


 何を聞かれると思っていたんだろう?

 何だか残念そうな仕草をした皇女殿下は、ツラツラとその時の事を話してくれた。

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