貴方が恋と愛を見つけるまで26
ユイシアは、屋敷の庭の一角で絵を描いていた。
庭に咲く花々と、そこに立つ妻の絵だ。
繊細なタッチで筆を動かす。
すると愛おしい声がした。
「ユイシアー!!わたくし、ちょっと野菜屋のおじいさんの所に行ってくるわ!」
庭先で、スノーがこちらに向かって言う。
確か野菜屋の彼は、ここ数日風邪で寝込んでいると噂で聞いていた。
風の魔法を使い、治そうと思っているのだろう。
「僕も行く。」
筆を置き椅子から立ち上がる。
「でも、絵を描いているのではなくて?」
「スノーと一緒にいたいんだ。」
そう言うと、スノーは頬を赤らめたあと、その腕の中で眠る存在に声をかけた。
「貴方のお父様は、貴方に似て甘えんぼさんね。」
微笑む顔が、まるで優しく光輝く春の太陽の様だ。
スノーから我が子を受け取る。
あたたかい。
「おじいさんの風邪が良くなるといいわ。」
「スノーの治癒魔法ならすぐに治るよ。」
「ふふふっ、ありがとう。ユイシア。」
両の手を胸の前で組み、照れながら嬉しそうに笑う。
幸せがここにある。
「スノー、僕は君の王子様になれたかな?」
「あら、何を言っているの?」
そうしてスノーはまた、あたたかく微笑むと。
「お話の中の王子様は皆の物だけれど、ユイシア、貴方はわたくしだけの王子様だわ。」
「そう...。」
嬉しくて涙が出そうになるのを我慢する。
「じゃあ、行きましょうか。」
「うん。」
そうして共に歩き出した。
スノーとならどこまでも行く。
絶対にはなれない。
僕の全てはあの時から、君のものだから。
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!
本編はここでラストです。
余談ですが...
ほのぼのな感じですが、
スノーをちゃんと手に入れたのに尚且つ絵まで描いているという
ユイシアの執着が実はあります。
これから書きますが、ユイシアサイドのお話を一話か前後編で書きたいと思います。
それで本当にラストです。
お付き合いいただけると嬉しいです!




