貴方が恋と愛を見つけるまで25
王立学園を卒業後、スノーとユイシアは二人で領地に戻った。
国王陛下とメイ様は残念そうだったが、二人を祝福をしてくれた。
「いつでも会いに来てくれ。」と国王陛下は優しく言ってくれた。
メイ様も「これでお別れではなくて、何かあった時は二人で私を助けてね。」と、
微笑んだ。
勿論その時は駆けつけるつもりだ。
侍女のチェリーはついて行きたいと言ってくれたが、王都に恋人がいるのを知っていたので、
気持ちだけ受け取った。
その代わり手紙を書くことを約束した。
王都に来た時のように、カイン達がフィンデガルド領まで護衛としてついてきてくれて、
安心して帰る事が出来た。
一週間という時間はかかったが、
懐かしい町並みが見えた時は、思わず涙がこぼれ、
ユイシアにハンカチで優しく拭いて貰った。
王都に行く時は、不安でいっぱいだったが、今回は帰れるという希望に溢れていた。
やはり生まれ育った町が、スノーは一番大好きなのだ。
お父様に会うのは緊張をしたが、じっとわたくしを見た後、「よく戻ってきてくれた。」と言い、
微かにほほ笑んでくれた。
それだけで十分だった。
ユイシアを見るなり。
「領地の、領民のために働くという事を、みっちりと叩き込んでやる。」
そう宣言をするお父様は、やる気にあふれていた。
「よろしくお願いします、お義父さん。」
「父と呼ぶのはまだ早い!」
真面目な表情のユイシアに、すかさず否定をするお父様。
そんな二人のやり取りが面白くて笑ってしまった。
お父様の前でこんな風に笑う事が出来るのは初めてかもしれない。
色々な準備があるからとわたくし達の結婚式は半年後に行うことにした。
ユイシアの勉強の合間に、息抜きに町へ行き、皆と再会を喜んだ。
「ついにスノーお嬢様を射止めたんかい!」とユイシアが所々で言われていて驚いた。
町の人達は皆、ユイシアの気持ちに気付いていたらしい。
簡素な薄紅色のワンピースを着て、ポシェットを肩にかけて出かける準備は今日も万端だ。
ユイシアとともに、町を遊びまわるのではなく、デートするのは照れてしまうが、
手を繋ぎ、歩くのは楽しい。
この町には騎士団があるが、ユイシアが時間があればまた訓練に参加をしたいと言い、
スノーも是非見学がしたいと思った。
剣術をする姿も素敵なのだ。
パン屋さんのお菓子、特にマドレーヌを食べた時には懐かしさにスノーはまた泣いてしまった。
王宮でのマドレーヌも、ほろほろとした口どけが上品で美味しかったが、
パン屋さんの香ばしい素朴な味が本当に美味しかった。
「スノーお嬢様、一段と綺麗になったねぇ。」と言われ、嬉しかった。
ユイシアが「スノーは昔から一番綺麗です。」と真剣な表情で言うので、
思わずむせてしまった。
パン屋さんは、「あらやだ!のろけられちゃったよ。」と笑っていた。
野菜屋さんのおじいさんも元気そうで安心した。
「あの坊主が未来の領主様か。感慨深いねぇ。」と嬉しそうにしていた。
「スノーお嬢様を幸せにするんだぞ。」という言葉には、
「当然です。」とユイシアが間髪入れずに答えていて、スノーは頬が真っ赤になった。
町の人達はユイシアの身分も知っていると思うのに、いつもと変わらなかった。
それが嬉しかった。
半年後。
ドレスは、お父様が大切にとっておいてくれた亡きお母様が着たものを着る事が出来た。
真っ白なドレスだったため「お前には何か色を入れた方が似合うだろう。」とお父様が助言をしてくれて、
服屋のおじさんとおばさんにドレスの胸元と裾に見事な花の刺繍をしてもらい、
綺麗なレース編みの付いたヴェールを被り、
花屋さんが作ってくれた可愛らしい花束を持った。
ユイシアの瞳の色の紫色の花も入っていて素敵だった。
ユイシアの正装も、いつもとは違うグレーの色合いのスーツが大人びていて、
とても格好良かった。
胸元にはスノーの瞳の色の花が飾ってあり、お互いの色がある事に照れてしまった。
スノーのたっての希望で、町の皆を招待することができた。
屋敷の庭を解放してのパーティーでは、たくさんの町民に来てもらえた。
材料はもちろん、野菜屋さんのおじいさんや、お肉屋さんから購入をしたものだ。
皆にお腹いっぱい食べてもらった。
はしゃぐ子供たちが可愛らしかった。
先に結婚をしていたアリュリルも、夫と共に来てくれて式にもパーティーにも参加をしてくれた。
「お二人とも綺麗すぎますっ!」と泣きながら褒めてくれて、嬉しかった。
アリュリルは今でも一番の親友だ。
手紙のやり取りはしているが、会えて本当に良かった。
エルフの姫君であるルミナ様がお忍びで来てくれたのには驚いた。
「私からの祝福を。」と、緑色と金色に光る優しい癒しの風を領内に起こし、祝ってくれた。
領民たちは「体調が良くなった!」、「怪我が治った!」と喜んでいた。
スノーは世界で一番幸せだと思った。




