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貴方が恋と愛を見つけるまで13

いつも読んでくださり、本当にありがとうございます!

自分のキャラ達ながら今回とても楽しく書けました。

ユイシア頑張れー!と応援していました。

いちゃいちゃラブラブは良いですね。

王宮へ来てからは、スノーは領地でいた時と同じく家庭教師と礼儀作法の先生が付き、

ユイシアも、驚く事に従者の頃の様にスノーの朝の支度をしつつも、

日中は勉強と剣術の練習で忙しい日々を送っていた。




今日は、ユイシアと二人で城下へお忍びのお出かけだった。

国王陛下とメイ様が、遊びに行ってくると良いと一日ふたりの時間をあけてくれたのだ。



スノーは淡い橙色のワンピースに、赤いポシェットを肩にかけた。

そうするとまるで領地で遊んでいた頃の様で、嬉しくて微笑んだ。

迎えに来たユイシアも、従者の時のような簡素なシャツとズボンの姿に、何か懐かしい思いがして、

ちょっとだけ涙が出そうになった。



しかし、二人の存在はもう知られている。

城下と言えど、名前は広がっているだろう。

そのため、メイ様の提案で、名前を少し変えることにした。

今日のスノーの名前は「ノア」。

ユイシアは、「イアン」だ。



お忍びのお出かけに、わくわくしてしまう。

正面からではなく、使用人達が使う扉からふたりは城下へと出ていった。




初めて来たときも、とても華やかな街並みだったが、今日は一段と凄い。

どうしてだろうと思っていると、お店のおじさんに「王太子殿下がお帰りになったのを歓迎しているのさ。」と教えてくれた。

離れないようにユイシアと手を繋ぎ、色々なお店を見る。



街角で華麗に舞う踊り子には、拍手と少しのお金を。

小さな子供の花売りから一輪買うと、ユイシアに髪の毛につけてもらった。

「お姉ちゃん、かわいい!」という言葉にありがとうと心から礼を言う。



あの日、馬車から見た噴水は、目の前で見ると魔法でなのか、元々水が綺麗なのか、

澄んでいてとても素敵だった。



スノーは行ってみたい場所があった。

本屋である。

領地でも、本屋はあったが、新しい本は中々無く残念だったのだ。



お店の中に入ると、たくさんの本に圧倒された。

ふらりとよろけたスノーを、優しくユイシアが支える。



「凄いわ...!こんなにもたくさん本があるなんて!!」



感激しつつ店内を回ると、「今おすすめ」という言葉が書かれた紙が貼っている場所が合った。

一冊手に取ってみる。



こっ、これは!!!



それはスノーが、ずっと読んでみたかった「ロマンス小説」と呼ばれるものだった。

とてもしっかりとした作りで、表紙には綺麗な細工があり、

恋物語が書かれているのだ。



作りが良い分、値段も高く、領地にいた頃のスノーには手が届かなかった。

「どうしよう...。」と悩んでいると、今日のためにと国王からお金を貰っていて、

本くらい何冊でも買えると言われ、感謝の気持ちでいっぱいになった。



近くにいた、本棚を整理をしている女性にどれが良いかを聞いてみる。

すると。

今はやっているのは、「無理やり婚約者をあてがらわれた王子様が真実の愛に出会い、

婚約者との婚約を破棄し、幸せに暮らすお話」だと、興奮した様子で薦められた。

女性も、その物語が大好きなのだろう。



スノーもとても気になった。

どんな素敵な物語だろうと、わくわくする。



一冊、女性が特に薦める本を手に取ると、ユイシアにその分のお金を貰い購入をした。

読むのが楽しみだった。



大切に本を抱えて本屋を出る。

するとユイシアが「バース」と言うと、男性が近づいてきてびっくりした。

王宮へ届けるように指示をすると、本を受け取ってバースと呼ばれた男性は去っていった。



「一応、護衛がついてるんだ。ごめん。」



そうユイシアが申し訳が無さそうに言うが、王太子殿下なのだ。

当然だと思った。



「いいえ、ユ...イアンを守ってくれているのだもの。嬉しいわ。」



笑顔で返すと、次のお店を探すべく手を繋ぎ歩き始めた。

「二人きりが良かった。」という小さな呟きは、人々の声でスノーには聞こえなかった。




色々な物を見て歩いていると、お腹がすいてきた。

丁度その時、ユイシアが「そろそろ昼食にしないか。」と言ってくれたので、

大きく頷くと、くすりと笑われた。

何を食べようかと悩みつつ、手を繋ぐユイシアについて行く。

すると、美味しそうな甘い匂いのする、お店の前に着いた。



「とてもいい香りがするわ!」

「ここにする?」



その言葉に、また大きく頷くと店内に入っていった。



人気のお店なのか、店内はたくさんの人達でいっぱいだった。



「席、空いているかしら?」

「大丈夫。」



そうは言うが心配で店内を見渡すと、丁度一人の男性が席を立ちお会計をしたので、

カップを下げて布巾でテーブルを拭いた女性に案内をしてもらった。



「良かったわ!」

「うん。」



スノーが嬉しそうに席に向かう。

それを少し離れてユイシアが追う。

その男性はユイシアに向かってひとつ礼をすると、外へと出ていった。



椅子に腰かけると、意外と足が疲れていたらしい、「ふーっ。」と息がもれた。

女性が「デートかい?」と言いながら、二つグラスを置く。

その言葉に頬を赤くするスノーに微笑みかけると。



「注文が決まったら、呼んどくれ。」

「ありがとう。」



女性は忙しく店内を歩きだした。

メニューを見ると、名前と共に簡単に説明が書いてある。

どれも美味しそうだが、食べ過ぎるのも...と悩んでいるとユイシアが「パンケーキがおすすめだって。」と、

スノーが見ていたのと違う、もう一つのものを差し出した。

こちらは食事というよりは、デザートが中心の様だ。

そこに「当店のおすすめ」という言葉と共に、パンケーキの名前が書いてあった。



普通のものから、苺を乗せたもの、マーマレードを乗せたものなどが書いてあったが、

女性を呼ぶと、スノーは普通のパンケーキを頼んだ。

蜂蜜が大好きなのだ。

ユイシアはサンドイッチ。

そして飲み物は二人とも紅茶にした。



コーヒーというのも気になったが、ユイシアが「苦いよ。」と言ったので止めておいた。





それにしても、店内は賑わっている。

人気のお店だとしても凄い盛り上がりようだ。

何故かと思い女性に聞いてみると。



「街では王太子殿下のお帰りで、お祭り騒ぎさ。」



そう、朗らかに笑った。



「皆、喜んでいるのね。」

「ああそうさ。」



その言葉に嬉しくなる。



「ただねぇ。どうにも噂が色々あって...。」

「噂、ですか?」



急に顔をしかめた女性に、スノーは不思議に思った。



「ああ。王太子殿下を助けた伯爵令嬢が無理やり婚約を迫ったって話があると思えば、

優しい少女が助けて両想いになったって、どっちを信じたらいいのやら。」



そう言うと、女性は大きく溜息をつく。

スノーはその言葉に飲んでいたお水を吹き出しそうになった。



「こ、婚約を迫った!?」



思わず声が裏返ってしまう。



「そうさ。何でも、性悪の悪女らしいよ。」

「......。」

「ノア。」



気にするなとでも言うような、ユイシアの真剣な声がする。

女性は次のお客さんに呼ばれ「ゆっくりしておくれ。」と言うとテーブルから去っていった。



「どなたの話なのかしら...?」

「......。」



ユイシアは、何とも言えない表情をすると「さあ?」とひとこと言った。

うーん...とスノーが考えているうちに、目の前にはパンケーキとサンドイッチが運ばれてきた。






「パンケーキ美味しいわ!とてもふわふわしていて、こんな素敵なのは食べたことが無いわ。」



いつも食べているパンケーキは、どちらかと言えば固めの生地だったが、

このお店のものは、ふわふわで口に入れるとしゅわりととけるようだった。



「ここのパンケーキが好きで、姉さんもよく来るらしいよ。」

「まあ、このお店を教えてくれたのはメ...お姉さんなの?」



どこが良いか聞いて調べたというユイシアの言葉に、嬉しくて、もっとパンケーキが美味しく感じた。



ユイシアにも食べてほしいが、もう一つフォークが無い。

スノーは一口サイズに切るとユイシアの口元にパンケーキを差し出した。



「すごく美味しいから、ぜひ食べて!」

「............。」



ユイシアは何故か少し考えていたが、意を決したような表情をすると口に入れた。

そうして「幸せの味がする。」と真顔で言うので、

確かにそうね!とスノーは微笑んだ。

ふわふわで優しくて、幸せな気持ちになるパンケーキだ。



ユイシアのサンドイッチも一口貰ったが、しゃきしゃきの新鮮な野菜と、ハム、

ぬられた何かのクリームがとても美味しかった。





店主のおじさんが「やったな!兄ちゃん。」と優しく二人を見つめていることには気が付かなかった。






お腹もいっぱいになり、紅茶で一息ついてからお店を出ると、手を繋ぎゆっくりと歩き出した。

すると離れたところで走っていた少年が、転ぶのが見えた。

わんわんと泣いているが、誰も気にしない。



「ユ、ユイ...イアン!」

「どうしたの?」

「男の子が、怪我をしたわ!助けなくては。」



そう言ってユイシアの手を引っ張ると、少年の元まで早足で近づいて行った。



「うわぁぁぁん!!」

「だっ、大丈夫!?」



少年の前に膝をつき、怪我の様子を見ると大きく皮膚が傷ついていた。

血も出ている。

スノーは風の魔法を使ってみたが、やわらかい風が吹いただけで何もできなかった。

どうしてわたくしは魔法がもっと使えないの...!

涙が出そうになる。



すると、ユイシアが少年を抱えると「こっちに。」と街角の中道へと歩いて行った。

ゆっくりと少年をおろすと、膝に向けて何かを呟き手をかざす。

すると、黄色に光る粒が出て、少年の傷を癒していく。

土魔法の治癒だわ!

スノーは驚く。



「キラキラしてきれい!」



泣いていた少年が笑顔になり、はしゃぐように言う。



「ユイシア、凄いわ!」



土の魔法を初めてみたスノーは、その大地のようなあたたかい光に感激した。

つい名前を言ってしまったが辺りには他の人はいなかったので、

ここならいつも通りで良いとユイシアは言ってくれた。



「ありがとう!おにいちゃん、おねえちゃん。」



傷が治った少年はそう言ってまた大通りへと駆けていった。



「また転ばないようにね!」



心配で声をかけると、「うん!」と元気な返事が聞こえた。



「ありがとう、ユイシア。あなたは凄いわ。」

「スノーが言ったから助けただけだよ。」



そうは言うが、やはりユイシアは凄い。

風、水、そして土魔法まで使った。

気になり、ユイシアに問う。



「火魔法も使えるの?」



すると、詠唱の後手のひらに小さな炎を出した。



「す、すごい...。」



あまりの驚きに、両の手を口元に持って行く。

王族は全属性の魔法が使えるとは知っていたが、本当だったとは。



「魔法より、僕は剣の方が良い。」



その言葉は、男の子という感じがして、思わず微笑みが出た。



「そうね。ユイシアは剣術も強いものね。」



領地にいた時、騎士団学校のトーナメント大会で優勝をするほどなのだ。

たくさんの努力をしたに違いない。



「あの時はスノーが...。いや。」

「?」



何かを言いかけたが、ユイシアは黙ってしまった。



あの時は、優勝をしなければ、スノーの従者から外されるところだったのだ。

負けるわけがない。



膝をついたので、少し汚れたスノーのスカートを優しくはたくと、ユイシアは「次に行こう。」と、

手を出したので、スノーはしっかりと細い指で掴んだ。



ぽつりとスノーは言う。



「わたくしも...治癒魔法が上手になりたいわ。」



スノーは、努力をしてはいるのだが魔法に関してはあまり能力がない。

でも、いつかは誰かを癒せる力が欲しいのだ。



「スノーは頑張ってる。治癒魔法だって使えるようになるよ。」

「ユイシア...。」



スノーは笑顔を浮かべると、二人で大通りへと戻っていった。

人々の喜びの雑踏が素敵だった。






一日色々あったが、とても楽しかった。



「イアン、また来たいわ。」

「いつでも来れる。ノア。」



じゃあ次はあのお店...と、微笑みながら両の手を顔の前で重ねて楽しそうに考えるスノーを、

ユイシアが優しく見つめていた。




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