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貴方が恋と愛を見つけるまで10

カーテンが開かれ、眩しい光が部屋にさす。

朝が来たのかと目を開けようとするが、疲れが取れないのか体が重い。

だが気合を入れて起き上がる。



「おはよう。」

「ふわぁ...。おはようユイシア。」



んーと両腕を上に伸ばすと、少し目が覚めた。

ユイシアはいつもの騎士団学校のシャツではなく、お洒落な刺繍がされた物を着ていて、

不思議には思ったが、今日はそういう気分なのねと思った。



右手で目をこするスノーを椅子まで手を引いてくれる。

何だかテーブルもいつもより光り輝いている気がするが、わたくしったら寝ぼけているのかもと、

気にしない事にした。





ユイシアが紅茶を用意する。

カップに注がれると、とても良い香りが広がった。



「砂糖は?」

「1個お願い。今日はミルクも入れてほしいわ。」



起きたばかりなのに何だか凄く疲れているので、ミルクティーが飲みたいと思った。

しっかりと眠ったのに、不思議ね。

そうしてユイシアとたわいも無い事を話しながら紅茶を飲む。



飲み終わり、ふうっと一息ついた。

ユイシアが入れてくれるお茶はいつも美味しい。

従者になった最初の頃は、少し味が薄かったわねと思い出し、くすくすと笑った。



「髪の毛を整えよう。」



そう言うと、ユイシアがスノーの髪の毛に触れる。

優しく櫛が通る感覚が心地いい。



「今日は、このまま下ろしておきたいわ。」

「だったら、頭の上でリボンでも結ぼう。」



そう言うと、たくさんの装飾品が入っている箱から、シュルリと濃い紫のリボンを手にして、

スノーの髪の毛に結んだ。

手鏡を渡され、確認をする。



「いつ見ても、ユイシアの瞳の色みたいね。」



自分の白い髪の毛に、とても綺麗な紫のリボンが咲いている。

嬉しくて微笑むと、ユイシアの口元が優しく上がり笑っているのが分かった。

このリボンは、ユイシアがお給金をわざわざ貯めてスノーにプレゼントをしてくれたものだ。

生地もとても良く、高かったに違いない。

9歳の時に貰ってから、ずっと大切にしている。



「ドレスは薄紫が良いと思うよ。」



薄紫のドレスなんて、持っていたかしら?

ふと思う。

スノーは自分のクローゼットの中を思い出し、疑問に思った。

どちらかというと澄んだ青空のような色や、緑が多い。

赤や薄紅色にも憧れるが、何となく自分の髪色には似合わない気がした。



「朝食は皆で取ろうって言われた。」



皆?

いつも食事は一人なのに。

皆とは...。



そう思った途端、一気に昨日の事がスノーの頭の中で思い出される。

王都に来た事。

華やかな街。

華やかな人々。

国王にお会いしたこと。

そして...。



「なっ、なっ!!」

「スノー?」



王太子殿下になんてことを!!

突然椅子から立ち上がり、ユイシアに向けて頭を下げようとすると、肩を掴まれ止められた。



「言った筈だ、スノー。僕は君の従者だって。」

「......そうだけれど。」



これは許される事ではない。

この国の王太子殿下に、従者のすることをさせるなど。

どうしよう。

スノーは困惑した。







昨日は国王と会った後、混乱するスノーをそのままに王宮の部屋へと案内をされた。



「疲れているだろう。部屋で休むと良い。」



国王は優しく微笑むと、使用人を呼んだ。



まず案内をされたのはユイシアの部屋、

そしてその隣がスノーに与えられた部屋だった。

そこでも「隣!?」と、混乱は止まらなかった。



先程、聞き違いでなければ「好き。」とスノーに言った相手が、隣室にいるのだと思うと、

変に意識をしてしまい、頬の赤みは取れなかった。

ユイシアなのに、男性として意識をしてしまう...。

両の手で熱い頬を包むと、「落ち着きなさい、スノー!」と念じ、

ふるふると左右に首を振った。



その姿をユイシアはじっと見ていた。




スノーに仕える事になったメイドは、チェリーといい、名前の響きの様に、

とても可愛らしかった。

そしてメイド長でもあるジェシカにも自己紹介をされ、

「よ、よろしくお願いします...。」としか言えなかった。



入用の物があれば何でも用意をすると言われて、困った。

確かに王宮で暮らすことになるとは思わなかったので、洋服も何もかも足りない。

だが、甘えていいのだろうか。

スノーはまた混乱をした。




その夜は部屋で食事をとり、入浴を済ませ、仕度をされたベッドに入ると、

やはり疲れていたのだろう。

これからを考えなくてはと思っていたことも忘れ、すぐに眠ってしまった。





そして朝。

いつものユイシアである。



昨日のうちにユイシアとどう接するか考えようと思っていたのに!

後悔をしても、もう遅い。

しかもいつも通り従者の真似事をさせてしまった。

スノーは頭を抱える。




表情を硬くするスノーに、尚もユイシアは言った。



「これは僕の特権なんだから。とらないで。」








「ちょっと、あの中にどうやって入るの?」

「邪魔できないけど...。」



部屋の扉を少し開けて、メイドたちが見ているのにスノーが気が付くのは、

あと数分後。




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