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第7話 冒険者ギルド



「ありがとうございました」


「この剣をいただいてもいいんですか」


「父が使っていたものですが、私には無用のものです。それにどこでも売っている安物です。使っていただければ幸いです」


 私はベルルの祖父の剣をもらった。


「少ないですが、餞別です」


 村長がお金をくれた。


「これからどうされるんですか」


「冒険者ギルドがある町に行きたいのですが、どの町に行ったらいいでしょうか」


「それなら、ここから4日ほど旅した先にあるコレッタの町がおすすめです。冒険者ギルドがあります」


「ありがとうございます」


「旅の間の食料としてこれをお持ち下さい」


 ベルルの母が、()でた野菜と私が征伐したモンスターの肉を干し肉にしたものを差し出した。


「ただ、お荷物になりますが……」


 私は間接魔法で魔法の荷物袋を開いた。


 そこに、ベルルの母からもらった食料を入れた。


 魔法の収納場所を閉じると手ぶらになった。


「おおお、今のは」


「魔法です」


「本当に驚かされます」


「では行きます」


「お元気で」


「お姉ちゃん、本当に行くの」


 ベルルが私にしがみつくと、べそをかいた。


「うん、ベルルも元気でね」


 私はコレッタの町に向けて歩き始めた。


 振り返るとベルルと村人たちがいつまでも手を振って見送ってくれた。




 村人たちの視界から出ると、私は、敏速、足腰強化の間接魔法をかけた。


 その状態で歩くと、飛ぶように歩くことができた。


 村長が4日はかかるだろうと言っていた道のりを私は1日で踏破してしまった。


 日が暮れる前にコレッタの町に着いた。


 とりあえず宿に泊まった。


 夕食は宿の部屋で、ベルルの母からもらったゆで野菜と干し肉を食べることにした。


 魔法を使って加速移動をすると体力も使い、お腹が空いた。


 私は5人分くらいの量を食べてしまった。


 この調子では、村でもらった餞別と食料は一週間くらいで使い切ってしまうだろう。


 早く冒険者ギルドで登録をして、依頼をこなして、稼がないといけないと思った。




 翌朝、冒険者ギルトに行き登録した。


 もちろん偽名を使った。


 初めての登録なので一番下のランクであるFランクからになる。


 ジョブは剣士にした。


 間接魔法は一般的ではないのでマジックキャスターになって他の冒険者とパーティを組むのは現実的ではない。


 さっそく依頼をこなして稼ごうと思ったが、そもそもFランクの冒険者が単独でこなせるクエストは少ない。あっても薬草摘みとかで報酬が安い。


 それに女一人のソロで、強い魔物を倒したりしたら噂になる。


 王都にその噂が届き、私ではないかと疑われたら大変だ。


 依頼の掲示板の前でそんなことを考えて佇んでいたら声をかけられた。


「よお、初めて見る顔だな」


「さっき冒険者登録をしたばかりだ」


「ジョブは?」


「剣士だ」


 その若い男は私を上から下までジロジロみた。


「マジかよ」


「ああ」


「女の冒険者は普通はマジックキャスターだ。たまに物理攻撃をするアタッカージョブのやつもいるが、体がデカくて男みたいにごつい奴ばかりだ。おまえ、本当にその華奢な体で剣士なのか」


「そうだ」


「それにその剣、そんな安物で冒険者をやるつもりか」


「ああ」


「悪いことは言わない。今からでも、登録を取り消した方がいい」


「余計なお世話だ」


「ジョー何をしている。朝からナンパしているのか?」


「違うよ。この世間知らずの嬢ちゃんに助言をしていただけだよ」


「助言って何だ」


「みろよ、こんな華奢な体で剣士だと。最初のミッションで命を落とすだけだ。だから止めていた」


「剣の腕には自信があるのか」


 大柄の男が訊ねた。


「ああ」


「クラスは?」


「Sだ」

 

「その年で、剣術技能が最高峰ランクだと?」


「父は剣術師範だ。子供の頃から英才教育を受けていた」


「だが、その剣は何だ。おもちゃか」


「これしか持っていない」


「もう、二人ともそんな風に若い女の子をからかうのはよしなさい!」


 女性が出てきて言った。


「レイラは、よけいな口出しはするな」


「あら、オルド、私にそんな口をきいて、あとでどうなるか分かっているんでしょうね」


 オルドと呼ばれた大柄な男は顔色を変えた。


「すまん、すまん、別にそういうつもりじゃない」


「なら、その子、見習いとしてパーティに入れてあげたら」


「レイラ、それはない」


「なんでだめなの。新人の面倒をみるのもベテランの仕事じゃないの」


「俺達の取り分が減る」


「でも、次の仕事では、もう一人欲しいって言っていたでしょ」


「だがこんな駆け出しじゃあ……」


「でも、S級の剣士よ」


「ジョーはどうだ」


「俺は彼女が入っても構わない」


「うーむ」


「見習いに支払う分、自分の分け前が減るのがそんなに嫌なの」


 レイラがあおるように言った。 


「俺はそんな器の小さい人間じゃない」


「なら、決まりでいいじゃない」


「仕方ないな。おい、お前名前はなんていう」


「アズキよ」


 さっき登録の時に使った偽名を名乗った。


「アズキか、よろしくな。俺はこのパーティのリーダのオルドだ。俺達は今日、これから依頼をこなしに行く。一緒に来るか?」


「いいわ」


「俺は、ジョーだ。剣士だ」


「私はレイラ。マジックキャスターよ。攻撃魔法も回復魔法もどちらも使うわ」


「ちなみに俺は格闘家だ。近接戦を得意としている」


 オルドが言った。


「さっそくだけど、クエストの内容を聞かせて」


「町の周囲に出没するゴブリン退治だ」


「迎撃?」


「いや、アジトに行って、連中を退治する」


「あなた達のパーテイのランクは?」


「Dだ」


 私は嫌な予感がした。


 冒険者のパーティのランクはSが最高位で、以下Aから順に下がり、最下位がFランクだ。


 彼らはさっきベテランだと称していたが、長年やっていてDランクなら、たいしたことない。


 町まで来る弱い魔物を追い払う程度なら支障はないが、敵地潜入の先制攻撃となると話は別だ。


 魔物の生息地に行き、相手のアジトを攻めた場合、何が出てくるか分からない。


 想定してない強力な魔物がいる可能性もある。


「私達だけで大丈夫ですか」


「初心者だから不安になるのは分かる」


 私が敵地攻撃と聞いて怖気づいたと思ったようだ。


 だが、要人警護の職にいた私は常に想定外の敵の攻撃を考え、そういう事態があっても対処できるようにする習慣がついていた。


 オルドが大丈夫だと言っているのは敵地にいる魔物がゴブリンだけでしかも想定内の数の場合のことだ。


 その想定を超えた事態が発生したらDランクでは手に負えない。


 だが、冒険者というのは、こういうおおざっぱなものなのかもしれない。


 きっと、私が考えすぎなのだろう。


「まあ、俺達も実は、ゴブリンの数が想定より多かった場合に備えて、もう少しパーティの人数を増やすことを考えていたところだった。アズキがSランク剣士なら即戦力になるから助かる」


 私は冒険者ギルトを見回した。


 彼らを除くと、もう1グループしかいない。


 しかも、そのパーティは老人がまざっていて覇気に乏しかった。


 辺境の田舎の町はこんなものなのだろう。


 いずれにせよパーティに合流できるような若者のソロの冒険者はこの場には私しかいなかった。


 だから、彼らも別に親切心から私を仲間に加えてくれたわけではない。


「分かったわ」


 私は、彼らとゴブリン退治に行くことにした。




読んでくださりありがとうございます!

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