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第5話 火葬



 パチパチという弾けるような音がする。


 体が熱い。


 私は飛び起きた。


 炎の中にいた。


 体に火がついたまま、地面を転がった。


 火を手で叩き、地面に体をこすりつけて火を消した。


「ひひひ、ひええええええ、し、死体が動いている」


 私を指さして男が腰を抜かしていた。


 あたりを見渡す。


 その男しかいない。


 まずは、自分の体のチェックだ。


 身体強化、火炎耐性の間接魔法をかけていた。


 その効果がまだ続いているようだった。


 体に火傷はない。


 火を消すと、ただ黒く汚れているだけだ。


 痛みもない。


 手足を動かした。


 可動範囲にも異常はない。


 私は震えている男のところに行った。


「ひえええええ、お助けを!」


「脱げ!」


「ええええ?」


「いいから服を脱げ」


 服は燃えてしまった。


 黒焦げで裸だ。


 この格好では逃げられない。


 とりあえずこの場に服は、この男が着ているものしかない。


 男は脱ぎ始めた。


「よこせ、だが下着はいらん」


 私はズボンと上着を着た。


 だぶだぶだった。


 だが無いよりはマシだった。


 燃えているもう一つの死体を見た。


 ゲネスだ。


 私は燃え盛る火に向かい手を合わせた。


 そして走り出した。


「敏捷増加、身体強化!」


 間接魔法で走る速度を上げた。


 そうして、私は倒れるまで走った。


 何時間走ったのか、どこまで走ったのかも覚えていない。


 体力が、そして魔力が尽きるまで走った。





 目が覚めるとベッドに寝かされていた。


(まさか、追手の刑務官に捕まり、刑務所に戻されたのか)


 私は体を起こした。


 大きな窓があり、こざっぱりとした部屋だった。


 少なくとも独房ではない。


 ドアが開いた。


「あら、目が覚めたんですか」


「ここは、どこだ」


「コビ村です」


 聞いたことが無い村だった。


「私は……」


「森で倒れているところを見つけたんで、家に連れて来ました」


「じゃあ、あなたが見つけてくれたの」


 少女がうなずいた。


「ありがとう」


「大丈夫ですか」


「ああ」


「体が真っ黒で、まるで焚き火の中にいたみたいでしたよ」


 私は思わず自分の体をみた。


 清潔なパジャマを着ていて、からだも汚れていない。


「私が拭いて、きれいにしました。それからお医者様にも診てもらいました。お医者様は疲れているだけだから心配ないだろうと言われていました」


「そんなにしてもらって、すまない」


「いいんですよ。困った時は助け合わないと」


「私の名前はアンだ」


「私はベルルです」


「ベルル、ありがとう」


「いいえ」


「ゆっくり休んで下さい」


「ああ」


 私は再び横になると眠りに落ちた。




 数日後、すっかり元気を取り戻した私はベルルの家の食卓で、食事をご馳走になっていた。


「それで、どういうわけで、あんなところに一人でいたんですか」


 ベルルの父が訊いた。


「あなた、まだ回復したばかりなのに、そんなことを訊いては失礼よ」


「いや、だが、理由は聞いておかないと。別に疑うわけじゃないが、村に害をなすようなことがあってはならないからな」


 どう説明したらいいのか迷った。


 素直に脱獄したと言えば、それを知っていてかくまった村の人も罪に問われるし、私も逮捕されるだろう。


「君が着ていた服は、あの刑務所の看守の服じゃないか」


「はい」


「君は看守だったのか」


「そうです」


 成り行きで答えた。


「何があった」


「他の看守に襲われそうになったんです」


 これは事実だった。


「あああ、そんな……」


 善良そうな夫婦は驚いたようだ。


「君のような若くて綺麗な女性が、あんな監獄に勤めていたら、早晩、そういうことになるとは思わなかったのかい」


「私が愚かでした」


 夫婦は顔を見合わせた。


「そういうことなら、君をしばらくかくまうことにしよう。ただ、この村には長くいないでほしい」


「もちろん分かっています」


 そうして食事は終わった。



「アン、裏山に木の実を採りに行きましょう」


「いいわよ」


 私はカゴを持って、ベルルと山に出かけた。


 ベルルは妹ようだった。


 すっかり私になついていた。



 裏山から帰ってくると、ベルルの両親がまるで葬式の時のような顔で迎えた。


 嫌な予感がした。


 王女が遣わした追手がこの村に来て、私をかくまったということで、この村に焼き討ちをしかけるとか言っているのだろうか。


「どうしたんです」


「それが……」


 ベルルの母が「わああっ」と泣き出した。


「何があったんです」


「ウチにこれが来た」


 ベルルの父がなにかの紋章のようなものが描かれた紙を差し出した。


 それを見て、ベルルが蒼白になった。


「うそ」


「ねぇ、どうしたの」


 ベルルは怯えていた。


 震えが止まらないようで、口をきけない様子だった。


「アンさん、ベルルが生贄(いけにえ)になることに決まったんです」


 ベルルの父が絞り出すような声で言った。


「生贄?」


「この村の先には魔物が住む森があります。その森の主は毎年、生贄として若い乙女を求めます。もし、その要求に応じないと村は魔物に滅ぼされます。毎年、未婚の乙女をクジで生贄に選ぶのですが、今年はベルルがその生贄になってしまったのです」


「じゃあその紋様の紙は?」


「そうです、生贄に選ばれたという通知がこの紋様の紙なのです」


 ベルルの父は悲痛な顔をした。


「いやあああああああああああああああああ」


 ベルルが泣き崩れた。




読んでくださりありがとうございます!

読者の皆様に、大切なお願いがあります。


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そう思っていただけましたら、


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