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第4話 脱獄



「よし、いいぞ」


 ゲネスがほめた。


 私はさらに身体強化、敏速をかけた。


「完璧だ」


 ゲネスは私の技術の上達とMPの増加に驚いていた。


 午前中は間接魔法をゲネスに教えてもらい、午後からは脱獄のためのトンネル堀りをした。


 午後の時間は教わった間接魔法を実地で試した。


 私は自分で自分に身体強化、両手鋼鉄化、速度上昇などの間接魔法をかけて両手を土木の作業の道具にしてトンネルを掘り進んだ。


 毎日何時間も作業したことが、大量の経験値をもたらしたようで、私のMPも魔法のレベルも上がっていった。


 ゲネスは次第に魔法を私に教えるだけになり、トンネル掘りの作業は私が担当した。


「もうすぐだな」


 ゲネスが満足そうに言った。


「ええ、あと数日で塀の外までトンネルが貫通する予定よ」


「そうすれば、ここでの生活も終わりだ」


「でも、ゲネス、どうしてゲネスはそんなに王女に嫌われたの?」


「若気のいたりじゃよ」


(若気って150歳じゃない)


 私はそう思ったが、エルフは人間と違い長生きだ。


 400歳とか500歳など普通だ。


 150歳は、まだ若造なのだろう。


「つい、教師らしく、あの王女のネジ曲がった性格をなんとかなおそうとしたのじゃよ。それが間違いだった」


「そうだったんですか」


「ワシが王女にセクハラをしたと言いがかりをつけられて、投獄されたのじゃ」


「間接魔法を使って投獄される前に逃げることはでなかったんですか」


「アントンじゃよ。あいつはこの国には珍しい間接魔法の使い手でもあり、ワシがエルフとのハーフだと知ると、間接魔法を教えろとうるさかった。ワシは知らないと断ったが、あいつはワシが間接魔法を使えると思っていた。だから、ワシが間接魔法を使って逃亡できないように、ワシに眠り薬を飲ませた。そして目が覚めたらこの刑務所にいた」


「そうだったんですか」


「変に青臭い正義感に燃えたり、油断したワシが馬鹿じゃったよ」


 油断してあの連中にはめらたのは私も一緒だ。

 

 ゲネスは私にとって、戦友のような存在になっていた。


「じゃあ、また掘ってくるね」


「頼むぞ」


 それから2時間ほどトンネルを掘った。


 だが、壁に当たった。


 おそらく刑務所の外壁だ。


 思っていたよりも厚く、しかも基礎が深かった。


 基礎の下まで掘り下げるか、壁を破壊するしかない。


 壁の破壊は脱獄する前に、異常を知られてしまうかもしれない。


 だが、基礎の下まで掘り下げて、さらに倒壊しないようなトンネルを作るには時間がかかる。


 あと数日で外に出ることができる距離まで掘り進んだが、最後の刑務所の壁を超えるには、半月くらいかかるかもしれない。


 私はその報告をするために、ゲネスの独房に戻った。


 ゲネスは寝ていた。


「ゲネス、起きて。大変なんだから」


 返事はなかった。


「刑務所の塀が思ったよりも手強いの。どうしたらいい」


 ゲネスはピクリとも動かない。


「どうしたの」


 私はゲネスの毛布をはいだ。


 何か変だった。


 息をしていない。


 私はあわてて、脈を取った。


 脈もない。


 ゲネスは死んでいた。


「そんな、ゲネス、あと、少しで自由になれるのよ。ゲネス」


 私はゲネスを揺さぶった。


 だが、人形のようだった。


 人の声がした。


(しまった。巡回の時間ね)


 毎日数回、看守が様子を見に来る。


 うっかりその時間が来てしまったのだ。


 私は掘った穴のなかに隠れて石のタイルでふたをした。


「巡回の時間だ。7番、返事をしろ」


 返事をすればそれで確認は終わり、看守は戻る。


 だが、ゲイルはもう返事をすることはできない。


「7番! 返事は!」


「おい、おかしいぞ」


「中を確認するか」


「そうだな」


「注意して入れ」


「大丈夫だ。痩せこけたジジイ、ひとりだ」


 扉を解錠する音がした。


 数人の刑務官の足音がした。


「なんだ」


「大変だ、死んでいるぞ」


「よりによって今日死ぬなんて」


「ああ、今晩はお楽しみがあるというのに」


「まったくだ」


「それにしても所長自らが、あの女囚人を俺達でいたぶり殺すことを命じるなんてな」


「多分、もっと上からの命令だろう」


「もっと上って?」


「知らない方がいいぞ」


「でもあのアンという囚人はそそられるな」


「このところ、急に元気になって活き活きしているからな」


「だからやるんだろ」


「ああ、そうだ。アンが元気だという報告を聞いて、天がお怒りになったそうだ」


「まったく、そんな大事な夜にこのクソジジイは何死んでいるんだよ。死ぬなら別の日にすればいいのに」


「でもやるんだろ、今日」


「当たり前だ。この死体を始末したら、お楽しみだぞ」


「ああ、たまんねぇ。よだれが出てくるよ」


「きたねぇな、お前、俺にそのよだれをつけるなよ」


(あいつらは何を言っているの? アンという囚人を今晩やるとか……。私のこと?)


 今聞いた話が頭の中をぐるぐると回った。


(まさか、私がここで元気にしているという報告を聞いて、天が、刑務官に私を陵辱(りょうじょく)して、殺せと命じたということなの?)


 だが、今の話をまとめるとそうとしか考えられなかった。


 天が誰かは、聞かなくても分かる。


 王女だ。


 私は恐怖と怒りで震えてきた。


(でも、どうしたらいいの。トンネルの完成まではまだ半月はかかる。身体強化魔法を自分にかけて私を殺しに来た連中と素手で闘う?)


 だが、この刑務所は極悪人を収容しており、武装した刑務官が大勢いる。


 逃げ場のないこの高い塀の中で、いくら間接魔法で、攻撃力や防御力をアップしても、一人で素手で闘うのは無謀だ。


「こいつを火葬にしないとな」


「火葬はどこでやる」


「森だ。この中で燃やすと臭いからな」


「そうだな」


 その時、私は閃いた。


 間接魔法には、一時的に仮死状態にするものがある。


 本来の使い方は、相手を殺したのと同じ状態にして、制圧するためだ。


 だが、それを自分にかけてみたらどうだろう。


 連中は、きっと私が死んだと思うだろう。


 そしてゲネスと一緒に森に死体を運び燃やすだろう。


 その時に蘇生して、逃げればいい。


 だが、魔法で仮死状態になってから蘇生するタイミングが分からない。


 魔法の効果は一定時間で切れる。


 その時間が問題だ。


 早すぎれば連中にバレてしまい、捕まる。


 遅すぎると、体が本当に燃やされてしまって死んでしまう。


 ゲネスの独房から人の気配がなくなると、私は自分の独房に帰った。


 私は迷った。


 だが他に方法はなかった。


 これは賭けだった。


 失敗すれば死が待っている。


 まず、自分に、身体強化、火炎耐性の魔法をかけた。


 そして横たわると仮死状態の間接魔法をかけた。


 そして、意識を失った。







読んでくださりありがとうございます!

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