第12話 メタルピエロとゲイル
「もうすぐよ。注意して」
ハルが剣を鞘から抜き放つと両手持ちにし、少し身をかかがめて言った。
「ポーションの効き目はどうかしら」
バイオレットが少し不安そうに言った。
私は偽のポーションを全員に飲ませると同時に、精神錯乱魔法を無効とする防御魔法を全員にかけていた。
私も剣を抜き、ハルの後についてゆこうとした。
すると服の袖を引かれた。
見るとキャンディだった。
赤い顔をしていた。
「アラン、ごめん」
「なんのことだ」
「わがままばかり言って」
「そんなことない」
「助けてもらったのに、かえって迷惑かけて」
「気にするな」
「だから……。死なないで」
「平気だ。今度は前の時とは違う」
私はハルの後をついて前進した。
後衛にバイオレットとキャンディが残る。
祠の前にゆくと、金属音がした。
「来るぞ」
私はパーティの全員に防御力アップのバフをかけた。
「メタルソルジャーよ」
その叫びとともに、銀色に光る人形のようなものが数体踊り出てきた。
両手に剣を持っている。
二刀流だ。
(加速、身体強化、敏捷)
素早く間接魔法で全ての能力値を上げ、私は飛び出した。
金属音が響く。
剣は当たるが、メタルなので斬れない。
私は剣に火炎を付与した。
メタルソルジャーが斬りかかってくる。
私はそれを火炎の剣ではらった。
メタルソルジャーの刀が2つになる。
「はああああああ」
踏み込んで、メタルソルジャーを斬る。
今度は刃が入る。
「えい!!」
メタルソルジャーを真っ二つに斬った。
振り向いてバイオレットの魔法を強化した。
バイオレットの火炎魔法がこれまでに無い威力でメタルソルジャーを焼き尽くす。
そこにハルが斬り込み、火炎でもろくなったメタルソルジャーを斬り裂いてゆく。
ハルの背中にメタルソルジャーの刀があたる。
だが、すかさずキャンディが回復魔法で治す。
私はメタルソルジャーの残党は彼女たちに任せて、奥に進んだ。
祠には、錆びた鉄の色をした道化の人形がぶら下がるようにして立っていた。
「ここは通さぬ」
道化人形が変な踊りをする。
これが精神撹乱魔法なのだろうか。
だが、私には何も起きない。
「何故だ。何故お前たちには効かない」
私はそれに答えずに、火炎効果を最大にした剣で、メタルピエロに一太刀を浴びせた。
糸が切れた人形のように、メタルピエロが崩れ落ちた。
「バイオレット! 電撃魔法を浴びせて」
バイオレットが後ろから雷撃の魔法で攻撃する。
電撃ショックで再び立ち上がったメタルピエロを私は剣で切り刻む。
メタルピエロは焼けた石に水滴を垂らしたようなジューという音をして消滅した。
「やった! 番人を倒した」
私達は歓声を上げた。
そして祠にゆき、そこに生えているメタル百合とよばれる銀色に光っているように見える花をつけたユリ科の植物の葉と根を採取した。
「これで町長のお嬢さんの難病が治るのね」
「そうよ」
ハルはメタル百合を採取したことよりも、メタルピエロとメタルソルジャーを全滅させたことに感慨深げだった。
バイオレットが、ハルの肩にポンと手を置いた。
「やったわね。仇を討ったわね」
「ええ」
ハルは少し涙ぐんでいた。
急にハルが咳き込んだ。
「どうしたの」
バイオレットも咳をしながら喉をおさえた。
「早く回復魔法を!」
だが、キャンディの姿が見えない。
私は何が起きているのか分かっていた。
二人に弱めの毒耐性魔法をかけると、毒に苦しんでいるような演技をしながら、目指す相手のところに行った。
茂みの向こうに相手はいた。
キャンディに当身をくらわせて気を失わせて、毒をまいた張本人だ。
「ほお、あの毒に耐えているのか」
私はわざとよろめいて近づく。
「無駄だ。薬草はもらっておく。それからこの女は俺が楽しんでから殺す。お前たちはメタルピエロやメタルハンターと相打ちで死んだことにする。そして、お前たちの死体と薬草を俺が見つけたことにする」
仮面をつけた男がそう言って笑った。
この男が解毒魔法を使えるキャンディをあらかじめ倒しておいて、私達3人に毒をまいたのだ。
「そろそろいいかな」
男が仮面をはずした。
ゲイルの顔が出てきた。思った通りだった。
「もう、あと数歩も歩けまい」
ゲイルが笑った。
私は自分の体にかけていた偽装の間接魔法を解いた。
「久しぶりね」
アンの顔と声で言った。
ゲイルは何が起きたのか分からない様子だった。
「あら、私の顔を忘れたの」
「ア、アン、貴様、何故ここにいる?」
「あら、それは私の言葉よ。どうして王女の護衛剣士のゲイルさんがこんな辺境の町にいるのかしらね」
「そ、それは……」
「性懲りもなく騎士の婚約者に手をつけたのかしら、それとも隊長の奥方を寝取ったのかしら」
「おのれ」
「そうそうお金もごまかして懐に入れたのよね」
「死ね」
ゲイルが剣を抜いて斬りつけて来た。
私は、よけた。
ゲイルの剣が空をきる。
「貴様!」
ゲイルが全力で剣で突いてきた。
昔の私だったらかわせなかったかもしれない。
ゲイルは人間のクズだが、剣の腕だけは一流で、生まれながらに高い身体能力に恵まれていた。
だが、今の私には敵ではない。
子供と遊んでいるようなものだった。
私は跳躍した。
私の姿はゲイルの前から消えた。
降下すると手刀で首筋を後ろから打った。
ゲイルは剣を放り出すようにして倒れた。
「あら、あら、歯ごたえがないわね。弱すぎるんじゃない」
ゲイルは痛みにのたうちまわっていた。
「お遊びはこれまでにして、いろいろと訊かないとね」
「俺は何も言わないぞ」
エルフは長年人間に騙されてきた。
騙されて娘を奪われ、森を奪われ、いいようにされてきた。
腹黒い人間の嘘を素直に信じたからだ。
そこでエルフは独自の間接魔法を発明した。
人間の嘘を暴く魔法だ。
尋問に対して真実を言わざるを得なくなる。
私はゲイルにその魔法をかけた。
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