表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/14

第10話 メタルの町


「かんぱあい」


 キャンディが白い修道服につつまれた大きな乳房を突き出すようにして、ジョッキを持ち上げた。


「みんな、おつかれさま」


 たくましい腕をした女剣士のハルが言った。


「アランがメンバーになったら、急にパーティの実力が上がった気がするわ」


 紫色のローブを着た女魔道士のバイオレットがジョッキに口をつけながら言った。


「そんなことありません」


 私は慌てて否定した。


「でも、アランが横にいると、なんだか力が強くなったような気がして、動きもよくなるんだよな」


 赤のレザーアーマを着たハルが不思議そうに言った。


 私は、メタルの産地で有名な辺境の町にいた。


 男装してアランと名乗り、彼女たちの冒険者パーティに入れてもらっていた。


 そして、私は、メンバーに内緒でバフをかけた。


 その効果で、簡単に魔物を倒し、効率よく稼いでいた。


 今日は、まとまった報酬が入ったのでその打ち上げで飲んでいるところだった。


「アランがいれば、あのクエストもこなせるんじゃない」


 キャンデイが無邪気に言った。


 ハルとバイオレットは急に黙りこんだ。


 なんだか気まずい雰囲気だ。


「どんなクエストなんだい?」


 私はみんなの様子を見て、興味がわき、訊いてみた。


「一番高い報酬のクエストよ。鉱山の北側にある祠の横に生えている『メタル百合』という植物の根と葉を採ってくるのが依頼よ」


「薬草採取ならば、簡単だろう」


「その祠は、メタルピエロという番人がいて、メタル百合を採取しようとする者を邪魔するの。それにメタルピエロはメタルソルジャーという剣を使う魔物も使役しているの。だから、誰も近づけないのよ」


「でも、どうしてそんな高値がついているんだ?」


「町長の娘が病気にかかっていて、その薬草でないと治せないのよ」


「町長はそんなに金を持っているのか?」


 ここは人口もそう多くはない、辺境の町だった。町長といっても給料はたかが知れている。高い報奨金など出せるはずがない。


「この町はメタル鉱山で有名だけど、その鉱山を所有しているのは町長のロンブーゾなの。だから町長というのは単なる肩書にすぎなくてロンブーゾは大富豪なのよ」


「もう、その話はよせ!」


 ハルが怒ったように言った。


「ごめんなさい」


 キャンデイがうつむいた。


 ハルは席を立った。


「帰るの?」


 心配そうにキャンディが訊いた。


「いや。トイレだ」


 私はバイオレットの方をむいた。


「何か、まずいことでもあったのか」


「あなたが、このパーティに入る前は、前衛の攻撃手として、アーサーという剣士がいたの。そして、アーサーはハルの恋人だったの。4人でその薬草採取に行き、アーサーはメタルソルジャーにやられて死んだのよ」


「そうだったのか。でもメタルソルジャーはそんなに強いのか」


「メタルの魔物だから表面が固くて防御力はあるわ。でも問題はメタルピエロなの」


「メタルピエロが強いのか」


「強いというより、不思議な魔法を使うの」


「不思議というと?」


「相手の精神を撹乱させる魔法をかけてくるの。精神が撹乱して戦えなくなり、メタルハンターに殺られてしまうのよ」


「そうか……」


(間接魔法ね。でもそれならこちらも間接魔法で魔法防御をして効果を遮断して、その上で火炎系や雷撃系の魔法を強化して、切り込めばメタル系魔物をやっつけられるわ)


 ハルが戻ってきた。


 私はみんなに言った。


「なあ、みんな、聞いてほしい。実は私は各地を旅していて精神撹乱魔法を使う魔物とも闘ったことがある。その魔物を仕留めて、肝を採った。ギルドでそれを精製してポーションにしてもらった。それを飲むと精神撹乱魔法は効かない。そのポーションはまだ4本残っている。それを使って、その薬草を採りにいかないか」


「そのポーションの効き目は本当なのか」


「本当だ。それにもし、メタルピエロの精神撹乱魔法に効かないようであれば、すぐに撤退すればいいだけのことだ」


 彼女たちは互いの顔を見合わせた。


 ハルが口を開いた。


「そのポーションは売れば高価なものじゃないのか。それを私達が使ってもいいのか」


「精神撹乱魔法を使う魔物はめったにいない。需要が少ないから買い手はすくない。みんなに使ってもらえた方が、僕は嬉しい」


「よし。やるか」


 ハルが絞り出すように言った


「アーサーの敵討よ」


 バイオレットが言った。


「今度こそ、やっつけてやる!」


 キャンディが叫んだ。


「ほお、ずいぶんと威勢のいいことだな」


 後ろから声がした。


 私はその声を聞いて氷ついた。


 ゆっくりと振り返って声の主を確認した。


 そこにいたのはゲイルだった。


 かっての王女の護衛剣士で私をはめた相手だ。


(なんで、ゲイルがここにいるの?)


 私は動揺した。


 ゲイルはキャンディの横に立った。


「相変わらず、いいおっぱいをしているじゃないか」


 舐めるような視線でキャンディを見た。


 キャンディはうつむいた。


「隊長、何の御用ですか」


「お前らが男日照りで困っているようだから、相手をしてやろうと思って来てやったんだよ」


「間に合っています」


「ハル、俺はお前のような大味な女はタイプじゃない。誘っているのはキャンディだ」


 そう言うとゲイルはキャンディの服の胸元に手を入れて乳を揉もうとした。


「イャあ」


「やめろ!」


 思わず私は席を立って叫んだ。


 ゲイルが私を見た。


「見かけない顔だな。お前も女か」


 私はドキッとした。


(まさか、ゲイルに魔法で男装していることがバレたのか)


「男のくせに華奢な体をしていて、そんな体格で冒険者をしているのか」


 ゲイルが言った。


 魔法で外見や外観は変えているが、骨格までは変更できない。ゲイルは私を見破ったわけではないようだった。


「キャンディから手を離せ」


「治安部隊の隊長様にその言い方はなんだ」


「彼女は私の恋人だ」


 とっさに私はそう言い放った。治安部隊の隊長に逆らうと国家反逆罪で逮捕されかねない。だが、恋人が公衆の場で侮辱された場合は別だ。相手が治安部隊の隊長であろうが、男は、自分の恋人を守れないようでは名誉を失うので、反抗しても正当な行為とみなされて、国家反逆罪の嫌疑を受けることはない。


「そうなのか」


 ゲイルはキャンディに訊いた。


「私はアランのものよ。アラン助けて!」


 キャンディがゲイルを振り切り私の元に駆けてきた。


 こういう場合の解決方法は、男同士の決闘と慣習で決まっていた。


「決闘だ!」


「そうだ決闘だ!」


 酒場にいた男たちが口々に叫んだ。


 ゲイルは蛇のような目で私を睨んでいた。


「キャンディ、後ろに下がって」


 私は半身になり、自然体で構えた。





【作者からのお願い】


 作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら


 下記の★★★★★評価・ブックマークをよろしくお願いいたします。


 作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ