スウェルディ王国の動乱。陰謀渦巻くクーデター
前回のあらすじ
疑いを晴らし、実力を知ってもらうため、決闘を行ったが……?
決闘の日から5日たった夜。それは突然の出来事だった。
ふと、城下町を見ると、火の手が上がっていた。
「火事がこんな同時多数に?」
「現在火消し隊と城の兵士さんたちで消火活動しています。でも、こんなに火事が広まってるのは見たことないですね……」
廊下を歩いて、菜月がやってきた。
彼女はおれたちよりもかなり前からこの王都に滞在しているので、火事は一度見たことがあるのだろう。
「……不吉な感じが、しなく無いか?」
「私も薄々感じてました……皆を集めておきましょう」
「何事もないと、いいけど……」
「大丈夫だ。こういうときの感は外れるんだよ、俺。」
「まあ、兵士さんたちが慣れていないだけでしょうし!何も問題ないですよ!」
その30分後。大きな音を立てて、戸が開かれた。
「この国を蝕む国賊共が!無様にここで死ね!」
「……フラグを立ててしまったか……」
やれやれ、と思いながら抜刀する。
どれぐらいぶっ倒したら追いつけますかね……
「この程度だったか……意外にも数だけの軍勢だったな。」
迫りくる軍勢を突破し、フィンのもとへ進む。菜月たちには先に行ってもらい、既に合流しているはずだ。
「タツマ!ご無事で何よりです。」
「そっちも大丈夫そうだな。」
「カーナとナツキ殿たちが助けてくれたおかげです!
…………でも、父上は……凶刃に倒れたと……」
あの優しそうな王様が、か……
「これを引き起こしたのは第二王子か?」
「はい。兄上を支持する貴族たちが計画したものかと。私もまた狙われるでしょう。」
「脱出経路はあるか?」
「それは、こちらに」
答えたのは、カーナだ。
「いざというときの為、城から脱出する隠し通路です。ここからならば、安全に逃げられると思います。」
隠し通路ならば、奴等にバレることもないだろう。まあ念の為にバレにくくするためにちょっと仕掛けておくが。
「よし、ここまで逃げれば安全だろ。」
「しかし、一体何をしたのですか?」
「ああ、窓ガラス割ってそこから出たようにしておいた。ロープもたらしておいた。」
「それっぽく演出してそこに意識を向けさせておく方法というわけですね。」
「そのとおり。おかげなのかは全く分からんが、奴らに気づかれることなくここまで逃げてこれた。」
「私達も安全に脱出できましたし、このまま、距離を離しましょう!」
「そうはさせませぬよ、王太子殿下。いや、フィン王子」
そう言って現れたのは、なんか偉そうな鎧つけたおっさんと兵士たち、そして第二王子アルフェルスだった。
「貴様ら……なぜここにいる?」
「あなたは死ななくてはならない。この国の未来のために!」
ああうん、こいつ、話通じないタイプだ。さっさとぶちのめそう。
「何が国の未来ですか?!そんな犠牲で成り立つような未来、続くとは到底思えません!」
「だまれ!この私に向かってその口……小娘ごときが、許さんぞ!」
「『この私に』とか言ってますが、この人だれですか?」
おおう、煽るなあこいつ。なんでそんなに煽り力高いんだ?
「皆殺しにしろ!!」
「じゃあやるか。スゥ………
できるもんなら、やってみろよ。三下貴族!」
「【烈風槍】!」
まず俺が、強烈な風を纏う槍で薙ぎ払う。
「【紅蓮の衝撃】!」
次に菜月が真紅に染まった特大剣を振り下ろして衝撃波を放つ。
「【火竜の灼熱】!」
さらにメルが竜が吐き出すような炎で焼き焦がす。
これでほとんど仕留めた。
「な………」
「さあどうした?威勢の良さもこれで削がれたか?」
「まだだ。まだ終わってなどおらぬ!必ずここで貴様らをー」
「もういいですわ。」
「なに?アクエル、今なんと……?」
「もういいって言ったんですの。みんなここで終わりなのですから。」
その時、アクエルと呼ばれる女がーアルフェルスの喉を突き刺した。いつの間にか手にした大きな槍で。
「貴様!我らが王太子を、よくも!」
「【大津波】」
突如として大きな波が全員を襲った。
「【オールパリィ】!」
なんと津波をパリィで跳ね返した。おかげで助かった。
だが、第二王子たちは飲み込まれてしまった。
「わたしは4天使の一人、アクエル。
わたしに溺れて逝きなさい!」
「フラムエルの同僚か。本気で行くぞ、こいつらは強い。」
「分かりました!全力で行きます!」
「ふふふ、私と戦おうとしても無駄よ。【溺愛水流】!」
「うお!?」
いきなりアクエルの上から水が降ってきた。
「わたしに見とれて、戦えないでしょう?」
「【クリティカルエッジ】!」
「ほあ?!危ないじゃない!というか、なんで効かないわけ?!」
そんなの決まりきったこと。たった1つのシンプルな答え。
「まあ美人だとは思ったが、メルのほうが可愛い!」
「こんな状況でノロケ!?」
「…………⁄(⁄ ⁄•⁄-⁄•⁄ ⁄)⁄」
「真っ赤に!メルさんの顔が真っ赤に!」
「い、言わないでよ………」
「で、でも一人、虜にできたみたいね!」
「ナツキ殿!」
しまった、菜月がやつにとっ捕まったか……
「やってしまいなさい!」
「全力で止める!」
特大剣を真っ向から受け止める。
「うおおおお…………こん、にゃ、ろう!!」
ものすごく重たかったが、力ずくで押しのける。
すぐさま【金灼の宝剣】を発動し畳みかけてきた。
こちらは【血飲み肉裂き】で弾く。
「……僕は」
「ごふっ!」
やはりパワーの差がきつかった。何度目かの競り合いで、吹き飛ばされてしまった。
「ちくしょう……」
走り寄り、剣を振りかぶる菜月に対し、二刀流で対抗しようとしたその時。
「止めてくださいナツキ!」
フィンが菜月に抱きついた。あまりの急な出来事に、俺は驚いた。
菜月も一瞬、動けなくなっていた。
「……たしかに僕は、皆より強くはないし、気を利かせることなんてできないです。
でも……仲間の暴走を止めることならば、僕にだって出来る!
今です!タツマ殿!」
「……ああ!」
剣を2本とも納刀し、走り出す。その速度のまま跳躍し、青い炎を纏って強烈な蹴りを打ち出す!
「【フラムエル・ストライク】!」
菜月を止めてくれていたおかげで命中し、フィンと菜月は吹き飛んだ。
「……ナツキ!」
「う………うう、う………」
「今こんな事を言ったところで、どうにかなるなんて思わない。でも、今度は伝えてみせる!
ナツキ!僕はあの日、あなたと初めて話せたあのときに、もうすでに恋していたんです!あなたの強さと、優しさと、今なお努力を重ねる向上心に!
あのとき話してくれた、あなたの叶えたい夢。僕が出来る全てで、あなたを支えます!」
……男だった。いや、違う。漢だった。
この土壇場で、自分の気持ちを伝えられる奴なんてそうそういない。
「……お、王太子様……?」
「ナツキ!目が覚めたんですね、良かった……!」
「聞こえ、ました。王太子様の想いが。
私のこと、こんなに思ってくれてて……自分のことすら顧みずに救けてくれて。本当にかっこいいです……!」
「………!そ、そう言われると、恥ずかしいけど嬉しいですね……」
真っ直ぐな想いが、あいつをもとに戻したんだな。
さて。後は、アクエルをどうにかするだけか。
「す………
素晴らしいわ!自分の隠していた想いを、はっきりと言葉にして伝えるなんて!
やはりフィルネの言っていたとおりだわ!」




