この世の地獄に相棒がいるとは、俺には予想できなかった。
「……?何だここ?」
目を開けたら、ボロ小屋の中にいた。何を言ってるのか俺にも分からん。
というか、これってダンジョンですか?
「まさか……【奪魂の地下遺跡】?」
「ん?」
女神ぽい声がしたので振り返ったが、後悔した。
幽霊みたいのが、俺の後ろで浮いていた。
「どわぁ!?」「きゃあ?!」
まじで心臓に悪い……いきなりエンカウントかと思ったぜ……
「すいません……女神としての体はカストロフが消したみたいです……」
「いや、俺も急に叫んで悪かった。すまねぇ……」
しっかし厄介だ。ほとんど力が使えなくなっているっぽいので、戦力にはならない。魔物に見つからないのが救いか。
「何かないかなぁ……」
俺はすぐさまボロ小屋の中を探し回った。武器があれば、ワンチャン生き残れる可能性がある。そう思って探した俺に、天使は微笑んだようだ。
あったのだ、剣が。それも結構強そうなのが。
しかも何やら使えそうな書物を多く見つけた。どうやら剣を使うスキルの動きが書いてあるようで、しっかり読めばこのスキルを覚えることが出来るだろう。魔法のことも書いてある本もいくつか見つけた。
さて、それではどんな剣なのかしかと拝見させてもらおー
「待って下さい!その剣を抜いてはだめです!」
女神に止められてしまった。なぜだ、この剣しか使えそうにないなのに。
「それは【奪魂の呪剣】………剣を抜いたもののエネルギーを奪い、使用者を死に至らしめる呪われた武器です。あなたの体力値では、死んでしまいます!」
まさかの呪いの武器だとは……しかしエネルギーを吸う代わりにかなり高性能な武器になるのではないだろうか。しかしエネルギーか。確かに俺の体力値は高くないな。まじで死ぬだろう。
いや普通に困った。武器は使えないみたいだし、これ以外なかったし。
………いやまてよ?
(………剣を抜いたもののエネルギーを奪い、使用者を死に至らしめる呪われた武器です)
体力を吸うんじゃない?いやでも死ぬんだったら多分体力は吸うはず。
とすると、他に吸うものがある?それでエネルギーというには………
「………あの、なんで剣を抜こうとしてるんですか?」
その通り、止められたにもかかわらず俺は剣を抜こうとしていた。しかしこれには理由がある。
「……まず、この剣以外、武器は見つからなかった。この剣を使う以外に戦うすべがない
あと、多分死なないと思うんだ、俺。」
「いや、いくら異世界の人であろうとも死んだらまず終わりですよ?まああなた達には、なぜか指定された場所のみに復活できる【ポインタ復活】がありましたが」
「そういう意味じゃない。たしかに、俺の体力値は10。この魔剣を抜くのは困難だが、それは体力値のみを言った場合だ。
もし、魔力を変わりに呪剣に吸われたとしたら?俺であってもこの剣を振れるはずだ」
そう言って、剣を抜きにかかる。
「!!」
体の中から、何かを吸われる感覚。だが、それにしては辛さがあまり感じられない。
そのまま、鞘から剣を抜いていく。
「ほ、本当に魔力が吸われているというのですか……!」
そして剣を完全に抜いたとき、そのときは訪れた。
「……どうやら、賭けに勝ったみたいだ」
『【特効剣】……それが私唯一の技。この地獄を生き抜く力となろう。
我が主、藤芝達魔に、再び太陽の祝福があらんことを……』
剣から声が聞こえた、様な気がした。
それにしても、【特効剣】とは、かなり強そうな技のようだ。
「……達魔さん、どうやら特効剣は相手の弱点属性を纏って戦うことの出来る技のようです
それだけではなく、この剣自体の攻撃値も高い模様です」
なるほど、かなり強いなそれ。相手がどんな魔物か分からなくても、だいたい弱点がつければなんとかなるから、戦闘ではかなり有利になるな。
属性が通りにくくても、物理が高ければなんとかなりそうか。
取り敢えずどれぐらいここの敵に有効なのか、試し切りも兼ねてモンスターと戦うことにした。あのゴブリン4体がいいかもな。
ありがたいことに、遮蔽物の多い場所だったので、息を潜めながら近づく。二体は寝ていて、一体は離れたところで見張っている。最後の一体は何か食っている模様。
まずは寝ている二体のやつだ。心臓めがけて剣で貫く。近くには、やりがそれぞれ一本ずつおいてあった。こいつらが使うはずの武器だろう。まだ他の二体には見つかっていない。
見張りのやつの背中から貫く。弓を持っているやつなので気づかれる前に仕留めたかったんだ。ここで最後の一体に気づかれた。
走って寄ってきたゴブリンは、俺めがけ手に持つ棍棒を振りかぶる。
だが、俺はそれが来るだろうと予測していた。あえて向こうが構えるまで待っていたのだ。すぐさまその棍棒を避け、
「【特効剣】!」
特効剣を発動し、斜めに斬りつける。ゴブリンもよろめいたので、トドメのもう一撃を叩き込む。
「あのハイゴブリンをいともたやすく撃破するなんて……」
「まあ一対一だったからな?複数を相手にすると分からんから」
その通り、たまたま今回は不意打ちが決まったが、できなかったことを考えると怖い。
「あ、スキル習得と能力値アップができますね」
「もしかして、レベルアップしたのか?俺」
「はい、それではレベルアップについてお話しますね。
レベルアップすると、1レベルアップに付き1つのスキル習得ができるスキルポイントの獲得と、能力値をどれか1上げることができます。」
「なるほど。ならえーっと、ステータスを出して、ああこれだな。スキル習得ってあるし。」
「今回は12レベルアップですので、かなりスキルが手に入りそうですね」
なるほど。探索に役立つようなスキルや、初級とも言えるような魔法があるのか。んで一番下は……
「なにこれ?」
【強大で、巨大な器】
必要スキルポイント∶6
今あるスキルポイントの半分か。まあいいだろう、どんなスキルが手に入るかきになるし。
「いいんですか?一気に使っても」
「好奇心っていうのも、時には大事だと思うわけよ」
【強大で、巨大な器】を入手する。すると3つのスキルに派生した。
【天賦の才能(剣)】
【天賦の才能(魔法)】
【天賦の才能(魔獣)】
「な、言ったとおりだろ?」
「すごいですね、これ……可能性の塊ですよ」
すぐに効果の現れそうな剣と魔獣を取っておく。魔術の方は、また今度ってことで。杖とか持ってないし。
剣の方は【二速斬り】と【魔力剣】に、魔獣の方は【ビーストライブ】に派生し、どれも習得した。なぜだかビーストライブは2ポイント必要だったが。
「魔力にふるのはやめよう。意味がない。」
「それはそうですね」
能力値振りを続けて行う。
「隠密に6、生命力に3、筋力に3ということにしよう」
「なぜ隠密に?」
「集団に気づかれたらやばいからだよ」
安全第一、ヨシ!
【二速斬り】
素早く2回斬りつける。目で追うことは、ほぼ不可能。
【魔力剣】
魔力を剣に纏わせることにより、攻撃範囲を広くし威力を増大させる。
【ビーストライブ】
使用者の秘めたるものを開放する。
【特効剣】
奪魂の呪剣∶真名『ーーーーーー』につけられた固有の技。敵の弱点属性を瞬時に読み取り、剣にまとう。