女の子を拾った!
いちゃラブ相手と出会います!
ボクは拠点回りの防衛を考えている。まあ当たり前のことだけど、ここは森の中、魔物が出る。防衛が必要だ。
ボクたちの戦力はボク、ライム、非常食。三人しかいない!
狼の群れとか攻めてきたらヤバいし、そう、この地域はやたらゴブリンが多いんだよね。カエデ村だってゴブリンが滅ぼしたんだし。あいつらは大きい群を作ると大きめの町さえ潰すんだよなぁ。
そもそもここは開拓地、魔物のすみかを開拓するから開拓地なんだ。南はかなり大きな魔物の森、エルエーナの森があってその南はマーク魔王国。魔物多そう。ボクが強くならないとね。
ゴブリン退治に有効なパンとか水あるかな? 坂道の入り口でお湯の海を作っておこうか? ボクがここから出なかったらお湯のままにできるはず。できなくても魔力があれば瞬間的に沸かせられる。
デンジャラス放水で永久レベルアップとかできないかな。坂道をあらかじめ浅く掘って道を上がってきたら上から大量放水、とか良さそう。
拠点の周りに堀でも作れたらいいんだけど。労力が足りないなぁ。お風呂やトイレを掘るようにはいかないだろう。
ともかく周辺の地形を把握しておこう。まずは南から。こちらは魔王様の国に近い。魔族と人族は共に女神様を信仰してるので本当は敵じゃないんだけど、新聖書では魔族を否定して戦争を起こすような内容が書かれてる。
そもそもこの新聖書、十六年前に魔族との戦争が終わってからここ、ニターナ王国が十五年ほど前からおそらく再戦目的で広めているけど、あんまりな内容なので北隣のクレモット帝国では悪書として持っているだけで罰が下るしマーク魔王国では一般人でも怒って焼くような現状になっている。
ようするにこの国はおかしい。宰相が特に戦争を促しているそうだ。死ねばいいのに。
まあ今は世界中が寒冷で作物の育ちが悪いらしいのだけど。冷害による不作が続き、飢饉が起こっている。
なので豊かな暖かい土地の南、マーク魔王国を目指して進軍しようとしてる。一般人は商売しようとしているのですごい迷惑だ。
ボクのパンがバカ売れするわけだよね。もっと売って良さそうだ。この拠点を十分に固めたら町にも拠点を作ろうかな。誰か強い人が味方になってくれたらいいけど。腕力とか魔力とか権力とか。
セレナがなんとかしてくれないかな。アイリスはあんまり真面目じゃないけどセレナの言うことは聞く。
セレナはアイリスの家庭教師に信頼されてるらしい。唯一制御できる人だって。ボクの場合逆に暴走するんだよね。なんでだろ?
さて、森の探索もこの辺でいいかな、と、思ったところで変な魔力を感じた。ボクのレベルが上がってるから感知能力も高くなってるのかな?
ん、……人? 木の下でうずくまってる、女の子を見つけた。……死んでないよね?
ボクとライムは様子見していたのだけど非常食はすたすたと彼女に近づいて髪を食べた。お腹空いてるの? やめなさい!
あわてて非常食を止めてたくさんサラダサンドを出してあげる。うっかりハムサラダサンドを出したらなぜかものすごい勢いで食べた。肉食オーケー?! むしろ好み?!
神スキルすげー。
倒れていた女の子は、……羊の巻き角が生えてて髪が黒くて肌が白い。……魔族だ。魔族?!
え、南の森どうやって越えたの?
年齢は十才くらいかな? ボクより頭ひとつは小さい。
んー、気付け薬とかはまだ出せないんだよね。そもそも気絶してる人に水飲ますと肺に入っちゃって危ないし。甘めのリンゴジュースをほんのちょっと舌に乗せてみよう。うつぶせのままアゴを少し引いて口を開けさせて舌に染みるくらいだけ乗せる。
ずいぶん細いけど大人しそうで可愛い子だ。
「ん……。もっと寄越せ」
「気絶してるのに口が悪い?!」
お、どうやら目を覚ましたみたいだ。この子は友達になってくれるかなぁ。ボクも一応はニターナ人だし……。嫌われてないといいけど。
「もっと献上せよ」
「やっぱり口が悪い!」
「これは偉そうというのだ」
「自覚あり?!」
たぶん魔族の貴族なんだろうなぁ。戦争の歴史とかもっと調べておけばよかった。まあ中立な内容の本があるか分からないけど。
町に行って魔導書と一緒に歴史書を探してみよう。
「もっと……」
「あ、ごめん!」
というか急にしおらしくなった? そんなに欲しかったのかな?
コップの予備を出して一杯飲ませてあげよう。食器とかも買わないとねえ。この辺りの支配者はペリテー伯爵。辺境だから伯爵なんだっけ?
ペリテー伯爵は原典派だったはず。そこにある一番近い町のランシンの町なら魔族でも大丈夫だろう。念のためフードを……被せてもふくらみでバレそう。ちなみにもうひとつ接触してるソックセンは新聖書派の上に武闘派。こっちは近づかないでおこ。
ライムはさすがに無理だからお留守番かな。荷物に入れるだけなら良いけどお買い物できないし。テイムモンスターの手続きは面倒で時間がかかるからなぁ。たくさんパンを置いとこう。大きいパンを魔力で出した方が喜ぶかも。どれくらい大きいの作れるか試してみたい。
お留守番を嫌がったら仕方ない、連れていこう。
「あ、名前聞いてなかったね。ボクはルーフィアだよ」
「お主は女子。ボクは変」
「あっはっは、よく言われる。女の子だとバレたら拐われたりするんだ~」
「納得。リンゴ」
「リンゴジュースもっと欲しいの?」
「違う、我が名。母がリンゴ好きだ」
「お母さん食いしん坊?!」
「……祖母との思い出の味らしい。あまり笑うな」
あ、これはやっちゃったやつだ。デリカシー欠けるよねボク。絶対人望スキルなんてないよ。
「ごめんね、笑っちゃって」
「お主の知らぬことだ。気にするな」
「おおらか!!」
できた貴族っていうか、魔族って闘争ばかりしてるのに基本的には温厚だと聞いたことがあるな。なんじゃそりゃってツッコんだっけ。
「魔族は情が深い。故に身内を守り争う。でも知らぬなら罪はない。よって子は守られる」
「魔族特有のルールかな? あ、お腹すかない?」
「空っぽ」
小さいからか偉そうにしても時々子供っぽくなるな。なにをあげよう? リンゴパイは安直だからジャムパンとか?
「好きな食べ物は?」
「肉」
「見た目によらず肉食?!」
ホットドッグとハンバーガー出して様子を見よう。
うわあ、目が星になったよ。ヨダレも滝のようだよ!!
「どっち食べる?」
「両方」
「……けっこう食べる方?」
「スライム並み」
「無尽蔵だよ?!」
リクエストに応えて色々出してみよう。その前に洞窟に帰るか。
「うちすぐそこだから来ない?」
「我が城は遠い故、世話になる」
「ん! そうだ、リンゴは年はいくつ?」
「15」
「同い年だったよ?!」
魔族は成長遅いんだっけ。そういうわけで女の子を拾った。
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非常食食べて良いですから!!