ショック・ザグレート
ついに、決着!
はあ、またソックセン攻めてきたよ。ボクが嫌戦派なこともあって無理攻めしないからソックセンも調子に乗るようだ。ソックセンにしてみれば何より北からは帝国が、東からはニターナが攻めてくる。なら弱気な南を目指そうかとなるのも分かるんだよなあ。でも弱気と弱いは別なんだよねえ。
ただちょっと気になってるんだけど、日常的に戦争してるソックセンの精霊人、精霊兵たちってレベルどうなってるんだろ。ガンガン上がりまくってそうなんだよなあ。強くなってるのは感じる。まあうちの騎士団も強くなってるけどね。
そりゃそうか、ソックセンはボクにレベルで勝てないから敗戦を続けてるんだからレベルアップに励むよねえ。そのためにか帝国とソックセンはマッチポンプで戦争を盛り上げてるらしいってセレナが言ってた。ハスター王子やモアリースト司教もこの意見には賛成らしい。
どうもソックセン伯爵と、帝国西部はかなり昔からブレアたちの買収を受けていたらしい。計画を練って人を実験台にしてるんだ。
民の命をなんだと思ってるんだ。口減らし、研究、略奪、この三点で三者の意見もまとまっているようだ。領民の命など考えてもいない。
しぬがよい。いや、傲慢なボクが死を下賜してやろう。
攻めてくるというソックセンの兵に向き合うため、北の城壁に陣取る。相変わらず周りからは「ルーフィアパン店を休ませた者をゆるすな!」の声が上がっている。兵糧としておごってやろう!
そうしたら「戦争も悪くないのでは」みたいなことを言い出す人がいる。うーん、実際最近の戦争って食べるための戦争って側面が強いんだよなあ。ボクはおごらない方がいいのかな? おごらないで略奪は困る。嫌だ。
騎士たちには略奪するような奴らは食費は給料から引くぞ、と脅しておいた。みんなシャキーンってなったね。みんなバカみたいに食べるからなぁ。一人一日パンを三十個は食べるんだよなぁ。食べすぎでしょ。まあその分訓練はしてるらしいけど。シンクロも効いてるからわりと問題は起こらない。
冒険者とかから選抜した騎士も多いんだけどみんなやる気はあるらしい。とにかくこの世から飢えを無くすってボクの思想に共感してくれる人が多くて、荒くれ者すら結束してるんだとか。……パンのシンクロ能力も噛んでるんだしね。……洗脳ではないよ?
とにかく攻め寄せてくる相手にゴブたちと騎士たちで同時に一当てする。敵はレベルアップした精霊人、容易くはないはずなんだけど、連携がはるかに上手いうちの軍が徹底的に相手を叩きのめす構図になっている。
ゴリラと騎士が合体技っぽく、ゴリラが騎士の脚を掴んで振り回し騎士は大剣で敵を薙ぎ払うみたいな謎の技を繰り出したりしている。騎士も目が回りそうだが技が終わると二人で握手したりしている。納得済みなのかあの技……。なんでそんな仲良いんだよ! いや、良いことだけど! 騎士さんそれで良いの?!
なんか騎士たちの訓練にゴブたちやゴリラ、アルラウネや狼たちも混ざって、かなり複雑な戦闘訓練をしているらしい。あらゆる状況に対処できるルーフィア軍は最強だとメルフィーナ伯爵がほめていたらしい。あ、メルフィーナさんめでたく伯爵になったよ。それで軍事担当してる。さすがに貴族だね、戦争は上手いらしい。我が家では真面目ボケの人だけど。
そしてついに、アイツが出てきた。偽物アレスなんかよりずっと強いやつ。
ザグレートが、敵の兵を割って出てきたんだ。パワーアップしてるのを肌で感じる。
「エリメータさん、露払いをお願い!」
「はい、!」
エリメータさんが相手をするにはザグレートは相性が悪すぎるんだけど、剣神エリメータは弱くない。ザグレートを避けて雑魚敵を蹴散らしていく。
うちには三人剣聖ランクがいる。エリメータさんはもう剣神の域だけど、チェルシーさんとメルフィーナ伯爵も剣聖と言って過言ではない。物理攻撃マニアばっかりだからボクの戦力が霞む気がするけど、ボクは打撃系ってことでこの三人に認められてるんだよねえ。
確かにザグレートみたいなのを相手にする時はボクが一番強い。つまり、ボクが行かなきゃ!
「ザグレートお久しぶり~!」
「ルーフィアー! 会いたかったぞー!」
「そりゃ良かった死ねえ!!」
一刻も早く殺す! 友達を悪魔に変えてたまるものか!!
いがみ合っていたとはいえボクらは地元で同年代で絡むことが多かった。そんな中でボクはアレスのことが気になり始めていた。それだけだけど、ボクらは一応は縄張りの中で共存していたから。苦しめたくないんだ。
「君を、倒す!!」
風の精霊術と風魔法を併用し超ブーストをかける。今のボクの一振は百トンだ!!
腕がへし折れないように強化魔法をかけつつ回復魔法、回復薬、強化薬を併用し、ドーピングしまくって戦う。強くなれば正義!
「おおおおおおおおあおおおおおおおあおおおっらああああああああああああ!!!」
「ごぼっ?!」
「死いいいいいいいいいいぃっねええええええええええ!!」
「ぐぼあ?!」
『な、一撃?!』
「甘いんだよお!!こっちは地獄のようなブラック企業でレベルアップしてきたんだ!! もう、この程度に、負けるかああああああああああああ!!!」
振り抜いた一撃はザグレートを二キロ近くは飛ばしただろうか。殺す気で打った。もう友達を苦しませたくなかったから。
「ゴフッ、ゲハア!」
「なんで起きんだよ……君はなんのために戦ってるんだ……」
「オレは、ルーフィアもセレナもアイリスもすきだ……でも、オレは、バカだから、不細工だから三人に相手にされないから……力しか、無いから」
「死ねええええええええええっ!!」
運命なんて無いって人もいるけど、やっぱり運命はある。神の差配なんかじゃない。神は人の自由を、幸福を求めている。本人から聞いたんだから。そんな世界の中で幸福に恵まれない人もいる。ボクみたいに普通に仕事してるだけで人が集まってくることもある。
それは神様のせい? ボクは人間の認識不足だと思う。
「スキル:パンと水:全てを溶かす水:デンジャラス放水:集中砲水!!」
「な、がぎゅぐ、ぶおああああああああああっっ!?」
「溶けて無くなれえ!!」
ごめんね、ボクにはやっぱりこの選択肢しか出せなかった。君が誰かを殺すより、ボクが君を殺す方がずっといい。
ボクは傲慢だ。また人の命の上に立つ。
君のために生きるよ。
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愛深きゆえにルーフィアは苦しみます。ごろりんこもしたくなりますね。




