悪魔の襲来
胸くその悪い話なので、前書きはこれくらいで。
近くの村での話だ。戦争中、村人たちは家にこもり震えていたらしい。とても胸くその悪い話である。注意して欲しい。
その村を襲うものがあった。黒い肌というより暗い肌、尖った耳に小さな角。小鬼のような見た目だが実力が明らかに違う。
家を焼き、田畑を焼き、人を焼き食らう、……デーモンと呼ばれる生き物だった。正直糞な種族だ。魔族のみんながデーモンを毛嫌いしているのも当然だ。一緒にされたくないだろう。
「ぎゃあっはっはっ! 焼けえ! 食らええ! 醜い子ネズミどもを追い詰め、恐怖と苦痛を与えろお!」
「我らは悪魔! 全てのうすぐらい感情は我らが喜びよぉ!」
悪魔たちは村を焼き、逃げる人間を殺し、焼いて、喰らう。大人も老人も子供も男も女もなくだ。
人ではないのだ。おぞましい生き物たちだった。全ての村人たちはなにが起こっているか理解できない。ただ逃げ惑っていた。
ボクらからすると帝国の差し金だろうとは思った。ちなみに魔族にとっても悪魔は糞ヤロウ扱いだったのでちょっと安心した。容姿が似てるからと同類に扱われる魔族の方が哀れだ。なので、許さぬ。
村ではちょうど幼子が捕らえられていた。
「いい豚がいたぜえ! 丸焼きにして山分けしようぜ!」
「けけけ、うまそうだな!」
「いやああああああっ!! 誰か助けてええええ!!」
「さあ焼こうぜ! そこらの家を潰して燃えるものを集めてきたからな!」
「ひえっへっへ! さあ泣き叫べ!」
「あっづういいいいいいいい!!」
子供を火炙りにして丸焼きにして喰らうつもりらしい。ボクらはその現場にたどり着いた。子供にはすかさずエリクサーをかける。
「……デーモンか、お前らは地獄を知っているのか?」
「ああん? なんだてめえ!」
「俺たちが大悪魔さまに仕えているとしってぶるああああああッ?!」
「ボクが地獄をおごってやろう」
なにか言いかけていた悪魔をメイスのスイング一発で消し飛ばす。
「阿呆が。お前たちが何者でも知らんが、ボクが救世主と呼ばれているのは事実だ。お前らみたいなゴブリン以下のゴミは、駆逐する」
「だ、誰がゴブリン以下のゴミだとおおおお?!」
「消滅せよ」
ボクはメイスの一振りでデーモンをチリに変える。どんどん粉砕する。
雑魚が、人を襲ったことを永遠に後悔させてやろう! ボクが地獄をおごってやろう!
「な、なんだあいつうううう?!」
「ひえ、にげろおおおおお?!」
「お前らは知らんのか? 大魔王からは逃げられんが、救世主からも逃げられんのだ」
「た、たすけ」
「塵になるがよい!」
百メートルほど離れているが一歩で接敵、ワンスイングごとにデーモンの悲鳴が響き塵が撒き散らされていく。
この世を地獄にしにきたらしいな。お前たちをそこに送ってやろう。ボクはなんでもおごっちゃうとっても素敵な、
傲慢だ。
「ぎゃっひいいい」
「た、たすけ」
「逃げろ、逃げるしかない」
「覚えておくといい救世主からは逃げられない」
「対悪魔地雷は設置完了なのだ」
「リンゴ、ご苦労様」
「我も付近に散らばっているゴミは処分しておいた」
「魔王様頼もしすぎる!!」
「ぐぬぬう、やっぱりかあさまばかりルーフィアに愛されているのだ!!」
「リンゴも大好きだが?」
「我も、ルーフィア大好き!!」
「いちゃいちゃしない」
「セレナが怒ったのだ!!」
「セレナって実はいつも怒ってるからね」
憤怒の化身だしなぁ。でも優しいから。人道に反しないと怒らない。七つの大罪って実は善人しかいなくない? 本当に罪なのかなあ。暴食は怪しいけど。
「いあ、いあ!」
「ライムは声が高音なのに邪神じみてるんだよねえ、でも可愛い」
最初の仲間だしそんなことは疑ってないからね。安心してね。ライムよりゴリラの群れの方が怖いし。
まあ、村を襲っていた悪魔たちを仕留めたんだけど、こいつらどこから湧いたんだろう? また胸くそ悪い事案が進んでいるらしかった。
「こいつでいいか。おい。どこから湧いたかしゃべれ。しゃべらないなら構わん。人族の知る限りの拷問を喰らわせてやろう。ボクは親切だからなんでもおごってやるんだ。地獄もしかり」
「えーと、私の知る限りのことを丁寧に説明させていただきますのでお許しください」
「犯罪は許さんが命だけは救われるかもな。話せ」
「話させていただきます! ぺらっぺらぺーらあ!!」
うん、ブレアか。あいつバカなのかな。触れたらいかんところってあるだろ。さすがにオレンジお姉さんも怒るわ。彼女の嫌いな奴に対する対応って無視なんだよなぁ。基本的に手出しはしない方針だから。あれ、ボクらも無視されてたり?
『してないが、参加すると笑い死ぬのでな』
「神様腹筋弱いのかな?」
でも話しかけたら答えてくれるからオレンジお姉さんはいい人だ。神か。神だ。
さて、じゃあ悪魔どもに地獄をおごる作業を継続しないとね。そこにいるやつから。
「おっらああっ!!」
「ひぎぇえええ!!」
「逃げろ、にげ、ぎゃああああ!?」
リンゴの仕掛けた対悪魔地雷すごいな。空を飛んでる悪魔でもホーミングして吹き飛ばしてる。リンゴの裏技か。
そういえばまだリンゴは本気を出したことがないらしいしね。本気出したらどうなるのやら。
「ゴーレムを作ったりもできるのだ」
「土術は応用が多いねえ」
「奥の手は使い勝手が悪いのだ。悪いがこの程度の敵には使えん」
セレナの大魔法の威力を見れば四元素のスキルでそうそう奥の手なんて使えないのは分かるけどね。ボクのパンメテオも使い勝手がすごく悪いし。アイリスがいないと自爆技だもんなあ。
「まあいっか、また悪魔みっけ。おらあっ!!」
「ひぎゃあ?!」
「ルーフィアだ、ルーフィアがきたあ!!」
「なんで悪魔にまで名前知られてるかなあ?!」
ブレアのやつどんな風にボクのこと教えてるんだろう?
ボクただのブラックなパン屋さんなんだよなあ。強いけど。
とにかく悪魔を探しだしては倒してるんだけど、こいつらゴキブリみたいだなあ。見た目もだけど数も。一匹いたら三十匹いる。キモい。
「おっらあ! もういっちょー! そっちも死ねーえ!!」
「ルーフィアが鬼神のようなのだ」
「我もとても及びませぬ」
ダンロもいたの? 君が鬼なんだけど? というかセレナとアイリスとクラリスさんは別地点で悪魔を殺しまくってるらしい。
……味方の戦力を考えたらちょっと可哀想な気がしてきた。まあ子供を焼いて食べようとする奴らなんぞに同情する余地はないが。
「死ねおらあ!!」
「ひいいえええええ!!」
一匹残さず地獄をおごってやる! ボクは毎日数万個もパンを売ってるんだ! やべえ、悪魔のようなブラック!
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そもそもが世界そのものが神様だとすれば、一日一回ごろりんこ!
『見えぬが?』




