セレナ:現状確認
まともな話をしていても悪巧みしてるっぽい人たち。
「とりあえずソックセンを潰さなければいけないんだけど、帝国の動きもおかしい。やっぱり帝国全土が攻めてきてる様子はない」
私はいつものようにモアリースト司教と、今回はハスター殿下も交えて話をしている。はあ、やっぱり戦争とか戦略とか関わらずに生きるのが一番よね。私もルーともっといちゃいちゃしていたいのに。
女の子同士の方が子供とか考えなくて良いからぶっちゃけ楽なのよね。……ルーの場合子種の汁を出せそうだけど。まあルーの子供なら良いか。……すごく危ない考えの気がするわ。やめておこう。
とにかく今は現状の把握よ。ふー。敵が密集していて本当に倒すべきテロリストたちの行方は知れず、南の魔王国なんだけどどうも弱腰の火の四天王バーナンさんは排除されそうになっているらしい。まあ、ルーを見て引かない方がアホだけど。
昔からあることだけどたちの悪い権力者は一揆とか暴動で殺されるのよね。私たちが特に力を入れて排除する必要がないのが魔王国のバーナンよ。
自分たちで殺したい人はいっぱいいるけど逆に言えば直接手を汚す必要もないのよね。政治的に排除すればいい。
正直に言って純粋なブレアみたいな奴の方が難しい。あれは子供みたいなものよね。厄介で倒しづらい。
「判断は難しいですがブレアたちは西の山に逃げ込んでる可能性が高いですな。非道を行えば人は集まりませんが飯を食わせられたら集まります。ランシンが良い例ですな。ルーフィア様がおられるお陰で戦力に困らない。王都からルーフィア様のご飯が忘れられないと、騎士が何人も来ていたりしますし」
「……テルナ女王陛下が可哀想に思えるのだけど」
「……お義母様はかなり可哀想だねえ。いらないものを押し付けられてるという点はルーフィアとお義母様が一番重いよねえ」
なんでそんなことになってしまったのかわからないけどね。……こういっちゃなんだけど民衆って本当に単純なんだよね。一人一人が賢くても全員集まれば平均値なんだから当たり前なのかも知れないけど。扇動する人間を選ばなければならないのかも知れないわ。日常的にあるたった一件の悲劇が戦争や暴動や一揆の引き金になるなんてよくあること。
黙れと言って黙るならアジテーターになんかならないわ。面倒くさい。殺してしまえるのなら殺した方がいいわ。
「セレナ殿は過激ですなあ」
「最善最短の戦略を取るだけよ」
「セレナの戦略は現実に向いてないんだよねえ。なんか物語の主役みたいな暴虐でもヒーローは認められるみたいなそんな印象があるよね」
そうかも知れないわね。そもそも私は戦略家でも政治家でもないもの。ルーのために頑張ってはいるけど無茶ぶりは無茶ぶりなのよ。私一人がやる必要がないから助かってはいるんだけどね。
それはおいといて、テロリストの対処は大事よね。革命なんか起こされたらやってられなくなる。うちはルーの食料生産があるから反乱は起こりにくいけどニターナは違う。
荒れられたらとても困ることになる。北のクレモット帝国はニターナ王国に抑えられているけど、辛うじてってレベルだし、内政が荒れたら兵は引くと思う。そもそも新書派のソックセンは誰も助けようと思っていない。帝国が攻めてきてるから戦ってるだけ。
ニターナ女王が兵を引いたらソックセンがなにをやらかすか想像ができない。計算も無理だ。そもそもソックセンの戦力が今どうなってるのか情報が入らない。
戦略で一番重要なのが盤面が見えているかどうかと言うことなのに敵地と言うことにしても全然情報が入らない。忍者でも居てくれたらやりやすいのに。
「情報収集専門の武官もいないことはないのですがね。それこそアジテーターのような人物も」
「ロンさんだっけ、情報屋ってどんな世界でも大事よね」
ロンさんを使ってるペリテー伯爵も情報通で、あんな軽い感じなのに油断はできない人だ。そもそもあの見た目の性格は貴族らしい仮面といったところだろう。油断なんかできないがしかし、味方なのも事実。敵が鬱陶しく作戦を練ってるのに味方を気にしていられない。
背中から撃たれてもルーならどうとでもしそうな気はするけれど、作戦を練る私たちがそんな緩い考えではダメよね。
「とにかく我々の第一目標は新書派の殲滅なので、テロリストたちは泳がせていた方が特になりますがな」
「それもそう。だから問題なのだけど。こっちに攻めてこないわけじゃないし、なによりルーは逃げたザグレートを今も気にしてるはず。雑魚なんていくら来ても今のルーに叶うことはないけど、ザグレートのような精鋭はまずい。下手なことをしてルーが倒れると士気はがた落ちになるだろうし……」
「一人に頼る状況にしてはいけませんな。かといって戦力としてルーフィア殿を使わない手もあり得ない」
ルーに負担をかけたくはない。でも逆にルーは自分が前線に出ないで仲間が傷ついたら自分も苦しむ。
できればニターナ王国に全部片付けて欲しいけれど、残念ながら今の戦力、新書派の内乱を抱えている状態では無理ね。どうしたものか。
「しかし、ソックセンは帝国が相手でよく持ちますな。帝国も本気では攻めていないようだ」
「! そうね、そうか、そういうこと。テロリストどもはソックセンを買収していたんだから帝国も西部の一部だけ買収していた。この戦争はマッチポンプなのかもしれない」
「む、その可能性は高いですな。狙いは」
「戦いで消える兵隊を使って実験を繰り返すこと。実際ソックセンはキマイラや精霊人を無尽蔵に使っている、だからこそ混戦を演じていられる……」
人間の命をなんだと思ってる。くそが、ブレア、私がいつか焼いてやる。ルーは優しいから殺らせたくない。そう言っても一番に飛び込むのがルーフィアという人だから……。
「……ふうむ、放置していてもソックセンと帝国が組んで南下してきたら我らが国を攻めてくるでしょうな」
「そうなったら、私も本気を出すけど……リンゴやクラリスさんも本気を出すでしょうね。四天王もいますし」
戦力は磐石と言って良い。でも、でもね。
ルーの心が持つか、それが私の一番の心配よ。
「心ですか……普通に暮らしていた少女が女王に祭り上げられているばかりか戦場にも一番に駆けていく。……物語としてなら楽しめそうですが現実なら聞いていても辛くなりそうですな」
「でも、これは現実。……ルーはきっと鬼神にもなってしまえる」
それがとても辛い。ルーが、苦しむのが分かっているから。
あなたの心を救う光はあなたの元にあるのだろうか。私の手は、あなたの心を暖められるだろうか。
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モアリースト司教、ごろりんこしてもらいます!
「老骨には辛いです……」




