ハスター:計画
腹黒まっくろ王子さまです。シスコンだけど。
僕は少し長い旅の果てに西の辺境に辿り着いた。ここで僕の計画を完遂するために。まあ姉様に会えるのも大事なことだったけど。シスコンなのは自覚している!
姉上様~! お元気かなあ? なんでパン屋の店員をしているの? 王族だよ? 超可愛いですけどね!
ボクの計画はもともとモアリースト司教とチェルシーを巻き込んだ時点で一応の完成は見ていた。
ボクの計画、それは原典派によるニターナ王国からの独立である。新国家を作るか父上と長男と次男とを暗殺するかで天秤にかけていたのだが。さすがに暗殺はバレバレなのでやめた。暗部は機能してるんだよなぁ。この王族は暗部に生かされているのかもしれないね。
幸いなことにスージー姉様をセレナとアイリスがこの辺境に連れ出してくれたので僕も計画を進めやすくなった。独立戦争へと動くのだ。まあスージー姉上が連れていかれた理由も理解はしているよ。勇者の派遣にスージーお姉さまが関わっているのは知っていたし。それが謀略なのも掴んでいたからね。糞が。
まあモアリースト司教の発案だろうお姉さまの勧誘? 誘拐? で、その謀略は覆されたのだが。
それはそれとして、スージーお姉さまがいる辺境に僕も行きたい、という願いはあっさりと叶ったのだが。
僕はスージーお姉さまのことを心から愛しているが、だからあっさりと甘えん坊の三男の願いは叶ったのだが、計画は別問題。バカの長男と次男と父上が抗えると初めから思っていない。筋書きは書いてある。もう僕の策略は完成しているんだ。
ゴッダー兄上は色ボケで街で遊び歩いてばかりだし求心力は極めて低いし、チェダー兄上もクズで頭は大してよくないのになぜか知力自慢をする。だから貴族の中でも鼻つまみものだしそれを覆そうとしてか貴族至上主義で平民への差別も酷いものだ。僕が少し反論したら切れていたくらいの愚物だ。まあ周りは僕の味方だったが。
ついでに父上も馬鹿だしな。戦争への願望のために新書を作ったのがこの糞親父だ。一番に殺したい人選手権を開いたらたぶん世界大会でも優勝する。親殺しが嫌われるのは分かっているが殺したい人ナンバーワンだ。
しかし戦力、暴力というのは別の問題だ。兄上が、長男が神を超えるものとかいう怪しい組織と繋がって城の中で実験しているのは王族ならみんな知っていたはずだ。ヘドが出るような人体実験もやっていた。それに勇者たちも巻き添えを食らったらしい。恐るべき戦力と言うべきだろう。
それが許されていたのは新書派の父上が戦争を望んでいたからだ。魔族とも帝国とも敵対して本当に生きれるつもりなのかと呆れる。十六年も前、僕が生まれる前からこの国は戦争ばかり望んでいる。
愚物が。
僕は生き残るためにもこの三人を排除するもっともいい計画を考えていた。そこで出会ったのがセレナとアイリス、モアリースト司教だ。素晴らしい誠意と努力で動く人たち。この三人がいれば僕の計画は進むものと思えた。
実力のある聖女と魔導師、それに権力のある自国出身でない司教。
よくぞここまで駒が揃ってくれた、というのが偽らざる本音だ。
彼女らは地方巡業の名目で僻地のペリテー伯爵領に向かうという。なんとおあつらえ向きなのか。僻地でなら僕も独立の動きができる。あの親父と長男と次男とではその動きを察することはできないだろう。気づいたら終わりだ。
彼女たちは地方に少しとどまっていたが一旦帰ってきた。これも疑われない動きだ。助かる。確かに巡業しているようにしか見えないから大きな反論はでない。
さらに幸いなことにスージー姉上がセレナたちに連れられて僻地に向かった。地方巡遊という名目だから帰らないと不味いのはあるが、僕が彼女を追いかけるのに理由なんていらないのだ。愛すべき姉上。ちょっとぼんやりしてて頭もあんまりよろしくないけど可愛いお姉さま!
追いかける言い分は十分だったのだ。その裏にニターナ王家を滅ぼす作戦が有ったとしても誰にも悟られまい。しょせん愚物の集まりなのだから。ちなみに僕とスージー姉様の母親はすでに亡くなっている。長男と次男の母親は正妻だ。つまりは僕たちの動きはあまり干渉されないということでもある。
ついでに辺境のペリテー伯爵には昔から助力して懇意にしているのだ。以前から僕の思いを伝えてもいる。愚かな新書派を消し去りたいと。もはや計画は成ったと言っても過言ではあるまい。ペリテー伯爵の性格は少し問題がありそうだが、彼もれっきとした原典派なのでそこは大丈夫だと考えている。
馬車に乗る僕はニヤニヤと笑っていただろう。愚かなニターナ王家はここで滅びる。刺客も少しいたが主力ではなかったようで僕の近衛たちでさばけた。主力はアイリスたちが倒したのかもしれない。本当に頼りになる。
そして辺境に来て、僕はさらに目を丸くすることになった。え、魔王親子?! それを従えるパン屋さん?! なにごと? 何者? セレナが言ってた人か!
セレナとアイリス、チェルシーでも戦力は十分だったのだが倍に増えてしまった。これは神が僕に独立しろと言っているに違いない。彼女、ルーフィアはとても余裕で辺境の戦いを生き残っている凄まじい戦力でもあった。
僕はペリテー伯爵とモアリースト司教、メルフィーナ子爵と親交を深めながら、三人とさらに深く計画を練っていく。パン屋さんのイートインスペースで戦略とか練ってしまった。聞かれていたかもしれないな。
しかし気づいたのだ。ルーフィア殿。貴女がこの計画の核心を担うこと、それが間違いないと思ってしまったのだ。ものすごい求心力がある。王の資質と言っても過言ではない。
背筋に寒いものが走る。貴女はすでにこの地の王であったから。僕がそこにくちばしを挟めるものか、真剣に考えることになった。
むしろ彼女が王でも問題は無さそうだが。原典派丸出しだし。
僕の望みは戦争のために新書などを産み出した王家を滅ぼし新書を全て焚書することだ。王になることなどついでなのだ。ならば貴女が王でも問題はない。
幸いなことに彼女はダンジョンを設けて自分の国家とも言える領分を作っていた。本当に風向きがいい。彼女の領有に文句をつける勢力がいれば彼女は自ら戦ってくれるのだから。本当に頼もしいことだ。
ならばルーフィア殿、僕の代わりに王になっていただこうかな?
僕が彼女に会うたびにニヤニヤとしてしまったので逆に警戒をさせてしまったが。僕も王族なのだから表情くらいは隠そうな?
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