ザグレートの進撃
コント・ザグレートって言うとザグレートの名前の元ネタがバレそうですね。
はあ、スタンピードより最悪だよ。攻めてくるの人間だもの。
……そのはずだったんだ。なんで魔物やキマイラや精霊人の群が襲ってきた。
……ブレア。ブレア研究者とか言ってたな。そっか、そこにいたんだね。……ソックセンを領地丸ごと擂り潰す。
ボクたちの住む町、ってか住んではないけど、ランシンは開拓の中心地だから、城壁とか分厚いし高い。相手側は攻城兵器を持ってくる。破城槌だの攻城塔だのレッサードラゴンだの。
……そんなもんでいいの? ボク今殺る気満々なんだけど。
スキル:パンと水:パンメテオ。
はるか上空から降ってくる隕石のような巨大な物質。ボクの作った堅パンだ。でもその質量が一万トンとかになったら、それは死ぬよね?
ちなみに爆風はアイリスが結界で抑えてくれたよ。
ボクのスキル魔力いらないからさ、高さとか数ならどうとでもコントロールできたりするんだ。まあ大きさや重さを変えるのには魔力がいるんだけど、ボクね、なぜかレベルが二百超えちゃっててね? ごめんね? 地上最強ってリンゴにも言われたけども。地上最強のパン屋ってなんだよ。
寒い真似してなくていいから精霊人でも精霊獣でも突っ込んでこい。雑魚もガラクタも集めるだけ無駄だ。
ボクは傲慢だ。温いことしてるんじゃない。その程度でボクを倒せると本気で思ってるのか?
いいんだよ、もう、こんな小賢しいことはしなくても。町ごと全部潰してやろうか?
ボクを討伐する指令が国から出そうなくらいの破壊行為をしてしまったけれどセレナとそんなに変わんないんだよね、威力自体は。まあボクのは攻撃スキルじゃないんだけど。セレナのは味方に当たらないしね。メルフィーナ子爵の神雷術とかもだけど。ボクのパン柔らかいしでも味方も傷つけちゃう。やっぱりスキルは平等なんだろうね。
仲間の魔物たちにも突っ込んでもらう。ちなみに全員エリクサーを携帯している。負けることなんかない。死なないゴブリン五百匹とか厄介な感じしかしないね。
と、思っていたんだけれど、魔物や精霊獣がいると言うことは敵の数は二万では済まなかった。なかなか戦いは終わらない。リンゴもメテオを落としたが。ミドリちゃんやトマサラちゃんも突っ込んだが。クラリスさんやリンゴや勇者もメルフィーナさんとエリメータさん二人いるんだぞ。一人アンデッドだけど。聖女アイリスもいるわ。スージー殿下も戦力ではないけど恐ろしいスキル持ってるね。
敵が尽きない。なんで? 夜になってメルフィーナ子爵が一旦全員を退かせる。ボクはセレナに問う。
「なんで敵が減らないんだと思う?」
「ソックセンでダンジョンでも見つけたのかな」
「うん、それはあり得そう」
なんか生産拠点みたいなのがあるはずなんだけど。
「いーのよあんなの全部ぶっ倒しちゃえば!」
「一回に、千は倒してます。数が、おかしい」
アイリスは物騒すぎる。エリメータさんはちょっとまだアンデッドの体に馴染んでないらしい。そりゃそっか。
ちなみに騎士さんたちは大魔法の邪魔になるから城壁の中にいてもらってる。魔物たちも退かせて後ろを狙って大きく迂回してる。
「もうひとつさ、セレナ」
「なに」
「新書派のソックセンの領地に原典派の神を超える者が隠れる、まではわかる。誰もそんなこと思わないもの。隠れるならそうだよね。意表を突くとこに隠れないと。でもここまでの規模になったら隠すの無理じゃん」
「それってソックセンがあのテロリストどもに協力してるって?」
「そう、さらにさ、なんで『今』なんだろ? 前のスタンピードからタイミングが早すぎる」
「いくつか考えられるけど、まとめて言うなら、『テロリストたちは実験のため、最初からこの町を手に入れさせるつもりでソックセン伯爵を買収し、三連スタンピードは予定通りだったが、前の二つが簡単に潰されてソックセンが焦った』ね」
「さすがセレナだね! それだ! でも神を超える者ってなんで言わないの」
「笑いそうになっちゃう」
「確かにね! なかなかのボケ! それで三連続敗北とかボケ倒しだね!」
「潰そ」
「もちろん! 四連続にしてあげる!」
その時、敵の群が割れて、黒い鎧の大男が歩いてきた。予定通りと言えば予定通り。
「来たかぁ、ザグレート」
「あの短足で鈍重で頭悪そうにがに股でどしんどしん歩く感じは間違いないわね」
「アイリスいつも言い過ぎ、だけどその通りね」
「あの、鎧、は……」
「知ってるのエリメータさん」
「魔法も物理攻撃も、ほとんど通じない、太古の神の鎧、と呼ばれるもの」
「……」
「どうしたの、ルー」
「あんなのオレンジお姉さんが着るかー!!」
「風評被害ね」
「分からないわよ、あの人のゴリ強さは実は人間になる前はミドリちゃんのような美しいゴリラだったのかも知れないわ! それならジャストフィット!!」
「やめて! オレンジお姉さんが出ちゃう!」
その頃、オレンジお姉さんはこれらを盗み聞きして神なのに笑い転げて死にそうになっていたらしい。さすがアイリスは聖女である。頭おかしい。
「と、取り合えず焼く」
「セレナをこんなにするのアイリスだけだよぉ」
「炎術:溶解線擊」
セレナが放ったのは芯が白く真っ赤な光線だった。ものすごい高圧の炎らしい。さすがセレナ。カッコいいなあ。
しかしあの黒い鎧は傷が少し付いただけだ。魔法じゃなくてスキルなんだけど?
「だめね、スキルも通らない。たぶんあれはスキルで作られた逸品がなぜか巡りめぐってあいつらに渡った物」
「防御系スキル製品って、すごい厄介じゃん! スキル防がれるなんて考えたこともなかったよ!」
その時、突然自信満々のブレア研究員の声が響いてきた。
『おっ久しぶりですなー! 皆さあん! その『断罪騎士の黒曜鎧』の力はいかがですかあー?!』
「有り難う! オレンジお姉さんはゴリラじゃなかった!」
『意味が分かりませんがー? この天才の頭脳を持ってしてもー?』
「敵に感謝するルーなんて見たことないわ」
「私が悪かったわ! ちょっと首つってくる!」
「吊らない」
「とりあえずぶっ壊す! それが私の感謝!」
「それたぶん感謝じゃない」
やっぱり研究成果とか宝物とかをおじゃんにしたら、また明日から頑張ろうって思う特殊な人いるじゃん。ブレアってそんな感じじゃん?
「その発想はなかった。壊そう」
「どっちみち壊すんだからおんなじじゃん!」
「斬って、みます」
「気をつけてエリメータさん!」
エリメータさんはバンパイア勇者。とにかく膂力が半端ない。人間の力じゃない上に、聖剣も持ってる剣の勇者。魔法関連はそうでもないけど物理だと現在はたぶん最強。
一気に城壁を飛び降り走る。そして数秒後には激突! 空気が高熱を放ち、歪む!
さすがにザグレートは後ろに飛んで力を逃す! 追撃するエリメータさん、カッコいいね! なんであんな戦力がうちにいるのかな? 魔王もいるわ!
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