いのち
裏側で蠢くものがありますが、セレナがきっと捕まえます。
オレンジお姉さんは間違ってないんだよ。でもボクらが間違ってるね。断固として言える。お姉さんもしっかり言っていたよ。
命のやり取りになんの意味がある。ボードゲーム、つまり命のピースで代用すればいいのだ。ってね。そして消えた。消えないで。それがわがままなのか。だよね。
生かす。その本当の意味を分かってる? まあボクにはまだ分からない。死んだお婆ちゃんやお母さんに会いたい方がずっと強いもの。
死にたいって、そんなの旅に出るよりずっと前から思ってたんだ。でも、今は死ねなくなったんだ。その理由が向こうからやってきたからさ。
それでさあ、あんたたちだよ。決着ついたと思ってるあんたたち。
神への反逆者ブレア、ぶっ殺す。
「アーレースー!!」
「おおおおおおお、ルーフィア!! す、すきだああえあええ!!」
「殺すうううううううううううう!!!!!」
「ごめんんんん、ほんとはあえ、好きだったああああああっ!!」
どうしてそうなってしまったんだ。これ、きっとボクの想像、気持ち悪いボクだけの考えだけど、
彼はボクが好きだから認められたいって思ったんだ。それでそんなアホウみたいな精霊人なんて手術に身をやつしてしまったんだね。
ねえ、ボクたちきっとまだ自分すら、自分のかたちさえできてないのに、誰かと愛を語り合うとか愛し合うなんて、できるのかなあ? できないんだ。
ボクにはとても無理だ。解け合うなんて生易しい感情じゃないんだ。
語り合うレベルじゃ無理。デートしたらいいかと言えばそれも違う。エッチなんか話をしてないも同然。摩擦が増えたら軋轢も増える。無理ゲー。
恋愛においてやっちゃいけないこととかさ、やらなきゃいけないこととかさ、考えなきゃいけないこととか多すぎて、世界はどうして、ボクらをどうしておいてけぼりにするんだろうね?
たぶんみんな、悩むんだ。
でもこうなっちゃった、でもこうなっちゃったああああああああああぁぁぁぁぁぁッ!!
「スキル:パンと水:水ストリーム! 超高圧! ウォーターガン連打!!」
「聖剣解放、迅雷剣!」
……やばい、勝てない。でも、これ以上踏み込んだら……。ボクの今の力を使ったら……。
『おまえさま、スキルをなんだと思ってやがるでやすや?』
はっ?
今スゲーいい戦いしてるんでツッコミご遠慮願います~。
『本気で言っとんのかあほが!! 最強能力でお前ボードゲーム指してて勝ち確やのに相手がおわーりましたー勝ちましたーって言われたらどう思うねんですやろがい!!』
「現実は過酷」
『面白いこと言ったらエエわけちゃうやろおおおおおです!』
分かってる。分かった。これはスキルの声。オレンジお姉さん、神さまがくれた、スキルの、天使の声。分かる、ボクの天使はパンと水を預かる天使。このスキルは全ての天使を凌駕できる!
「まあな、反則は許されない、上で理屈の存在しない世界なんてないんだろな。それを理不尽と言うんだから、だからこそボクらは理屈を求める、スッゴい簡単な話だ」
『すごい簡単な話やっちゅーてるやろがい』
「理不尽は許せない」
『御託はええねん、はよ行ったらんかい、傲慢!』
「ボクシング?」
ああ、まあな。ボクのスキルはパンと水だったわ。そこまでインパクトないけど。
「チョー固いパンバリアあぁぁぁぁぁぁ!!」
「ぐわあああああああああっ!!」
そうだね。敵と、ボクと相手との間に超高圧のパンを出したら、そりゃ攻撃になる。防御が最大の攻撃、カウンターよ!
ってそこに物理的に挟んだらすごくない? ボクはノーダメージ反作用も作用も相手にダメージ。
圧縮パンは魔力次第だな。こんにゃくは斬れない剣士もいるし。こんにゃくゆびあ? なんだろうね?
あとパンは炭水化物だから高圧を加えると水素とか酸素とか窒素が抜けて漫画みたいに炭素の塊、ダイヤモンドになっちゃうね! 他の宝石もできるけどな。そもそもダイヤモンド燃えるねん。炭素だからすごい燃える。酸素だけあれば。
燃えるってことは爆発力を生む。
『カーボンナノチューブとかフラーレンって…………興味ないわな。やめとこ。ダイヤモンド握って作ったら圧と熱で骨が溶けるっちゅーねん。人間信用しすぎやろ』
「意味分かんないよ!」
いま、なにを考えてるんだっけ。
そうだ、ボクの少女時代の一幕を作った、敵を、友達を、ボクは殺さなければならないの?
…………いいだろう。なんでだろう? 殺さなきゃいけない気がするんだ。
「スキル:パンと水:お前たちの知らない力を見せてやろう!! 固い固いパンシェルター!」
多くの人はシェルターは守る力だと思ってるかもしれないけど、完全封鎖、空気は交換される、熱は伝わる、だと
蒸し焼きで炭しか残らねえよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! パンと水、炭竈モードーーー!!
本物のシェルターは断熱構造になってるけど外に熱が逃げれないってことだし吸気とかめちゃ不安が多いよね。アレスをそのシェルターに閉じ込め、加熱。
敵で、いじめッ子で、今敵対していて、でも、友達だったこともあるんだ、君は。
「ごめん、アレス、ボクはこんなことしかできない。君にこんなことしか返せない……」
はは、なんで思い出す。思い出すの?
「へん、ルー! お前海も知らねえのかよ?」
「ボクが住んでたの西の辺境だってば。海だって名前なら知ってるし! 川に貝ならしじみでもカラス貝でもタニシでもいくらでもいたさ」
「ふん、だけどこの巻き貝、カッコいいだろお?」
「ぐぬっ、本当に綺麗だな!」
「綺麗だと思うか?」
「外は真っ白だし中もパールみたいに虹色になってて、本当にきれいだなあ……」
「は、こんなん、海に行けばそこらで拾えるんだよ。やるよ!」
「ええー、アレスに施し受けたくないな~」
「ごみ拾って食ってる奴なんて貧民街にはいくらでもいるじゃん。俺もだし。まあ貴族でもセレナとかすんごい苦労してるけど、施しなんかじゃねえよ。ゴミだ。それを拾うお前は犬みたいだな!」
「ふふ、ありがとう。ねえ、アレス」
ボクらは、どうして、道を違えてしまったんだろう。ボクが悪かった気がするんだ。どうして、ボクは、
誰かの犠牲の上にしか、立てないんだろう?
なんで、こんなに、弱いんだろう。
「な、なんだよ、泣くなよ。今日はいじめてなんかないだろ?!」
「アレスぅ……。なんでボクは君が嫌いなんだろうねえ?」
「え、う、う、うるせええええええ!!」
「ごめん!」
「痛みなんか味わわせない。残さない。パンと水の力を、思い知らせてやる」
なんで、こんな記憶を、思い出しちゃったんだ。ボクは、
最低だ。ボクは、最低だ。
「魔力限界! エリア:どこまでも届け! :選択 思うさま届け! パワー:誰よりも、強く…………」
その瞬間、ボクは、気を失った。
~~~~~~~(セレナ視点)
「な、ルーフィア! ルーフィアああああああっ!!」
「リンゴ、落ち着け」
戦場にはいまだにたくさんのキマイラがいた。誰もが先陣を切ったルーを追いかけようとしている。
「でもルー、誰か助けてええ……!!」
「はっ、はっはっはっは、うっうっ、いや、っ、るーーーーー!!」
「ダメ、アイリスも、私たち、あの戦場に、もう、飛び込めない、ルーが愛してる、リンゴだけも、行かせるわけには、く、うー!!!!」
「いかせて、いかせてよセレナ……あ、」
アイリス! あんたも魔力切れよ!! リンゴとアイリスを抱き止める。ひたすらに。力の限りに。
私だってルーを助けたいのにい!
限界なんだ、この状況。
でもその時、あの人が来てくれたの。
「娘たち、済まなかったな。この戦場だけは我がリセットしてやろう。オレンジの姉さまなら一発なのだがな」
私、セレナは、まだこの戦いが終わってない気がした。黒のお姉さん、貴女は味方なのですか?
「娘を拾いに来ただけなんだがなあ、まあ、光術:根絶の光」
黒のお姉さん、クラリス=マーク=フィールディア。
「はええあえ、えええええええ?!」
アイリス、驚くよ、それは、私も。一瞬光ったと思ったら敵の全てが消えた。さすが魔王だね。
私もスキル知識でその技を知ってはいる。私が使うにはまだ魔力足りないけど。使われた。
その瞬間に、戦場の全ての火が消えたの。すべてのキマイラが消失した。
「ふうー、はあ、さすがにこの技はきついんだ。済まなかったな、娘たち。……我が名は、クラリス=マーク=フィールディア。現在の魔王である。リンゴ、貴女は肉体の年齢は人族なら八才なのよ。帰りましょ」
「帰らぬが?」
いろいろ問題が表出したけど、なんとかこのスタンピードは地元民が終わらせられるレベルに落とせたの。私たち、ギリギリ命は助かった。
でも、これのどこに問題がないのかという、かなり深刻な話になる。
なんというか、ルーフィアを回収できた時点で、私たちは安心しきってしまった。まあ彼女が本当に優しい人だったんだから、問題はなかった。今は。
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